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Side-S:02章 めぐりあい2 (02章終了)


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めぐりあい2


 それは信じがたい光景だった。
 幾多の人知を超えた戦いを経験してきたカノンでさえ目を疑った。というより、全く分野が違いすぎて呆然としてしまったと言ったほうが正しい。
 巨大な人型の――ロボットとしか表現のしようがないものが2機、交戦中だったのだ。木々を薙ぎ倒し、岩の多い地表を削り、放つ光が炎に変わる。よくできたSF映画が眼前で繰り広げられているようだった。あまりにもリアルで、信じがたい。
 訓練生と雑兵達のほとんどがやはりここまで到達していた。うまく難を逃れた者もいたが、巻き込まれかかっている者もいる。特に幼い訓練生の中にはパニックを起こしていたり恐怖のあまり立ち竦んだまま動けなくなっている者も多い。
 なんでこんなことになってるんだと舌打ちしながらもカノンは上の者の当然の義務として、逃げ遅れている者を安全な場所へ誘導する。場合によっては抱え込んで助け出した。シャカもまた、頼まなくとも協力してくれていた。追い返した後でなくて良かったと素直に思った直後にぎょっとする。開眼していた。さすがにこの事態で瞑目したままでいるほど人間離れはしていなかったらしい。その滅多に見せない青い目は巨大な闖入者をあっけにとられたように見つめていた。
「機械の……人形? 何なのだ、あれは……」
 なるほど人形か。下手に現代社会に染まっていないシャカは時折面白い表現をする。ある程度距離をとった場所まで避難し、カノンも"機械人形"を見上げた。
 僅かな間でほとんど勝敗はついていた。
 尖った頭部が目立つ濃色の機械人形が地面に仰向けに倒れこみ、大砲のようなものを散発的に撃っている。対して上方では光の剣を構えた青と白の印象が強いもう一体が、下からの攻撃を余裕で躱しながら迫っていた。
 突然、濃色の機体の胸部が開き、男が飛び出した。軍服のようなものを纏い、その表情は必死だ。カノンやシャカ達とは別の方向に走っていく。その手に銃が握られていることを聖闘士達は見て取った。
 光の剣を持ったままの白い方が背中の翼を広げて青白い炎を噴出し、降下の勢いを削いだ。巨体が意外なほどふわりと着地し、もはや抜け殻となった機械人形に剣を突き刺す。一拍遅れて爆炎が上がった。破片や周囲の岩を爆風が巻き上げ、熱い衝撃波が少し離れた場所にいたカノン達に多少ながらも襲い掛かる。もっと近くにいた何人かが爆風に足をとられて倒れ込んだ。
 先に脱出していた男は爆発の瞬間、地面に伏して衝撃の軽減を図ったようだった。
 燃え落ちていく金属が地に流れ、小規模ながらも地獄を髣髴とさせる惨状だ。真っ赤に焼けた金属に触れた草木は一瞬で燃え尽き、あちこちに黒い消し炭を作っていた。その中で白い機械人形はゆったりと膝をつく。既に剣からは光が消え、柄の部分だけが残っていた。
 炎に炙られた大気が陽炎のように揺らめく中、白い機体の胸部が開く。人影が見えた。こちらはすぐには降りてこない。立ち上がり、迷いのない動作で右腕を上げた。立て続けに二回、銃声が響く。身を起こし、再び走り出そうとしていた男の足元で土煙が二つ、上がった。男は弾が当たったわけではないにも関わらず足を縺れさせて転んだ。
 隙を逃さず機械人形から飛び降り駆け出したのは、少女だった。その右手に握られている銃は細い身体には不釣合いなほど大きいのに、あまり重みを感じさせない。それだけ扱いに慣れているのだとわかる。
 対する男もなんとか上半身だけ起こし身を捩ると、少女に向かって銃を構えた。
 少女が立ち止まる。視線と銃口を真っ直ぐ男に向けて。
「く…来るな!!」
 男の声は裏返ってしまっていたが、銃を持つ手はまだ震えてはいない。
 少女もまた微動だにせず、男を狙い続けている。極めて無表情に、口を開いた。
「IDナンバーL2FRTR2329881120M009」
 機械が読み上げるような無機質な音の羅列に、男は明らかに動揺した。少女は続ける。事務的に。
「警告する。抵抗は無駄だ」
「……捕まえるのか、俺を? ただでは何も喋らんぞ! 司法取引でもあれば――」
「その必要はない」
 決して大きくはない少女の声に、男の顔が目に見えて引き攣った。
「私は警官ではない。許可も下りている」
 何かを言いかけて、結局何も言えなかったのか、男は口をぱくぱくさせて喘ぐようにした。トリガーに掛かった少女の指に力が込められる。そのときだった。
「あっ……!」
 甲高い叫び声がして、対峙する両者の間に突然小さな姿が割り込んだ。銃口に挟まれた空間。その中心に立ってしまった子供。緊迫した空気を感じ取り、青ざめている。
 遅れてここまで辿り着いた訓練生のひとりだ。カノンがそう認識したときには既に事態は進行していた。
 子供によって作られた死角。
 男はその影へ駆け込むように立ち上がる。銃を構えたまま。
 少女は咄嗟に銃口を逸らした。子供に手を伸ばす。銃を持っていないほうの手を。

 二回。銃声が響いた。

 突然突き飛ばされた子供は地面にへたり込んだまま、動けないでいた。両目をいっぱいに見開いて、硬直してしまっている。
 すぐ近くには男が倒れていた。――その顔は半分、ない。残った半分は、自らの血溜まりに浸かっている。  
 しかし子供がそれを見ることはなかった。
 子供の視線を遮るように、少女は死体の前に立っている。カノン達に視線を投げかけていた。来いということらしい。
 肩をすくめるとカノンは静かに歩み寄り、いまだ放心状態の子供を抱え上げる。後からついてきた雑兵に渡した。下がるように手で促せば、彼は一礼して子供を抱えなおし、足早に去っていく。気を利かせたのか他の訓練生達も引き連れていってくれた。
 ぱちぱちと木がはぜる音はまだ聞こえるが、先程に比べればいっそ奇妙なほど静かだった。
 目撃したときは三体だった機械人形も、今は一体だけだ。さっきまで轟音を上げていたのが嘘のように、静かに跪いている。
 残った勝者の少女を見れば、なんだか様子がおかしかった。検分するかのように死体の脇に屈み込み、手を伸ばそうとして、舌打ちする。わざわざ銃を懐にしまいこみ、空いた右手で死体の胸ポケットを探った。――左腕は一切動かさない。
 傍に来たシャカが、死体と少女をそれぞれ一瞥してから少女に問うた。
「君はいったい何者かね?」
 少女は立ち上がる。シャカの問いには答えなかった。目も合わせずに機械人形へと歩き出す。
「待ちたまえ!」
「――っ!」
 止める隙はなかった。シャカが少女の左腕を力いっぱい掴んでいた。
 カノンは慌てて少女からシャカを引き離す。目を開いたシャカは却って観察力が鈍るのか。ぽたぽたと、目に見えて血が滴っていたというのに。それとも質問に答えなかった腹いせか。
 さすがに真っ青になってうずくまったものの、ほとんど声を上げなかった少女の忍耐力は見事だった。
 対してシャカは、己の手を見てやっと状況を把握したようだった。真っ赤に染まっていた。服の上から掴んだにも関わらず、である。とりあえず腹いせではなかったらしい。
 気づかなかったシャカが鈍いというより、気配をそれほど乱さず、そうと気づかせなかった少女が只者ではないようだ。その証拠に、彼女は立ち上がった。当然のことながらその顔には血の気がない。それでも苦痛に眉をしかめることもせず、何事もなかったかのように歩き出そうとさえした。
「おい……」
 さすがに見かねたカノンが声を掛けるのと、少女の身体がふらりと傾いだのは同時だった。咄嗟に受け止める。
 触れた手が、あまりにも冷たくてぎょっとした。呼吸が荒い。血の気の失せた顔にダークブラウンの髪がかかって、まるで紙のように白く見えた。これはまずい。
 少女が身じろぎをする。顔を上げた。群青の瞳がカノンを捕らえる。毅然としていた。それから視線を彷徨わせる。白と青の機械人形を探していた。戻ろうとしているのだ。――あれも、まずい。
「シャカ。頼まれてくれるか」
「……報告と、始末と。どちらかね?」
 ひょっとしてこれはジョークなのだろうかとカノンは思い、神に最も近い男にそのセンスはないようだと結論付けた。
「報告だ。とりあえず教皇補佐殿にでも伝えておいてくれ」
「引き受けよう。――貴方はどうする?」
 カノンは口許だけで笑ってみせた。
「"始末"でもつけておこう」
 シャカは眉を寄せてカノンを軽く睨みつけた。言葉尻を取られたのがお気に召さなかったようである。次いで視線が少女に向けられた。
「まあ、経緯はどうあれ、彼女が訓練生を助けたことは事実だ。このまま捨て置くわけにはいかんな」
 少女はカノンの腕を拒んで自力で立ち上がろうともがいていたが、徐々にその力は弱まっていた。シャカは屈み込み、少女の顔を覗き込む。
「撃たれていたとは気づかなかった。悪いことをしたな」 
 ついに少女の動きが止まった。胸だけがせわしなく上下する。半分霞がかかったような目を上げて、シャカを見ていた。
「……一体、どこから来たのだろうな」
 立ち上がりながら呟くシャカに、カノンは知るかと返す。
「聞いておけというのだろう? 分かっている」
 さすがに本人の目の前なのでそれ以上は言わないでおいたが、シャカはその返答で満足したらしい。踵を返した。
「……そら……から……」
 幽かな声が聞こえた。
 カノンは手許に目を落とし、シャカも足を止める。ふたりは一瞬、顔を見合わせた。
 しかしそれ以上、少女は口を開かなかった。
 完全に意識を失ってしまっていた。
 シャカが首を傾げる。
「空から来た、とでも言いたかったのだろうか?」
「――"聞いて"おくさ」
 カノンはぐったりした少女を抱えて立ち上がった。ダークブラウンの長い髪が、腕からさらりと零れ落ちる。とにかく急いで止血してやらなくては生命に関わる。いまだに残る炎を拡げないようにしなくてはならないし、機械人形も隠さないといけない。早く行けとシャカを追いたてた。
 おかしなことばかり起こる日だと思った。

めぐりあい2 END


2009/12/30


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