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Side-S:中編03 MA★くろすオーバー3


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 貴鬼にタイピンを預けてから3日ほどが経った。いまだムウが聖域に戻ったという話は聞かず、貴鬼はまだ課題に取り組んでいるようだった。
 そしてこの3日、白羊宮から異様に高まった小宇宙が日に何回も感じられると、聖域ではちょっとした噂になっている。
 噂には師が不在の間も弟子は真面目に修練に励んでいるようだと、好意的な意見も付いている。

 そんな聖域の最奥部で、 は十二宮とは逆の方向を見下ろしていた。
 アテナ神像の後ろ側、断崖に立って風向きを見極めるために先ほどから目を閉じて風を受け続けている。
 だがなかなか思うような風にならない。崖下に向かって一気に吹き下ろされるような強い風がいいのに。しばらく待っても の長い髪は巻き上げられるばかりだ。
 ついには背にぶつかった強い上昇気流に押し上げられた。足もとがすくわれたようにおぼつかなくなる。目の前は深く落ち込んだ岩の絶壁。――いけない。反射的に目を閉じる。
「――――!」
 ひやりとした瞬間、 の身体は強い腕に引き留められた。腕と腰をつかまれて、地面に足がしっかりと下ろされる。
「なにをやっておるのだ! 危ないではないか!」
 ずいぶん居丈高に叱咤されて は驚いた。てっきりカノンだと思ったのだ。おそるおそる目を開く。
「教皇猊下……?」
 確かにここは教皇宮の裏手で、シオンの私室から見える場所だと知っている。しかし、まさか教皇その人が飛び出してくるとは。
 慌てて は離れようとしたのだが、シオンはそれを許さなかった。腰を引き、崖から数歩下がらせる。十分離れたところでようやく手を離した。
「すみません……ありがとうございました」
 おずおずと礼を言う に、シオンはふんと鼻を鳴らした。
「まったく。こんな風の強い日になにをやっておるのだ。自殺願望でもあるのか。こんな神聖な場所で、冗談ではないぞ」
 まったく、ともう一度言った。眉間に皺を寄せて を見下ろす。どうやら弁解を求めているらしい。
 すみませんと小さな声で謝罪して肩をすくめ、 は項垂れる。手にした特殊樹脂製のケースを握り直した。
「……少し前に、ナノスキン再生用のナノマシンを入手しまして」
 小さい頃に、父親に叱られてはこんなふうに申し開きをしていたことを思い出した。こんなとき、彼は聞き終えるまで眉一つ動かさないのだ。子供心にはそれが怖くて仕方なかった。
 ナノマシン入りのケースを見せながら、 はシオンをうかがうように見上げる。視線の先で、シオンの表情がわずかに和らぐ。安堵した。もう少し大きい声が出せるような気がした。
「私の01はベースの合金の上を自己修復機能のあるナノスキンの皮膜で覆ってあるのですが、最近、ナノスキン自体の修復が間に合わなくてベースの損傷が目立ってきたんです。そこで入手したナノマシンを追加塗布しようと思ったのですが、あいにく足場もないし……」
「足場?」
 シオンが怪訝に聞き返してくる。 は頷いた。
「ナノマシンは粉状になったカプセルの中に封入されているので、その粉をなるべく機体の近くで振りかけなければならないんです。普通は上下左右に移動可能な整備用の足場を使って、専用の噴霧器を使用して作業を行うんです。でもそんなものはないので、ダメで元々のつもりで風に乗せてばらまいてしまったらどうかと考えました。それで、こんなふうに風の強い日を狙っていたんですが……」
 長い言い訳を聞き終えて、シオンは呆れたように額を抑えた。
「まったく……」
 おまけに盛大な溜息をついてみせる。これは叱られるよりもよっぽど肩身が狭かった。 は首をすくめる。
 その様子にもう一度大仰に嘆息してから、シオンは一人で崖の縁へと歩いて行ってしまった。01を見下ろす。しばらくそのまま、しげしげと01を見つめ続けた。
 腰に手を当て顎を撫でながら、鋭い視線で観察を続けるシオンに、なぜだか は声を掛けることができなかった。
 やがて振り返ったシオンは、はっきりと眉をひそめていた。
「細かい傷がずいぶん多いな。一つ一つがいくら小さくとも、それが数多ければ大きな亀裂が走っているのと同じこと。機体の強度を過信しすぎておるのではないか? それに自己修復機能と言っておったか。それにも頼りすぎだ。どうせ修復されることを前提に、無茶な運用をしておるのだろう?」
「………………」
  は絶句する。返す言葉など一つもなかった。まさしく指摘の通りだ。申し開きの余地など、それこそこのナノマシンの直径の幅ほどもないだろう。
「成る程お前の愛機はずば抜けて高性能なのだろう。これまで半年以上にもわたってお前一人きりにもかかわらず、不敗であることからもそれは認めよう。だがいささか、機体の性能ばかりに頼りすぎなのではないか? 力押しの戦法は戦の初めには確かに一番有効だが、ここまで来ると敵とてそれを見越して別の策も弄してこよう。最近苦戦気味だというのは、つまりそういうことなのだろう?」
 さらに歯に衣着せぬ指摘の数々に、 は完全に打ちのめされてしまった。
「はい……おっしゃるとおりです……」
 がっくりと萎れてしまった に驚いたのか、シオンは少しばかり早足で戻ってきた。落ちきった の肩を軽く叩く。
「別にお前が力業(わざ)ばかりで強引にここまできたのだと申しておるわけではないぞ? 相手が圧倒的多数なら、攻撃も避けきれなくて当然だ。それを一度に一人でどうにかしようというのだから……まあ力押しになるのもわからんでもないと……」
 全くフォローになっていない。
 気づいてシオンは言葉を切り、 も視線をあらぬ方へと彷徨わせた。

 しばしの沈黙の後、やがてコホンと咳払いすることによって場を仕切り直したのはシオンだった。
「まあ、なにはともあれ、あれだけ傷が多いのだから修復したいというのはわかった。で、そのナノマシンとやらはどこにどうやって振りかければよいのだ?」
「――え?」
 ようやく顔を上向けた に、シオンは手を差し出す。
「手伝ってやろうと申しておるのだ。修復が可能だというものを、あのようにぼろぼろの状態のままで置いておくのは、畑違いといえども元修復師としては見るに耐えぬわ」
 なにやら両手を握りしめて力説するシオンを は感謝のまなざしで見上げる。しかし手を貸してくれるというのはありがたいが、根本的な問題はなにも解決されてはいないのだ。
「でも……どうやって?」
 困ったように尋ねれば、シオンは自信に満ち溢れた笑みを浮かべて見せた。
「知っておるのだろう? 私は念動力(サイコキネシス)の持ち主だ。風などと意のままにならぬものに頼るより、手を使わず任意にものを動かせる力を利用する方が、よほど理に適ったやりかたではないか?」
 成る程。その手があったか。 は心底感動した。目から鱗が落ちたような心地がする。当たり前なのだが、それはまったく、これっぽっちも考えたことのない方法だ。
  はナノマシン入りの樹脂ケースを捧げるようにシオンに差し出した。
「――よろしくお願いいたします」
 深々と頭を下げれば、上機嫌のシオンが胸を反らす。
「任せておけ」
 呵々とした笑い声が風と共に上空高く舞い上がっていった。


 ***


 的確な場所に散布されたナノマシンは、あるかなしかの淡い発光と共に既存のナノマシンと情報のやりとりを行い、速やかに修復を開始するはずだ。
 微弱な信号データを端末で確認し、 はほっと息をつく。これで少しはまたごり押しが可能になるだろう。……そう考え、また少し落ち込んだ。
「それにしても」
 シオンが掌にわずかに残ったナノマシン入りの粉を指先で擦る。指についたそれを目に近づけて観察しては、指どうしを擦り合わせて感触を確かめることを繰り返していた。
「なんとも、不思議な感触のものだな。これで極小の機械の集合体とは。……まるで細かな砂だ」
 しばらく触り心地を確かめた後、ようやくシオンは に確認した。
「これは人体に害はないのか?」
 普通、そういうことは事前に確認するものではないかと は少しばかり唖然とした。勿論口に出したりはしない。少しばかり反応は遅れたが。
「……ありません。ご安心下さい。基本的に金属にしか反応しませんし、対象の金属に対しても、損傷を受けない限りは作動しません」
「そうか」
 聞いてはみたものの、別に本当に心配していた様子でもない。相槌のように答え、シオンはまた指についたままの粉に目を戻す。
「これに似たものが自然物の中にもあると思うか?」
 ぽつりとつぶやくようにシオンは聞いた。妙に真剣な声だった。 はシオンの横顔を眺める。まるで研究者のようなそれだった。
「似たものというのは、形状が、と言う意味でしょうか。それでしたら……」
「いや。これと同じような作用を持つものという意味だ」
  は首を傾げる。
「さあ……自然界に潜在する物質など、それこそ星の数ほどあるでしょう。そのすべてを探せば、もしかしたらないわけではないかも知れませんが……少なくとも私は知りません。もしも簡単に見つかるものであれば、こんなマシンを開発する理由もなかったでしょうし」
「そうか。そうであろうな」
 困ったような の返答に苦笑して、シオンは指先の粉をたたき落とした。
「詮無いことを聞いた。ただ、少しばかり気になった」
「?」
「これと似たようなものを、我ら聖衣の修復師は遙かな昔より使っておるのだ。聖衣の元となるものはどれも貴重で希少な材料だ。いずれも神が我らに下された得難きものだと私は師から伝え聞いた。なのに、同じようなものを人が作ったという――正直、驚いた。これが自然のものでないというなら、我らに伝わるあの星の砂も、もしかしたら神が作ったものなのではないのかもしれんな」
「星の砂? なんですか、それは? どういったものなのですか?」
 恐らくそれがナノマシンに似ているという物質の正体なのだろう。 は興味を覚えた。
 心なしか目を輝かせて聞いてくる に、シオンは目を細める。こういった講釈はシオンとて大いに好むところだ。
「銀星砂(スターダストサンド)。聖衣の基材となる金属に練り込むほか、仕上げにも使う。同じように砂状で、こんな感触だ。聖衣にも、わずかながら自己修復能力がある。それが効かなくなるほどの損傷を受けた場合でも、ある条件下で――知っているかもしれんが、聖闘士の血液を必要とする――修復が可能だ。その時のためにもスターダストサンドは欠かせない材料となる。あらかじめスターダストサンドが含有されていることによって、修復時にある程度、元の形に復元されるということらしい」
 一言一句聞き漏らさず真面目に聞いて、 は唸った。
「成る程。確かに、似たような作用ですね。復元ということでしたらこのナノマシンも、ベースの合金に含有されていれば、ベースにまで深刻なダメージを負った場合でも元の状態近くまで復元することが可能なんです。もっとも、相当長い時間が必要ですが――」
 ふと言葉を切り、 は考え込んだ。
「どうした?」
「あの……そのスターダストサンドというのは、滅多に産出されないんですよね?」
「ああ。そうそう鉱床があるわけではないからな」
「鉱床――ということは、確実に産出される場所があるということですか?」
  の目が抜け目なく光ったような気がして、シオンは慌てて先手を打つ。
「そうだが……その場所を教えることはまかりならんぞ。それは聖域の関係者の間でも秘所とされておる。代々、修復師にしか伝えられぬ場所ゆえな」
 シオンの警戒感が伝わって、 は苦笑するよりなかった。多分、シオンは誤解したのだ。
「いえ、別にそれが欲しいといっているわけではありませんからご安心下さい」
「……そうなのか?」
 まだ胡乱なまなざしで を見るシオンに、 は弁解をするしかない。
「ちょっと私も気になりまして、お聞きしただけなのです。――先日お話したとおり、ずっと昔にこの世界と私の世界が関わり合ったというのは事実のようです。でも、そのことについて私はほとんど何も知りません。なぜならそれに関する事実は厳重に隠匿されていて、私も噂を聞いたことがあるくらいで、信頼のおけるデータなどは見たことがないからです。でも、事実としてそういう事態があったというのなら――もしかして、と思ったのです」
 シオンは眉をひそめた。 がなにを言わんとしているのかわからない。
「なにが、もしかして、なのだ?」
「その、スターダストサンドの正体についてです。もしかしたら、同じものなのかもしれません」
 シオンはまだ指に残っている粉を見る。自分から言い出したことではあるが――
「まさか……」
 つぶやいて、 に目を移した。冗談でもなければ、自信がなさそうでもない。生真面目な顔で考えながら言葉を続ける。
「先ほど、このナノマシンがベースに含有されている合金なら、損傷を受けても時間をかければ復元するといいました。大変時間がかかるとも。――程度によりますが、短くて数十年から数百年、長ければ数千年単位の時間がかかります。そして、実際そのくらいの時間は、世界が関わり合った頃から経っています。そしてこれが重要なのですが、復元の課程において、大量のナノマシンの滓が出るんです」
「滓?」
「はい。正確には、死期(アポトーシス)を迎えたナノマシンの残骸です。ナノマシンは機械ではありますが、そのありようは微生物に大変よく似ています。一つのナノマシンが永久に機能するわけではなく、寿命があるんです。その寿命を迎える前に、自身と全く同じコピーを作り出してから機能を停止します。つまり自己増殖です。長い時間をかけて合金を復元するとなると、相当量のナノマシンの残骸が出るはずです。実際、やはり二千年ほどかかって元の形に復元されたモビルスーツというのが百年ほど前に地球で発見されたことがあるのですが、大量の砂――ナノマシンの残骸に埋もれていたそうです」
 ようやくシオンにも の言いたいことがわかってきた。
「つまり、スターダストサンドは、そのナノマシンのなれの果てではないかと、そういうことか?」
 はい、と は頷く。
「先ほど残骸といいましたが、中には寿命が尽きる前に本体から離れてしまうものも相当数あるんです。それに、いくらアポトーシスを迎えたといっても、元が生物ではなく機械です。自己修復や増殖の機能は停止していても、外部から何らかの刺激を与えると、機能がある程度復活することは確認されています。例えば、高圧の電流を流すだとか、一定時間高温に晒すとか。そのスターダストサンドも、小宇宙の籠もった聖闘士の血液を受けると、修復の機能を発揮するんですよね?」
 成る程。シオンもまた考え込む。言われてみれば、納得できないこともない。
「それで、スターダストサンド=ナノマシンの残骸と仮定するなら、その鉱床となっている場所には昔のモビルスーツが埋まっている可能性があると思ったのです。それを見つけられたら、使えるのではないかなとか……かつてなにがあったのか、もしかしたらわかるかもしれないとか……」
 それまでの理路整然とした口ぶりとは打って変わって、 は言葉尻を濁してしまった。
 シオンは失笑を何とか堪える。馬鹿にしているわけでは、勿論ない。理屈でまとめ上げてはいるが、単に興味や好奇心をそそられているだけなのだとわかったのだ。こういう部分には、やはりシオンとは違う本物の若さを感じる。大変に好ましいことだ。
「言いたいことはよくわかった。だが、すまんがやはり教えることはできん。それに――仮にスターダストサンドの鉱床にモビルスーツが埋まっていたとして、それが果たして本当に使い物になるのか? 復元と言ってもモビルスーツは内部までもが精密機械の塊だろう? そこまで正確に復元され、使用に耐えうるのか?」
 理論武装なら、シオンとて負けはしない。指摘してやれば、 の表情が渋くなった。
「それは……どうでしょう。昔、地球で発見された機体はそのまま運用されることになったようですが。ちょっと特殊な機体だったらしいので……。他のケースでも同じことが期待できるかと言われれば……ノーでしょうね」
 ほうら、と意を得てシオンは笑う。
「別に意地悪をしたいわけではないのだがな。お前には、必要ないのではないかと思う。それに今更そんな昔のことをほじくり返しても、現状の解決の参考になるとも思えん」
「はい……」
  は素直に引き下がった。シオンは安堵する。
 鉱床は本当に聖域の機密事項なのだ。 に教えたところでどうにかなるとは、勿論思わない。だが、いくらシオンが教皇だからといえども、一存で規律を反故にする理由にはならない。
 それに、もう一つ。 の話を聞いたシオンには、どうにも胸に引っかかる事柄ができてしまっていた。
 
 ――スターダストサンドの鉱床。

 その最大のものの一つは、この聖域にあるのだから。

MA★くろすオーバー 3 END



補足です。ナノマシンについてはほぼ完全にオリジナル設定です。
∀文庫版を元に、理屈を勝手にこじつけただけなので、ガンダムの方ではこんな設定はありません。
あしからずご了承下さい。
そして勿論、スターダストサンドについても捏造設定です。こちらも併せてご了承下さいませ。
シオンとの会話の内容ですが、この話の時間軸は13章以降と想定していますので、掲載時点ではネタバレになってしまっているということになりますが、まあご愛敬ってことで。

2010/02/06


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