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Crevice
裂溝が横真一文字に延びている。
それはぱっくりと縁も綺麗に切り立って、空に向かって口を開けていた。覗き込めば、途中から底まで闇がわだかまるほどに深い。
そうだった。
はその断崖から一歩後退した。目を転じれば大なり小なり、似たような裂溝がいくつもいくつも、いかにも硬そうな石造りの道を寸断している。
どうしようか。
もう一歩下がって、目の前のひときわ大きな断裂を眺めた。
いつもカノンはここを飛び越える。 を抱えたまま、それはそれは軽々と。猫か荷物を扱うように、 を無造作に肩に担ぎ上げてあっという間に飛んで抜ける。
回り道をするよりも断然早いのだろうことは一目瞭然なのでされるがままになっていた。そうしているうちにすっかり見慣れた風景になってしまっていたのだ。
――ひとりだということをすっかり失念して、こんなところまでのこのこやって来てしまう程度には。
は改めて周囲を見渡す。確かにこれよりは小さい亀裂も多いが、そういった場所には却って細かい亀裂が集中していて、見るからに足場が悪そうだった。
もう一度目の前の裂溝に歩み寄る。今度は覗き込んだりしない。見るのは対岸だ。目測でおおよその距離を推定する。
「……」
ひとつ溜息をついて、 は踵を返した。
仕方ない。
他でもない、いつもなら簡単にここを渡してくれる本人のところに、これから行かなくてはならないのだ。
まさかこんなにも茨の道だったとは。今後はここを通るたびに、もう少し丁寧にお礼を言うべきかな。
そんなことを思いながら、 は来た道を少し戻る。
目の前には宝瓶宮がそびえ立っている。ここしばらく主は不在だ。代わりに、この下の宮主は最近ずっと聖域(ここ)に詰めている。教皇宮で毎日のように姿を見かけていたが、今日はまだ見ていない。
足を止め、 は背後を振り返る。
少し高いところから見下ろすと、その荒々しく切り裂かれ、削り取られた大地はどこか既視感のある風景にも思えた。いかにも遺跡然とした柱や石畳の残骸は、勿論別にしての話ではあるが。
先の、本来ならばありえなかった聖戦の前に起こった戦いの果てに、こうなったのだという。
全てが終わってからまだ一年弱。何もかもが元通りになるには――戦いの残滓が完全に消え去るまでには――相当の時間がかかるだろう。
傷が癒えていないことの証のようだとは、 が思ったのか、カノンからそのような感覚を受け取ったのか。
いくら聖闘士というものを理解しつつあるとはいえども、人力で成されたとはやはり信じがたいほどその断裂は深い。戦ったものたちが受けた傷を髣髴とさせずにはいられなかった。
それはやはりこれらの裂溝と同じようにあまりにも深く、癒しがたいのだろうか。
「――誰だ?」
珍しいこともあるものだと、ふと気になっただけだった。
普段なら彼の同僚でもない限り通ったりはしない道を来る者がいる。同僚かそうでないかは、その小宇宙から容易に判別がついた。逆に言えば、それ以上のことは小宇宙だけではわからない。
いくら聖闘士の最高位である黄金聖闘士の位を拝領している彼であっても、聖域にいる全ての者の小宇宙を知悉しているわけではないのだから。
ましてやそれは小宇宙と呼んでも良いものかどうか。ごく普通の、一般人の気配と大差ない。
どこか知っているような気がしたのも、十二宮から上を行き来する権限を与えられた神官か女官か雑兵のいずれかだからだろうと思っただけだ。それならばどこかで顔も合わせていよう。しかし、きっと新入りに違いない。
普通ならば地下を通る迂回路へ回るところだ。どれも似たような神殿造りの建物――一応各宮毎に特徴はあるのだが――ばかりで、どこで迂回路に回れば良いのかまだよくわからない新入りに間違いないと、彼は結論付けた。
あの惨状を見れば、間違いに気づいてすぐに引き返すだろう。
わざわざ注意しに行くほどのことでもない。彼は読みかけの本に視線を戻した。自室のソファに深く腰掛けたままの姿勢の維持を決める。
たまの休日だ。その程度のことで静かな時間を邪魔される謂われはない。
――そう思ったのもつかの間。
しばしの後、慌てて自室を飛び出す羽目になったのだった。
任務が与えられているわけでもないときにこんな速度で移動することなど滅多にない。
光速はもとより、たとえ音速であろうとも、居住区の普通の建具では耐久性などあるはずもない。要所要所で減速しながらもなんとか間に合ったと、自分を労い褒めてやる暇もなかった。
外に出てしまえば、もうなにも気にするものはない。
まさに疾風のように、彼は跳ぶ。
「なにをしているんだ、お前は!」
思わず怒鳴りつけた。
怒鳴られた方はさすがに状況が把握できずにきょとんとしている。なにをしているもなにもない。
「…………?」
すぐ間近から自分を見下ろすきつい切れ長の目を呆然と見返すことしばし。最初に が抱いた疑問は、なぜ横抱きに抱えられたりしているのだろうという、そんなことだった。
射るような眼差しから逃れるように目を転じれば、あの裂溝が見えない。反対側を見ようとしたが、 を抱える力強い腕と胸に遮られて叶わなかった。
もう一度見上げる。いかにも不機嫌そうな顔が目に入った。
「……シュラ? どうして……」
わずかながら表情が和らいだように見えるのは、名を呼んだ所為だろうか。
「どうして、だと? こっちが聞きたい。どうしてこんな無茶な真似を……」
もう怒鳴ったりはしなかったが、声には変わらず険があった。 ごと振り返る。
ああやっぱり。
シュラの背後にあったのは、 が越えようとしていた亀裂だった。結果的にスタート地点に戻ってしまっていた。
確かに最後の踏み込みが少し甘くなったような気はしていた。だが乗り切れると思ったのだ。
これは負け惜しみではなく確信である。最悪の場合でも、足先なり指先なり、縁に掛けられた筈だ。
地球に降りてからすぐに負傷した為これまであまり動けず、重力への順応が遅れた上に体力もかなり低下してはいた。とはいえ、一応身体を張る仕事をしている身である。自らの身体能力には少しばかり自信があった……確かに危うげな急下降気味の放物線を描いてはいたが。
それなのに、 を軽々と――空中でキャッチするという離れ業をやってのけた挙句――抱えて、跳べてしまうシュラ。カノンと同じく彼も聖闘士なのだとわかってはいる。
どうにも危なっかしい状態だった を、ただただ厚意だけで助けてくれたのだということもわかる。その為だけにわざわざ飛び出して来てくれたことには感謝しなければならない。
しかし。
”無茶”の一言。少々癪に障った。
「跳べると思ったんです……あのくらいなら」
だが反論はにべもなく斬り捨てられる。
「目測を誤ったな。もしくは自分を過大評価している」
取りつく島もなく断定されて、らしくもなくむきになってしまった。
「でもあれよりももっと幅のあるところを跳び越えたことはあります」
シュラは目を見張った。まさか更なる反論が返ってくるとは思いもよらなかったのだ。
思わず手もとに目を落とせば、まっすぐな眼差しが恐れもせずにシュラを見上げている。
はっきり言って驚いた。
誰かに指摘されるでもなく、自分の目つきが鋭いという自覚はあった。下働きの雑兵や、特に女官からはそれが理由でずいぶん敬遠されてしまっているのだとは、しばしば彼にちょっかいをかけてくるお節介な同僚から聞かされてもいる。
そうでなくとも普通に街を歩けば大抵女子供には怖がられ、いかにもその筋といった風情の男どもには人気がある。そこらの野良犬のように、縄張りとやらをずいぶん大事にしている輩だ。煩いので軽く相手をしてやることになるのだが、ものの数瞬で彼等を地面に薙ぎ倒すその光景を見られれば、なおいっそう怯えた目を向けられてしまうのだ。シュラにしてみればいい迷惑である。
しかし、そんな視線にすっかり慣れてしまっていたのだと、今、ようやく気づいた。
シュラを軽く睨みつけるようにしている の表情に、怯えの成分は見受けられない。
そのことにこんなにも驚くとは。
「……まぁ確かにそれは、もう少し低重力のところでの話ですけど、でも」
黙ったまま凝視されてさすがに耐え切れなくなったのか、 は少し口早に申し立てる。
「あのくらいなら何とか行けると判断しました。駄目でも、手くらい掛けられたはずなんです……落ちはしなかったと思います」
言い募る の強情さを不快に感じない自分が意外だった。
がどことなく気まずげに目を逸らしながら話している所為かもしれない。あるいはどこか悔しそうに口を尖らせてしまったからかもしれないし、時折上げられる青い瞳がシュラの様子を窺うように、それでも強気な光を湛えたままだったからかもしれない。
「あの……シュラ?」
強気だった声が突如、困惑に揺れた。
それはそうだろう。
肩を震わせて、シュラは笑っていたのだから。決して大声ではなかったが、しばらくの間シュラは笑い続けた。
なんだか可笑しかったのだ。 が、ではない。何気ない の仕草に、馬鹿みたいに目を奪われている自分が、だ。
こんな感覚は忘れてずいぶん久しかった。だから本当に意外だったのだ。
まだこんなふうに笑える自分がいるのか。意外だった。こんなに笑ったのは本当に久しぶりだった。……意外だった。
許されないことだと。勝手にそう思っていた。無理なのだと。
笑うことなど、もう二度とできないような気がしていた。
そのくらい酷いことをしてきたのだ。それはたくさん。尊敬する年長の同僚を手に掛けてから。
とてもたくさん、酷いことを。
一度死んで、蘇って、また死んだ。その間にも。
だからこうしてもう一度生を与えられたとき、これは何の罰だろうかと考えた。
再び任された磨羯宮。そのアテナ神殿側には、一度目に死ぬ直前に自分が刻んだ罪の証が消えずにあった。
消えずに――消せずに。日々それを眺めて暮らす。
これが罰でなくて、一体何だ?
「…………あのっ」
いい加減耐えかねたのか、 は声を上げた。
「そろそろ下ろしていただけませんか?」
質問形ではあったが、口調には断固たる響きがあった。
すっかり憤慨してしまったようだ。シュラはなんとか笑いをおさめて、抱えたままだった を見る。抗議の眼差しを受け止めた。口を開く。声はまだ笑い含みな自覚はあった。
「気の短い女だな……もう少し我慢しろ」
の眉が怪訝にひそめられる。その様をシュラは注視しながら、口許に笑みが浮かぶのを止めることができない。
目の覚める思いだった。
なぜなら、なんてことないかのように跳び越えようとしたのだ、 は。シュラが自ら刻み、越えられずにいるこの罪の痕を。
ことの詳細を全く知らないわけではないのだろう。サガの乱におけるこの十二宮での戦いについて、カノンは何故か良く知っているようだった。ならば、そのカノンが知っている程度のことは、 も知っているはずだ。
だが はそんなことには頓着しない。 には全然関係のないことだからかもしれないし、これっぽっちも興味のないことだからかもしれない。
なんにせよ にとって、これはただ彼女の行く手を塞ぐだけのもので、それ以上でも以下でもないのだ。
そんな当然のことに今まで気づかなかった。気づこうともしなかった。
何の恐れも怯えも見せない の眼差し。まるで暗雲の隙間から射した陽光が、やがて全ての雲を蹴散らすかのような。
久々に見た光だ。昔は――まだ何事も起こってはいなかった時分には、ごく当たり前に享受していた。罪の意識に苛まれ、浴びることを拒否し続けていたのは、誰でもない、シュラ自身だ。
そんなことの一切を、 は意に介さない。誰もが怖がり通らない道を往こうとし、誰もが恐れるシュラの視線を真っ向から受け止める。
それは、当たり前のことでなければならないのだ。
シュラは憮然としはじめた に改めて問いかける。
「下に行きたいんだろう?」
両手がふさがっているので顎をしゃくって裂溝を示せば、 は毒気を抜かれたのかバツの悪そうな顔をした。小さく頷く。
頷き返して、シュラは断裂と向き合った。
行く手を遮るもの。
にとってそれだけでのものでしかないように、シュラにとってもまた、それだけのものでなくてはならないのかもしれない。
――シュラが望んだわけではない。それでも確固たる事実として、彼に再び与えられてしまったのなら。
途切れた道が、シュラの目の前に伸びている。その行く手を阻む亀裂。
――それは最早、過去のものであるべきなのだ。
跳ぶ。
着地して、ようやく要望どおりに下ろしてもらえた。シュラの腕につかまりながら はまっすぐに立つ。
最近こういう動作にはすっかり慣れてしまっていると思っていたが、それは相手がカノンであった場合だけのようだ。
慣れた腕とは違う感触。なにやら恥ずかしくなって、 はそそくさと手を離す。
「どうも、ありがとうございました」
「……いや」
のぬくもりが腕から消えた。それを名残惜しいと感じてしまったことにシュラは戸惑う。掛けられた礼の言葉に生返事をしてから、呆けていた自分に気づいた。咄嗟に取り繕う。
「なんとか落ちずに渡れると判断したと言っていたな」
「はい」
先程と変わらない強気な表情のまま、 は首を傾げた。主張を曲げる気はなさそうだ。シュラは苦笑する。たった今跳び越えたばかりの崖っぷちに歩み寄った。
「このあたりの敷石は大昔に作られた所為もあって、脆い」
縁を爪先で軽く触ってみせた。簡単にぱらぱらと崩れて、裂け目の底に小石が転がっていく。
さすがに の顔が気まずげに強張った。シュラを仰ぎ見、目を伏せ、もう一度見上げてまた俯く。どんな顔をしたら良いのか、明らかに迷っている風情だ。
シュラは更に苦笑する。身の程をわきまえない人間が、シュラは嫌いだ。しかし今、 に対してその手の嫌悪は浮かんでこない。強気というより、勝気なのだ。それでも決して愚かではない。表情の選択に困っているくらいだ。自分の非は認めている。
だから重ねて忠告すれば、結局は折れる。
「これからは気をつけろ。いいな?」
「……わかりました。帰りは迂回路に――」
「目的地は双児宮か?」
言葉を遮っての質問に、 はきょとんと目を瞬かせる。
「……え?」
「今日中に戻ってくるのか?」
更に問えば、要領を得ない様子ではあったが頷いた。
「あ、はい。ちょっと渡すものがあるだけなので、すぐに」
そうか、とだけ答えて、シュラは自宮に向けて歩き出す。 も後に続いた。
磨羯宮に入れば、シュラは居住区、 は更に下へと行き先が分かれる。
黙って先を行くシュラの背中を追いかけながら、まだ簡単にしか礼を述べていないことに は思い至った。目論見どおりであったならどうやら亀裂に落ちてしまっていたようなので、本当に危ないところを助けてもらったことになる。
悠々と歩くシュラを早足で追った。
なんと言おうか考えあぐねているうちに、開け放したままのドアが目に入る。シュラがまっすぐに向かうので、そこが居住区の入り口だとわかった。
行ってしまう。 は瞬時に心を決めた。
「あのっ」
声を掛ければ、果たしてシュラは足を止めてくれた。振り返る。
まだ言うべき言葉を考えていない。それでも何か言わなければと は焦り、結局しどろもどろにしか話すことができなかった。
「あの……助けていただいてありがとうございました。結果的に、その……お手を煩わせることになってしまって、どうもすみません。今度からは」
気をつけます、と続けようとして、それは叶わなかった。言葉尻を奪い取るようにしてシュラは言う。
「今度からはひとりの時には迂回路へ回るようにしろ」
はい、と は今度こそ大人しく頷いた。どことなく項垂れたようにも見える。それを見届けてシュラは踵を返した。言い足す。
「下から上がってきたときは声を掛けろ――少なくとも今日は一日ここにいる」
弾かれたように は顔を上げた。見つめる先で素っ気無い背中がちらりと を振り返る。念を押した。
「いいな?」
「……はいっ」
微かに頷いて、シュラはドアの向こうに消えて行った。
ひとり通路に残された は、閉じたドアに向かって静かに一礼する。誰にも見られることはなかったが、下げた面には笑みが浮かんでいた。
「ああ……お前のところに忘れてきていたのか」
双児宮のカノンの自室を訪ねれば、あちこちがひっくり返されて荒れた室内で部屋の主が の姿を認めて大仰に溜息をついた。探し物が無事見つかって心底安堵したようだ。
は持ってきたPCと書類の入ったケースを手渡す。
「……これは?」
書類の方をつまみ上げたカノンはあからさまに嫌そうな顔をした。訊きながらも、中身は半ば予想済みである。
「双児宮に行くのならこれも頼むって、サガが」
はぁっと今度は忌々しげに溜息をついたカノンに、 は追い討ちを掛ける。――当人にはそんなつもりはないのだが。
「伝言も頼まれたの。今日中に上げるように、って」
「……なんだと?」
「だから、今日が提出期限だって。先日海の方へ出向いたときの報告書」
は律儀にサガからの伝言を復唱する。カノンはどっかりと床に座り込み、眉をしかめた。
「あれは個人的に頼まれたから行っただけで、別に聖域から命じられて赴いたわけじゃない。報告書を出さなきゃいけない理由はないんだがな……」
相手にぼやいても仕方がないのでほとんど独り言のつもりだった。当然返答は期待していなかったのだが、 はくすりと笑って答えて見せた。
「”私もそう思って今まで提出を求めてはいなかったのだが、今日いきなり教皇に言われてな。教皇命令だそうだ。――何をやったのか知らんが、これ以上あの方の機嫌を損ねるような真似はしてくれるな。何がなんでも今日中に持って来い。夜11時までは待ってやる”以上、伝言です」
カノンはがっくりと肩を落とした。どうやらカノンの反応を想定していたサガの方が一枚上手だったらしい。本人が目の前でそう言っているのならともかく、メッセンジャーに仕立て上げられた に文句を言っても始まらない。そこまで見越されていたのかと、兄の策士ぶりに心の中で投げやりな拍手を送った。
「わかった――と奴に言っておいてくれ。わざわざすまなかったな」
しぶしぶ書類を持って立ち上がる。 の頭にぽんと手を乗せ伝言と謝辞を伝えれば、いえ、と は微笑んだ。
その表情に、カノンはおやと片眉を上げる。
「なんだか今日は機嫌が良さそうだな」
「そう?」
首を傾げてカノンを見上げる はやっぱりいつもよりもずいぶん柔らかい表情をしていた。
では報告書頑張って上げてくださいね、と踵を返しかけた を呼び止める。
「……なにか良いことでもあったか?」
振り返った は少し考えるような顔をした。やがてはにかむように微笑んで、一言。
「シュラって、優しい方なんですね」
「………………は?」
あまり話したことがないのでその人となりを良く知っているわけではないがカノンの目から見る限り、シュラは愛想の欠片もない、ただの強面青年である。何をどうすればそのような評価が下されるのか。
呆然としているうちに は出て行ってしまい、後には提出期限の迫った書類を握り締めたカノンがひとり残された。
なにやら最近教皇補佐の弟にガンつけられているような気がするのだが俺は何かしただろうかと、蟹座の聖闘士が山羊座に相談されてしまうのはこの数日後の話である。
Crevice END
後書きです。
この話は前サイトにてキリ番を受け付けたときにシュラ夢とリクエストいただいて書いたものです。
シュラorカノン中心の、連載ヒロインin聖域の日常というお題だったわけですが、お答えできていたのかどうかいまだに自身がありません。
日常ということで、少し軽めなお話にするつもりだったのですが、蓋を開けてみれば
それなりに重かったというか、シュラ救済話になっているような……
結局、これが私の生きる道ということなのか(汗)
最後のオチについて少し補足を。
K氏は多分、変な意味でS氏にガンを飛ばしているわけではないと思われます。
おそらくあのような評価がどんなところから下されたのか見極めようと 興味深々虎視耽々と観察しているだけでしょう。結構彼は知りたがり君だと思います。