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Side-S:06章 舞い上がる戦神1


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舞い上がる戦神1


 女神の退出を見届けて、広間の両脇に控えていた聖闘士達が誰からともなく歩み寄ってきた。
  は頭を上げる。正面に立った教皇シオンを見上げた。目が合う。先ほどの殺気が嘘のような、静かな眼差しが注がれていた。なんとなくいたたまれなくなって、目を逸らした。ちらりと周囲を窺ってみる。シオン、サガ、カノンを除いて全部で十一人。全員漏れなく黄金に輝く鎧――聖衣(クロス)――を纏っていた。聖域(ここ)の最高位の人間が全員揃ってしまっているということになる。
 自分はそれほどの脅威と看做されているのだろうか。だが各人ともその表情は様々で、そういった意味での総意は感じ取れない。明らかに警戒している者もいれば、好奇心剥き出しといった者もいる。
 薙ぐように彼らを一瞥して、 はシオンに目を戻した。
 何かを試されていたのはわかっていた。でもそれが何だったのかなどと、聞くつもりはない。相手は勝手に納得しているようだし、それは彼等の事情であって、 には関係がない。彼等は に情報が流れてしまったことを懸念していて、それは も同じだった。ならば互いに口を噤んで不干渉とするのが最良であると判断した。
 だから は何も聞かないようにしていたというのに。
 女神は踏み込んできてしまったのだ。好意か、厚意か。それともこれが、神であるがゆえの傲慢さなのか。
 ――監視の名の下に拠点(ベース)を提供するなど。
 いくら神でも、身の内に爆弾を抱え込んで平気ということはないだろう。そのやり方自体はあまりにも人間くさい矜持を感じさせる。覚悟の上なのか、大したことはないと踏んでいるのか。真意が読めない。ただひとつだけ、わかったことはある。さっきカノンに暴露されてしまったグラード財団関与の兵器工場の件では、彼女――城戸沙織は無関係だ。もしかして知らずに抱えてしまっていた問題の早期解決のための手駒にされたのだろうか。
 そうであればいいと思った。
 シオンが目を逸らし一歩引いたので、 は立ち上がる。退出を申し出ようとして、叶わなかった。先に声がかけられたのだ。
「怪我の状態はどうかね――昨日はすまないことをした」
 彼の瞳が閉じられているのは、感覚を閉ざすことによって自身を高めるためだと、昨日まではなかった記憶に書き込まれている。乙女座(バルゴ)のシャカというらしい。昨日は、普通に目を開いていたと思うのだが。
「いえ」
 疑問は、それでも表情には出さない。その必要はない。
「骨に異常はありませんので行動に支障はないでしょう」
「意識を失うほど失血したようだが、体調は大丈夫かね? こんなところだ。輸血もできていないのだろう? ヒーリングもしてはいけないと聞いたが」
「医療用マシンが体内に常駐しています。造血の補助促進機能も働いていますので、もう大丈夫です。お気遣いいただきましてありがとうございます」
 いや、とシャカは僅かに口籠った。
「……文字通り、傷口を抉ってしまったのでな。悪いことをした」
「いえ」
 否定して見せたのは、彼があまりにも気まずげだったからでは、決してない。
「そもそも負傷したのは私のミスですから」
 そうだ。だからこれ以上の失態を犯すわけにはいかない。
 あれから恐ろしいほど時間が経ってしまっていた。これ以上のんびりしているわけにはいかないのだ。今にも矢継ぎ早に質問を投げかけようとしている者がいる。付き合っていられない。先手を打った。
 立ったままシオンに向かって礼をする。
「――御前よりの退出をお許しいただきたいのですが」
 既に彼らの信奉する女神自身から最終決定が告知されている。引き留める理由は、最早ないはずだった。
 果たしてシオンは鷹揚に頷いて見せた。勿論念を押すのも忘れない。
「よかろう。先ほどの女神のお言葉、ゆめゆめ忘れるでないぞ。――カノンよ」
 呼ばれて、 の後ろに付き従っていた彼が姿勢を正した。
「は」
「頼んだぞ」
「承知いたしました」
 深く一礼して、カノンは の隣に立つ。見下ろされた。顎をしゃくるように軽く首を振っていた。ついて来いということらしい。
 同時に教皇が踵を返す。先ほど女神が消えていった緞帳へと向かっていった。 はその背を呼び止める。
「教皇猊下」
 まだ聞かねばならないことがあった。聞くというよりは、質問の形を取った確認だ。彼等が本当に、 を自由に動かすつもりなのかどうか。
「私のモビルスーツをお預かりいただいていると聞いております。お返し願えますでしょうか?」
 はたと立ち止まったシオンは、僅かに渋面を作った。
「そうであったな」
 しかめた顔は、憂いを含んでいた。
「余もまだ見てはおらんのだが、兵器だそうだな――戦闘機のようなものだとか」
「そうですが、何か?」
 些か声が硬くなるほどの緊張を覚えた。なにぶん には手出しができない方法で人目を避けて隠されているのだ。武器の使用を良しとしない彼らにとっては、それほど容認しがたいものなのだろう。それでも には何が何でも必要なものだ。どうやっても取り戻さなければならない。それ以前に、あれを彼らに――この世界の人間に渡してしまうわけにはいかない。絶対に。
 最悪の事態を想定しかけた の耳に、シオンのその言葉は意外だった。
「すぐに使うつもりか? まだ体の調子も万全ではないというのに、なぜそんなにも急(せ)く?」
 思わず は瞠目した。何が言いたいのか理解できない。シオンは諭すように続けた。
「お前が何を相手に戦っているのかは知らぬが、そんなに急いでどうするというのだ。万全を期すつもりなら、もうしばらく静養したほうが良かろう。闇雲に向かっていっても得るものはあるまい。戦いとはそういうものだと、余は長い年月の中で学んでおる。しかも――」
 痛ましげに見つめられ、 の困惑はいっそう深まる。
「しかも、今、ここで、お前は一人きりなのだろう? ――もっと自分をいとえ」
 なぜこんなに気遣ってくれるのか、わからなかった。何か目的があってのデモンストレーションだったとはいえ、半ば本気で に拳を向けた後だというのに。ただ、 が懸念した理由で渋っているわけではない。だから も事実を述べるしかなかった。
「……最後の戦闘から既に二十時間近く経過しています。いくらこの聖域が結界で守られているとはいえ、いままで追撃がなかったのが不思議なくらいなのです。早急に対応できるよう、態勢を整えておく必要があります」
 すぐさま外野から反論の声が上がった。
「何が攻めてこようと、我々がそれを簡単に許すはずもあるまい」
「そのとおりだ。すぐにでも撃退してやるぞ」
  は舌打ちをこらえる。――当たり前だが彼らには、わからないのだ。無理もない。そう自分に言い聞かせて、何とか沈黙を保つことに成功した。
 代わりに諌めたのは隣にいたカノンだった。
「アイオリア、ミロ。お前達は昨日のあれを見ていないからそんな簡単なことが言えるんだ」
「だが昨日と違って、今日は我等黄金聖闘士が全員揃っている。いくらなんでもこの状況で滅多なことにはなるまい」
「カミュ……お前まで……」
 カノンは盛大に溜息をついた。そこへ更に追い討ちがかかる。
「大体今そいつが言ったとおり、聖域には結界がある。追撃がかかっても、下手に動くよりはむしろ黙っていたほうがいいのではないか」
 後半部分は明らかに に直接向けられた言葉だった。眼光も鋭い目を、 は無感動に見返す。山羊座(カプリコーン)のシュラといったか。彼の言うことも考えなかったわけではない。しかし。
「私は、入って来れましたが?」
  の切り返しに、シュラばかりでなく他の者も一様に表情が険しくなった。
 結界というのがどういうものなのか、 にはいまいち理解しきれていない。確かにこの一帯はレーダー、センサー共に何の反応もなかった。建造物があるとも生物がいるとも、今思えばいっそ不自然なくらいに何も感知しなかったのだ。目視でも、岩山と林が続くばかりだった。
 だからこそ、ここを選んだのだ。たいして人目に触れることもなく、確実に敵機を屠ることのできる理想的な場所として。
 楽観的になれない理由は、もうひとつある。
「それから、昨日戦ったモビルスーツ二機の内、一機が落ちたのはは多分、ぎりぎりこちらの結界の外です」
 ですが、と静かに鋭く異論を唱えたのは白羊宮の守護者、牡羊座(アリエス)のムウだった。
「それがあなたの”敵”に発見されたとして、そんなにもすぐにあなたまで見つかるものでしょうか? ……ここは私もシュラと同感です」
 あくまで穏やかに言い切って、ムウはじっと を見据える。その目には先ほどのシオンと同様の色があった。――案じながらも試している。やはり師弟というのは似るものなのだろうか。多少押し付けがましくはあっても、不思議と不快ではないところまで似ていた。
 それでも面倒ではあった。 は短く溜息をつく。聖闘士というのはなかなか理屈っぽい人々であるらしい。それともギリシャという場所の所為だろうか。何事もとことん議論を重ねなければ納得できないのか。なんであれ、 の側の人間にとっては今更口に出す必要のない自明の理を、いちいち説明しなくてはモビルスーツを返してもらえないというのは本当に面倒だった。
「……では、あなたがたが彼等だったら、どうしますか?」
 つい意地の悪い返答になってしまった感は否めない。ムウだけではなく、この場にいる全員に挑むように言葉を投げかけた。
「敵を追っていった仲間の消息が途中で絶たれたら、どうしますか?」
 まず答えたのは、サガだった。
「捜索、もしくは支援の為に、第二陣を派遣するのが普通だな。第一陣の安否と、任務の成否を確認する必要がある」
  が求めていた通りの、実に理想的な返答だ。次の問いに進む。
「ではそこで第一陣のメンバーの死体を発見してしまったら? 不明者の数も足りず、手を下した者もわからない。そんな状況であったのなら、その第二陣はどうするでしょうか」
「生存者がいないか……他の死体がないか、周辺を探すだろうな」
 言い難そうに人の良さそうな顔を歪めたのは牡牛座(タウラス)のアルデバランだ。低重力下の月で何の調整も受けずに育ってしまったのかと思ってしまうほどの、呆れるくらい大きな男だった。そういえば今まさに例え話をしている、昨日墜とした機体は”トーラス”だ。黄道十二星座にあやかった命名をされたシリーズで、高機動型の宇宙用量産機――。
「つまり、連中が昨日ロストした”トーラス”二機の内、一機が見つかってしまった場合、その付近――聖域内にも捜索の手が及ぶと言いたい訳だな、 は。その事態を避けたい、と」
 笑い含みの声の主を は咄嗟に見上げた。軽く睨みつける。まだ思考を読まれ続けているような気がした。しかし今の にはカノンの胸の内はわからない。それで、そんなわけはないのだと知る。
「”トーラス”?」
 アルデバランが首を傾げた。 の視線をものともせず、カノンはしれっとして続ける。
「そう。昨日こいつが墜としたモビルスーツの名前だ。お前の守護星座が名前の由来らしいぞ」
「……」
 さすがに複雑な表情をしてアルデバランは黙り込んでしまった。
「他にもあったな。”エアリーズ”とか”リーオー”、”ビルゴ”、”パイシーズ”に――”キャンサー”なんてまんまそのものだな」
「――カノン!」
 耐えかねて、 は低く鋭く叫んだ。よりきつい視線を向けると、カノンはその顔から軽薄そうな笑みを消した。わずかに腰を屈めて の顔を覗き込む。
「わかったか?――つまりは、そういうことだ」
 威圧的な口調は、意識してやっている。何か取引をしたいらしい。 は見下ろしてくる青い目を臆さずに見返した。
「――このままでは、あなたがたにとって私がそうであるように、あなたは私にとって危険な人物ということになるというわけですね?」
 カノンは口許だけで笑った。いっそ器用なほどに目だけが笑っていない。
「それで、どうしたいんですか?……どうしたら、いいんですか?」
 あえて尋ねたのは譲歩を示すためだ。もともとこの状況において は圧倒的に不利な立場にある。それをカノンは念押しした上で、 に何かを提示しようとしている。だから聞き入れる用意があると、意思表示する必要があった。
「先ず確認しておこう。俺は先ほどアテナから与えられた命令を確実に履行しなくてはならん。そしてお前は、お前の任務を遂行し続けるつもりなわけだ」
  は無言で頷いた。カノンは を見据えて、続ける。
「となると、俺にとってもお前にとっても現状は都合が良くないな――違うか?」
 今度は頷かなかった。
 それは確かに、監視を言い渡されたとき真っ先に思ったことではあった。カノンが自分の監視役というのはいい。だが何もかもを彼に知られてしまっている以上、 にも彼を監視する必要があるのだ。一方的に監視されているだけの状況では、自分の目の届かないところで何を暴露されているかわからない。――たとえば、たった今のように。
 しかしそれはあくまで にとって不利益であるというだけの話だ。カノンにとって都合が良くないというのは解せない。
 表情に出したつもりはないのに、カノンはまたもや の胸のうちを見透かしたかのように言葉を紡いだ。
「アテナより直々に命じられている以上きっちりと見張らせてもらいたいところなんだが、いきなりモビルスーツで出られたらいくら俺でも追跡が難しい――できないとは言わんがな」
「……つまり、私と確実に同行できるよう計らえということですか」
「もちろん、ただでとは言わん。お前が抱えている任務の重大さは、理解しているつもりだ。それが俺の所為で滞るような事態だけは避けたい」
 深い声に、はっとした。 は改めて真直ぐにカノンを見上げる。彼はもういかなる笑みも浮かべてはいなかった。
 あのとき、本当に同調したのだと今更ながらに実感した。 の危惧を、カノンは己のものとして受け入れている。それを彼なりに昇華させようとしているのだと、そう感じた。
「そこで提案だ。俺を”特定協力者”にしないか?」
 なるほど。 は唸った。
  の属する大統領府中央情報局国家保安部は、大統領直属にして唯一の公的武力保持機関である。その特殊な位置づけから、当然構成要員は少ない。多すぎれば軍部化して増長を招きかねない、という懸念を一般市民に抱かせないためだ。しかしあまりにも少ない人数に対して、その守備範囲はほぼ太陽系全体に及ぶ。理念や懸念はともかく、現実として力の及ばない武力行使機関などあっても無意味だ。そこで”特定協力者”と呼ばれる民間人に文字通り協力を求めることになる。”協力”内容は情報の横流しから裏社会への橋渡し、果ては戦闘行動への直接協力まで多岐に渡るが、基本的に正規職員のツテによる人選のみで、依頼するに当たっては特別な審査も規定も存在しない。だが報酬の問題から、中央情報局との一時契約という形を取る。職員個人が経費として報酬を申請すると横領などの問題が出てくるからというのがその表向きの理由である。実際のところは情報の流出を防ぐ為に協力員の実態や人数を当局で正確に把握しておきたいという公安上の思惑のほうが強い。
  はこれまで特定協力員を採ったことがなかった。そんな人脈もあまりなかったし、なにより必要がなかった。
 しかし今回ばかりは勝手が違う。カノンを”特定協力者”に指定すれば任務行動への同行を拒否する理由もなくなるし、正規職員と同等の守秘義務も要求できる。
「……今だと仮契約という形しか取れませんけど」
 それでも良いのかと伺えば、自己推薦者は不思議そうに片眉を上げて見せた。
「何か問題でもあるのか?」
「報酬の協議ができません」
 生真面目に答える に、カノンは苦笑を漏らす。
「いや、まあ、もともとそれが目当てなわけではないからな。別に構わんが。――それより、お前はどうなんだ? いいのか?」
 逆に問われて は思わず瞳を伏せた。受けるしかない話であることはわかっている。躊躇う必要がどこにあるのだと自分を叱咤し、傲然と顔を上げた。
「お受けしましょう。――具体的な”協力”内容や同行の仕方については、もう少し詰めて話し合う必要がありますが」
 ニヤリとしか表現のしようのない顔で、カノンは笑った。
「了解。では、契約成立だな?」
 その挑むような笑顔に向けて、 はおずおずと右手を差し出す。うまく丸め込まれたような気がしないでもないが、決めたのは だ。だからこれは、自分自身に向けた宣言でもある。
「……こんなこと、したことがないんですが」
 今自分はきっと、心底戸惑った表情をしているのだろうと はひとごとのように思った。自分ではないが、そんな顔を以前に見たことがある。知っている者が見たら、こんなときの態度も表情も似ていると言われるのだろう。
 ゆっくりと伸ばした手は、力強く握られた。
「よろしく頼む」
「……こちらこそ」
 緊張して冷たくなっていた の手に、その大きな掌のぬくもりが心地良かった。

舞い上がる戦神1 END


GWをご存じの方向けの後書き。

最後の部分は勿論、あの南極戦のオマージュです。
別にこの後、二人が決闘するわけではありませんが(笑)

2010/01/28


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