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Side-S:07章 ゆめのつづき2


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ゆめのつづき2


 まばゆいほどに清らかななにかに包まれていた。
 例えばぬくもり。優しいてのひらのような。例えば寄せては返す波。心地よい波動。何もかもが無条件に安らげる。暗闇。あるいは、柔らかなひかり。
 間違いなく知っている。すべて。憶えている。
 声が聞こえていた。厳かでいて、どこまでも優しい。これは祈りだ。
 引き留められて、だから感じることができた。
 嬉しく、懐かしく。ありがたくも――恨めしい。
 どうして、と。思う。今だからこそ。どうしてそんなことをしてしまったのですか、と。
 引き留められた者だから、抱く疑問。
 答えはない。永遠に、答えを得られることはないのだ。きっと。
 そう思ってきた。ずっと。
 なのに今、私を包み込むこれは――なに?

 ***

 ゆるゆると、 は目を覚ました。繊細なレースを通して減衰された白い陽光が寝起きの瞳に優しい。
 夢の続きだろうかと一瞬思ったが、違う。
 幾度かまばたきをした。ゆっくりと目を上げれば、天井ではなく天蓋が目に入る。 を取り囲んでいるレースはそこから下りて来ていた。身を起こす。どうしようもなくだるかったが、昨日の今日だ。自業自得である以上、仕方ない。
 しっかり覚醒するにつれて、見ていた夢が朧になる。それでいい。夢は夢だ。意味などない。
 だからこんなに気が重いのは、決して夢見が悪かった所為ではないのだ。
 起き上がり、そのままベッドの上でうずくまる。
 昨夜星華が丁寧に手当てをしてくれた左腕は、ナノマシンの働きで順調に回復していると感じた。実際夕べの時点では出血は完全に止まり、回復段階に移行していた。昼間にミロが真央点とやらを突いて止血を施してくれたのが効を奏したのだろう。今気分が良くないのは、失血した分を取り戻せていないのと、昨日使った鎮痛剤の所為だ。
 ふと耳を澄ます。人の気配がした。レースの向こうで極力物音を立てないように動いているのが窺える。きっと星華だ。起きているのだし、 から出て行ったほうが余計な気を遣わせずに済むだろう。
 仕立ての良いレース地を右手だけでたくし上げていると、いきなりふわりと重みが消えた。それどころかするすると左右に巻きとられていく。
 やはりまだ夢を見ているのだろうか。思わず疑いかけた の目の前に現れたのは子供だった。十歳位だろうか。見るからにやんちゃな顔をして、口を開けばやはり元気そのものといった感じだった。
「おはよう、お姉ちゃん。ずいぶん目を覚まさないからみんな心配してたんだよ。怪我はどう? まだ痛い?」
 少しばかりアクセントが怪しいものの、ずいぶん達者な日本語だ。
 それよりも。この子は誰?
 何も言わずに凝視してしまった の視線を、少年は違う意味で受け取ったらしい。
「あれ? 日本語わかるんだよね? 星華お姉ちゃんがそう言ってたし。それともオイラの日本語、どっかおかしいのかな?」
 くしゃっと眉尻を下げて、少年は心底困った顔をした。いくら でも警戒のしようがない。
「……日本語はわかります。あの、あなたは? それに、この天蓋のレースどうやって……」
「あ、しゃべった! 良かったぁ。通じてたんだね。そうだよね! だって星の子学園のみんなにもちゃんと通じてたもん」
 あっという間に満面の笑顔になって、ベッドに腰掛けたままの のすぐ前まで近寄ってきた。大きな目で を見上げる。
「えっとね、オイラは貴鬼! 牡羊座(アリエス)のムウ様の一番弟子さ! ムウ様は教皇のシオン様の弟子だから、オイラはシオン様の孫弟子ってことになるんだよね」
 機関銃のようにしゃべる子供だ。 に口を挟む隙はなかった。
「今日はね、星華お姉ちゃんのお手伝いをしてほしいって、シオン様に頼まれたんだ。今は沙織お姉――じゃなかった。アテナもいらっしゃるから、星華お姉ちゃんだけじゃ手が足りないけど、他の女官じゃきっと駄目だろうから、オイラに頼みたいって」
 言い切って、両手を に向かって差し伸べた。
「立てる? 包帯を替えなくちゃいけないよね。でもその前にお風呂は入れる? 準備はしてあるんだ」
 ぽんぽんと弾むように貴鬼は言葉を紡ぐ。 は小さく笑みを零した。
「大丈夫、立てます。お風呂も大丈夫だと思うわ――どうもありがとう」
 立てると言う の言葉がいまいち信用できないのか、貴鬼は両手を伸ばしたままだ。 はそっとその小さな手を取る。思いのほかしっかりした力のある手に引かれて、立ち上がった。少しばかり眩暈がしたが、それでも夕べよりはましだった。
 ばさりと音がして、 はたった今出てきたベッドを振り返った。天蓋のレースが元通りに下りている。
「……あれは一体どうなっているの?」
「オイラがやったんだよ」
 貴鬼は得意げに胸を張った。しかしそう言われたところで納得できるはずもない。紐か何かを引っ張っていたわけでもないし、ましてやその手は を引いている。
 猜疑の視線をどう受け止めたのか、貴鬼はぱちりと片目を瞑って自信たっぷりに言い放つ。
「まぁ、見ててよ」
 言われたとおりに見守る先で、レースが再びたくし上げられた。見えるようになったベッドの上で、布団と枕が浮き上がる。見えない手が行っているかのように、枕が正しい位置に戻され、上掛けが綺麗にその上に乗った。
「どう?」
 にこにこと、貴鬼は を見上げる。そういうことか。確かに見てしまった以上理解はしたが、やはり信じがたい。
「いわゆる念動力(サイコキネシス)とか、そういうものなの?」
「そうだよ!」
 なるほど。こんな子供なのに、こんなところ(聖域)に所属しているだけのことはある。はなから人知を超えた人々の集うところだと事前に情報を得ていたにも関わらず、いざ目の当たりにすると、やはり驚きが先にたつ。
「すごいのね……」
「へへ……ありがと! でもムウ様やシオン様のほうがもっとすごいんだよ。オイラなんてまだまだだって、いっつも言われてる。もっとがんばって修行しなくちゃね」
 どこまでも屈託なく、貴鬼は笑う。まっすぐな眼差しで。 にはそんな貴鬼が眩しく見えた。
「貴鬼君も、聖闘士を目指しているの?」
「うん!」
 一片の迷いもない、明確な返答だった。目指すべき希望を、しっかりと胸に描いている。いい子だ。
 この位の年の頃の には、もうそんな前向きな希望などなかった。
 そんなことを、ふと思った。

 ***

  が目覚めたと貴鬼から連絡を受けて、カノンは教皇宮へ向かった。
 手には昨日輸送機から持ってきた医薬品入りのザックがある。昨夜渡し損ねていたものだ。
  にあてがわれた部屋のドアをノックすれば、応えはあったが、貴鬼の声だった。
「あれ? カノン、何しに来たの?」
「…… が目を覚ましたと伝えてきたのは、お前だったと思ったが?」
「だからって早すぎだよ。まだご飯だって食べてないのに! それとも、起きたばっかりの着替えシーンとか見たかった? だったら残念でしたぁー! 今いないからねっ」
 どうにも口ばかりが達者な子供(ガキ)だ。カノンは貴鬼を軽く睨みつけた。だがこういう子供にはまじめに取り合わないのが一番だと、大人なカノンは学習済みだ。
「いない? どこへ行ったんだ?」
「禊の間だよ。沙織お姉ちゃんが、禊役のおばあちゃんに頼んでたんだ」
 カノンは軽く舌打ちした。一足遅かったらしい。それでもやはり早いほうがいいだろう。
「わかった。邪魔したな」
 踵を返す。向かう先は来た道ではなく、禊の間――教皇宮の大浴場――である。
 行き先に気づいたのか、貴鬼が慌てて追ってきた。
「ちょっとカノン! 駄目だよ! お風呂覗こうなんて聖闘士にあるまじき――」
 甲高い声が途中で切れたのは、勿論カノンが貴鬼の口を塞いだからに他ならない。
「誤解を招く発言は止せ」
 襟首を掴んでつまみ上げ、睨みつける。
「渡さないといけないものがあるんだ。本当は風呂前が一番良かったんだがな。お前が呼ぶのが遅いのが悪い。――もう大声は出すなよ?」
 頷く代わりにじたばたするのをやめた貴鬼の襟を離してやった。ただ離しただけなのだが、猫のように足音もなく床に降り立ったのはさすが聖闘士見習いというべきか。
 無事に着地した貴鬼は文句を言う代わりに、カノンを見上げてにんまり笑った。いかにも何か企んでますと言わんばかりだ。
 カノンはさっさと歩き出した。そんな様子の子供の相手をする気などもとよりない。どうせろくなことを言わないに決まっていた。
「あっ、待ってよカノン!」
 案の定、貴鬼は後を追ってきた。とりあえず無視する。
「オイラも一緒に行くよ。そうすればカノンが本当に覗きに行ったんじゃないって証人になれるでしょ?」
 めげずに貴鬼はカノンの足元にまとわりついた。カノンは一旦立ち止まり、冷ややかに貴鬼を見下す。途端に笑顔を引きつらせ、貴鬼は逃げの体勢に入った。
 しかしいくら生まれつき超能力に恵まれているといっても、現役の黄金聖闘士の速度に勝てるわけがない。
「……ひどいや、カノン……」
 速度はともかく、力の入れ具合的にはごく普通の成人男性レベルにまで落としてもらっても拳骨を脳天に一発食らえばやっぱり痛い。かくして貴鬼は半べそをかくことになったのだった。

 *** 

 風呂と言われてシャワーを想像していた は、巨大な浴場に絶句した。広い浴槽には満々と湯が湛えられ、室内にいくつも灯された蝋燭の光は湯気の中で朧に煌く。
 傷口に湯がかからないよう、包帯の上から油紙を巻かれた。それをしてくれたのは貴鬼から後を託された高齢の女性で、彼女が の入浴を世話してくれた。上から何か言われているのか、それとも元々そういう性分なのか、一切口を開かなかった。――もっとも、 がギリシャ語を話せないのをわかっているからかもしれなかったが。
 長年この仕事をしているのだろう。慣れた手つきで丁寧に の髪を洗い、身体を清めるのを一通り手伝うと、無言で浴槽を示した。入れということらしい。
 首を振り、自由の利く右手を振って断る。
「身体を温めすぎると血行が良くなって、また出血してしまう可能性があるので、お湯は遠慮したいんですけど……」
 英語と日本語、それぞれ使って言ってみたが徒労に終わった。女性は自らの手を湯船に浸して、もう一度 を促す。初めて何かをしゃべったがやはりギリシャ語で、 には理解できなかった。
 仕方ない。 は小さく嘆息する。出血したらしたで、またそのときにどうにかすればいい。
 覚悟を決めて足を浸ける。そろりそろりと胸まで浸かって、それほど熱くないことに気づいた。老女を見上げれば、にっこりと笑んでいる。先程のジェスチャーは、熱くないから大丈夫と言いたかったのだろう。
 浴槽の縁に背を預けて、 はぼんやりと上を見上げた。
 昼間だというのに薄暗く、立ち込めた湯気を朧な灯りが照らす空間は、ライブラリィでしか見たことのない古代建築様式の内装とあいまって、まるで夢の中のようだった。目を閉じると、すぐに意識が混濁を始める。
 やはり疲れている。身体も、精神(こころ)も。
 ここ数日――この世界に紛れ込んでしまってからはずっと――相当の緊張状態にあったのだと実感した。こんなに落ち着いた気分になれたのは、一体どれくらいぶりだろうか。湯の浮力で久しぶりに身体が軽く感じられた所為か、心底ほっとした。
  が常駐するのは大抵スペースコロニーか軌道ステーションがほとんどだ。それらの施設では人間の生命活動および行動に支障がないよう、人為的に重力を発生させているが、地球上と同じ1Gはないのが普通だ。だから正直、地球に降下してからずっと身体が重く、不快だったのだ。
 そして今も、湯をすくえば が記憶しているよりも水は少し重く、指をすり抜ける速度も少し速い。ずっと信じてきた感覚の微妙なずれ。違和感が少しずつ積もり積もって、大きなストレスになっているとの自覚はあった。
 そして後方支援が完全に期待できない現状。自分の対応の甘さに因るミスの所為で負傷しているこの状況。――さすがに参っていた。できるだけ考えないようにしてきたが、それでも限界というものはある。
 そんな中で昨日、カノンが協力者の申し出をしてくれたのは戸惑った反面、今となっては嬉しくもあった。 はそれまで昔からの同僚としか仕事をしたことがなかった。だから言われたとき、咄嗟に不安を覚えたのだ。
 しかし昨日の感触では、カノンは十分に”使える”人物だと思った。知識の範囲も広いし、勘も良かった。順応性も高い。
  の監視という名目が優先されるとはいえ、”協力者”という が安心できるポジションにわざわざ立ってくれたのだ。とりあえず感謝するより他はなかった。
 半ば朦朧としながら物思いに沈んでいると、老女が再び の傍らにやってきた。その手にはガラス壜がある。少々不審げに見守る の視線にはまったく気づかず、壜の中身を手に取った。
「――?」
 老女は丁寧に の髪に壜の中身を馴染ませていった。良い香りが立ち上るとろりとした感じのその液体は、恐らく保湿用の香油かなにかだろう。
 されるがままになりながら、 は少々居心地の悪さを感じずにはいられない。これではまさに至れり尽くせりだ。こんなに良くしてもらう理由は、 にはないのに。
 思わず嘆息した。気づいた老女が気遣わしげな視線を向ける。なんでもないと無理やり笑んでみせようとして、途中でやめてしまった。この広い浴場にひとつしかない扉の方を凝視する。
 ――覚えのある違和感を感じた。昨日、何度か感じたものと酷似している。
 これで の予想が当たっていれば、この感覚がいったい何なのかわかる。そうすればこのもやもやした気分も少しは晴れるだろうか。
  は淡い期待を込めて扉を見つめた。

ゆめのつづき2 END



後書き。
お約束の(←?)入浴シーンでした~
いっぺんでいいから、聖域名所(笑)の一つとして名高いゴージャス大浴場を舞台にしてみたかったのです。
念願が叶いました。ていうか、叶えました!
前回に引き続いての、サブキャラ御登場キャンペーン第二弾は貴鬼君でした。
良く喋ってくれる子はいいですね。
そうそう。喋るといえば、前回から共通言語の問題をとりあげてます。
全員が日本語を話せるという設定は比較的多いと思いますが、あえてその路線は踏襲しないようにしました。
やっぱりね、どう考えても日本語って難しい&マイナーな言語だと思うので。
全てが終わってから1年弱という設定をしている以上、その短い期間で完璧に習得っていくらなんでも無理じゃないかと思うのですよ。少なくとももし私が日本に生まれてなかったら、絶対にムリ(笑)
沙織嬢が城戸氏の孫ということで日本国籍を持っているとはいえ、全員が日本語を強要される理由としては弱いんじゃないかとも思いますし。
むしろお嬢様として相当英才教育されてきた(と思われる)沙織嬢なら、英語を初め数ヶ国語はマスターしていていただかないとね!
というわけで、全編を通しての共通言語は英語ということにしておいてください。
でも聖域組同士の会話はギリシャ語。このネタは今後所々で出てくることになると思います。
だって、やっぱり言葉って大事だよ。うん。
ちなみに私は、話せる!と胸を張っていえるのは日本語だけです(爆)

2010/01/29


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