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Side-S:中編02 Boys meet G1


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「そこの女! ――おい、貴様のことだ! 答えろ女――――ッ!!」
 
 朝の清々しい空気の中、怒声が炸裂した。周囲の石壁や岩肌に反響してこだまする。おんなおんなおんなとエコーがかかって、下世話なことこの上なかった。
 
 ここは聖域の要、教皇宮を抜けた先。アテナ神像が屹立する神聖なる広場である。しかも最強の黄金聖闘士が守護する十二宮をも超えてきた、終(つい)の聖地なのである。
 間違っても朝っぱらから罵声が聞こえるべき場所ではない。
 さすがに叫んだ本人もばつが悪くなったのか、こだまが消えたあたりでごほんと咳払いをしてごまかした――かのように見えて、そのまましばし咳き込んだ。単に朝一で大声を出したせいでむせてしまったらしい。

 その隙に、声を掛けられたほうはそそくさと逃亡を図っている。アテナ神像の後ろ、崖へと向かった。
「待てと……げふ……言って……ごほッ……!」
 咳が収まらないまま叫んで、彼は見慣れぬ女を追いかけた。
 一番格下とはいえ、彼も聖闘士だ。しかも青銅でありながらエリュシオンまで到達し、聖戦に最終的な勝利をもたらした英雄に数えられる一人である。女一人追い詰めることなど容易いことのはずだった。たとえ本格的に咳き込んでしまっていても。
 腕を捕らえた。自分のそれより細い手首をぎりりと握り、引っ張りあげる。
 同時に、額に堅いものが触れる。あまりの冷たさに驚いたお陰か咳が止まった。
「……貴様……なんのつもりだ……!」
 いくら彼が聖闘士で幾多の戦いを経験してきたとはいえ、こんな至近距離で――というか突きつけられているわけだが――銃口を向けられたのは初めてだった。声が震えなかった自分自身に勇気をもらい、自分よりも低い位置にある顔を睨みつける。
「それはこちらの台詞です。これは何の真似ですか」
 底冷えのするような青い瞳が、銃弾よりも先に彼を射抜いた。
 濃いブラウンの髪の間から覗くきつい眼差しが朝日を受けて潤んで見えた。怒りの為か、それとも腕をひねり上げられた痛みの為か。どちらだろうかと思いはしたが、彼に向けられる眼光の鋭さは解放を躊躇わせるのに充分だった。
 視線に耐え切れず、目を逸らす。
 そして彼は、見てしまった。崖下に佇む巨体を。
「あれは……まさか」
 白と青が印象的なあの造形は――!
 彼は――フェニックスの聖闘士・一輝は捕らえた女を呆然と見つめた。


 ***


 十二宮を下から数えて七番目の天秤宮では珍しく朝からにぎやかだった。
「こんな朝早くから押しかけてしまって、すみません。しかもお昼までご馳走していただいてしまって……」
 アンドロメダの聖闘士・瞬が遠慮がちに椀を受け取る。ほのかに鶏の香りのする温かな湯気が育ち盛りの胃袋を刺激した。
「いやいや。これから丁度朝飯だったんでな。気にせず食うといい。星矢、氷河、饅頭もあるぞ。あと豆腐と豆乳も。育ち盛りなんだから、タンパク質を取らんとな」
 手ずからよそった粥を童虎も子供達と共に啜る。
 まだ椀に口をつけているくせに、言われた途端に星矢が饅頭に手を伸ばす。その手を叩いて、一番よく蒸しあがっている饅頭を手に入れたのは氷河だ。共に無言で彼らにとっては昼飯となる食事を黙々と咀嚼している。
 当然、紫龍も居合わせている。勝手知ったる師の宮。粥も饅頭も豆腐も誰よりも早く自分の前に確保済みだ。
「今日から長い休みか。学生というのはいいな。なかなか楽しそうだ」
 饅頭を手に取りながら、童虎は羨ましそうに床に散らばった学生鞄を眺める。
「楽しいけどさ。でもこれで結構大変なんだぜ」
 もぐもぐと口を動かしつつ、星矢が器用に答えた。
「休みの間にも補習とか部活とか色々あって忙しいってのに、休みに入ったら即聖域に顔を出せなんて、教皇もヒデェよな」
「だからってなにもこんな時間に来ることもなかったんじゃないの? 不法出入国した挙句に疲れちゃって、老師にご迷惑をかけてるだけだし……」
 瞬が困ったように星矢を見た。その手には豆乳入りのカップと饅頭がしっかりと握られている。
「発案者はオレじゃねぇよ。なぁ、氷河?」
「学校が終わったらすぐに一度は顔を見せに来るように、なんて言われたから、すぐに来ただけだ。何の問題がある?」
 あくまでクールに言い返し、氷河は手にした饅頭を割る。既に3個目だ。割ったところに冷気を浴びせ、適度に冷まして食べるので、誰よりも効率よく食が進むらしい。
「それに、俺は明日は用事がある。今日行って、こっちの予定を教えておけば教皇も考えてくださるだろう。なにしろ、学校へ行けと言うのはアテナの命なのだからな」
「それだったら予定など、あらかじめ言っておけばいくらシオンとて考慮してくれると思うのだがな。今は聖戦の予兆もない。相手が教皇だからとて、言うべきことは遠慮なく言っておくべきだ。お前達はアテナと縁深いのだし、そのくらいで咎められはせんよ」
「ですが老師、そのアテナにも言われていたのです。なるべく早めに、一度聖域へ来るようにと」
 粥の椀にザーサイを山盛りにしながら口を挟む紫龍に葱の小皿を渡して、童虎はほうと相槌を打つ。
 油条と鶏肉を載せた粥を恐るべき速度で平らげた星矢が二杯目をよそいつつ記憶を手繰る。
「ああ、なんか言ってたよな沙織さん。今なら面白いものが見れるから、ぜひいらっしゃい、って」
「面白いものって、なんだろうな。誰か聞いたか?」
 饅頭専門になっている氷河がまたひとつつまみ上げた。負けじと饅頭を掻っ攫った瞬が首を振る。
「聞いたけど、教えてくれないんだ。ホント、何なんだろうね」
「沙織さんにしては珍しく、楽しそうに言っていたな」
 粥を汁まで飲み干して、紫龍が言う。
「老師、ご馳走様でした」
 丁寧に礼をした紫龍に、童虎は微笑んだ。
「紫龍よ。終業式が終わったばかりと言うなら、アテナがおっしゃるのとはまた別に見せるべき面白いものがあるのではないか?」
 聖闘士たちの手が止まった。
「食い逃げは許さんぞ?」
 温厚な笑みの裏のその本当の深さというものを子供たちは思い知らされたのだった。


 ***


「面白いものといえば、アレしかないだろう」
 そう前置きした童虎に数ヶ月前にあったという出来事を初めて聞かされて、青銅聖闘士たちは一様に驚きを露わにした。
「本当に異世界なんてモンがあったんだ……びっくりだぜ」
「でもちょっと、住みにくそうな世界だね」
 星矢と瞬が簡単な感想を述べる。
「では、老師もその という女性と面識がおありになるのですか」
 紫龍が問えば、童虎は呵呵と笑った。
「面識どころか、いまやお前の妹弟子だぞ、 は」
「老師が何かお教えになったのですか?」
「まぁ、少しな。怪我で身体が鈍ったと言うので、リハビリの手伝いをした。それにしてもなかなか筋が良くてな。あれなら今から修行させても、もしかしたら立派な女聖闘士になれるやもしれん」
「でも、今から仮面を被るなんて嫌がりますよ、普通」
 苦笑した氷河に、童虎は片目をつぶって見せた。
「ああ。勿論、仮面をつけさせるなんて勿体無いことは薦めたりせんとも」
「なに、そんなに美人なの?」
 星矢が目を輝かせる。そんな星矢を瞬がつねった。
「それ、沙織さんの前では絶対に言っちゃ駄目だよ」
「は? なんでだよ」
「わからないのなら、黙って言うことを聞いておいたほうがお前のためだ」
 氷河にまで念を押されて、星矢は盛大に顔をしかめる。
「なんだよそれ。ぜんぜん意味わかんねーし」
「わからんのなら、わからんままでもいいんだぞ、星矢。お前はそのままでいてくれ」
 したり顔で紫龍が頷き、瞬が噴出す。
「でもそれじゃあ、沙織さんが可哀相すぎるよ」
「だが今時、この純粋さはもはや天然記念物に近い。失うには惜しい」
「うわ、氷河まで酷っ!」
 星矢を除いた全員が爆笑したところで、童虎がふと何かを感じ取った。
の事を聞きたいのなら、適任の男が来たようだ」
 言い終わるのと同時にドアがノックされた。開いとるよと童虎が応えれば、すぐに豪奢な金髪が現れた。
 星矢が首を傾げる。
「ええと……多分弟の方だよな?」
「海にいた方だね」
 瞬が言い添えれば、紫龍も自信ありげに頷く。
「黒くならない方だな」
「見分けるコツはエレガントかどうかを見極めることだとわが師・カミュが言っていた。確かにそのとおりかもしれんな」
「……全員、宇宙でデブリになりたいか……?」
 顔を見せただけでぼろくそに言われてしまったカノンは、とりあえず人の宮のドアを粉砕しないよう自制することに多大な精神力を浪費した。
「なんだカノン、何か用か?」
 こんな時間にカノンが顔を見せるのは珍しい。さっと室内を見渡したカノンは、怪訝な顔で童虎に尋ねた。
が来てはいませんか? 今日はまだ予定が入っていないので、てっきり老師にまた稽古でもつけていただいているのかと思っていたのですが」
「いや。そういう日は事前に伺いを立ててくれるが、今日は何も聞いていないな」
「そうですか……では、上か」
 ありがとうございましたと一礼しカノンは辞そうとした。叶わなかったのは、一番近くにいた星矢にTシャツの裾を引っ張られてしまったからだ。
「伸びる。離せ。皺になるだろうが」
「そんな安モン着てんの?」
 仮でも黄金聖闘士様の端くれのクセにと星矢が笑う。
「お前には言われたくないな。大体、普段着になんぞ金をかけてられるか」
「いって~!」
 なにげに失礼な星矢の脳天に拳骨をくれてやる。すると目の前に少し冷めてしなびた饅頭が差し出された。
「良かったら、どうぞ? まだ少しはあったかいですよ」
 反射的に受け取ってしまったのは、別に少女のような愛らしい笑みを浮かべた瞬にほだされたからでは断じてない。
「まあ、座れ」
 ぞんざいな口調で氷河が丁寧に椅子を引き、なみなみと豆乳を注がれたカップを紫龍に差し出され、気付けばカノンはなし崩し的に童虎の食卓につかされてしまっていた。
「一体どういう魂胆だ?」
 青銅の小僧達にもてなされるような覚えは一切ない。だが毒を盛られる覚えもない。冥界ではそれなりにフォローしてやったのだ。恩に着られなくとも、かつての彼らに対する所業くらいはチャラにしてくれていてもいいはずだ。
 カノンは勧められた饅頭を頬張り、豆乳を遠慮なくがぶ飲みする。実は朝食はまだだった。いくらでもいけそうだ。そんなカノンとしげしげと見つめる青銅達。
「中華なカノンって、なんか意外……」
「カノンと饅頭という組み合わせに違和感がないことにむしろ違和感を感じるな……」
 星矢のみならず、瞬も氷河もけっこう失礼だった。
「サガだったら似合わないような気がするのは俺だけか?」
 紫龍よ、お前もか。カノンはこっそり溜息をつく。子供の暴言にいちいち腹を立てるのは大人気ないと自分に言い聞かせた。
「ていうかカノンってさ、好き嫌いとかないんじゃね? なんか何でも食いそう」
「お前もそんな感じがするがな、ペガサス」
 しれっと言い返してやれば、星矢はぶんぶんと頭を振った。
「そんなことないぜ。ピーマンとか納豆とかキムチとか食えねーし、あとオリーブの実! あれも食えねぇんだよな」
 堂々と言い放った星矢を、氷河がぽかんと見つめた。
「オリーブが食えんだと? ……星矢、お前、聖域で修行したくせにそれはありえんだろう」
「苦いのとか辛いのが苦手なんだよね? まだまだお子様だよね~」
「この間など、たいして辛くしていない麻婆豆腐すら辛いと文句を言っていたな、そういえば」
 瞬と紫龍にも責められて、星矢はばつが悪そうに顔を背ける。カノンに憎まれ口を叩くのは、どう考えても八つ当たりだ。
「俺のことはいいの! カノンはどうよって聞いたんだって」
「ふん。お子様な貴様と一緒にするな。納豆もキムチも好きではないが食える。サシミだって食えるぞ。ちなみにワサビも特訓した!」
 ふふんと笑ってやれば、星矢は悔しそうに顔をゆがめた。
「しかし嫌いな物だってちゃんとある。必要とあれば食うがな」
 へー、と星矢は身を乗り出した。
「カノンが嫌いなものって、なに?」
「虫系はごめんだな。あと、半分孵化した玉子とかな。発酵させすぎの魚も勘弁だ」
「ゲテモノだけじゃん……て、食ったことはあるわけだ」
 げぇ、と星矢が顔をしかめ、へぇ、と氷河がなぜか感心の声を上げた。
「なかなかワールドワイドな食文化を経験してるんだな。海底神殿と言うのは、そんなに国際色豊かな場所だったのか」
「……なぜそこで海底神殿が出てくるんだ?」
 不思議そうなカノンを氷河はさらに不思議そうな目で見た。
「だってあんた、13年間海底にいたんだろう?」
「ンなわけあるか!」
 2杯目の豆乳を飲み干して、カノンはカップを乱暴にテーブルに置く。そそくさと3杯目を注ぐ瞬も不審そうに聞いた。
「じゃあ、13年も何してたの? 世界征服の準備をしてたんじゃないの?」
 カノンはぐるりと一同を見渡した。全員が同じ目で――口は挟んでこなかったが童虎までもが――自分を見ているのを見て、がっくりと肩を落とす。
「では逆に聞くが、13年もかけて、何をどう準備しろと? 旗印のポセイドンもいないのに」
 誰も答えない。溜息をついて、カノンは白状した。
「同じ時期のお前らに比べたら、はるかにまともな社会人生活を送っていたと思うぞ。自分で言うのもなんだが」
「「「「社会人!?」」」」
 明らかにカノンの口からこんな言葉が出るとは思っていなかったのが見え見えの態度で子供達がハモった。調子の合い方はさすが兄弟である。
「……『まとも』というからにはまず、どういう社会かによると思うのだが……」
 童虎にまで言われて、カノンはさすがに凹んだ。これまで人にはあまり話した事のない13年間だが、こうまで画一的に誤解されていたのかと思うとさすがに情けなくなってきた。しみじみと過去を振り返ってみることにする。
「一応、徴兵にも応じたし――」
「そういえばギリシャには徴兵制度があったな……」
童虎がつぶやき、
「徴兵ってことは、国籍なんかあったの!?」
瞬が冷静に突っ込み、
「それが終わったら会社にも入ったし――」
「会社員・カノンだと!? 学歴はどう詐称したんだ!?」
紫龍が驚愕し、
「絶 対 あ り え ね え」
星矢が頭を抱え、
「貯めた金でいろんなとこにも行った――」
「カノンが貯金!? わが師カミュにだってそんなものはないと思うぞ!?」
氷河がとんでもない事実をついうっかり暴露する。
 わなわなと震える拳を、高まりそうになる小宇宙を必死で抑えるカノンの肩を、童虎がぽんと叩いた。
「なんというか、カノンよ」
「……なんです、老師?」
「貯金までしておいて世界征服などしてしまったらそれまでに頑張って働いて貯めた分が無駄になるとか、そういうことを考えなかったのが、わしは残念でならん……」
「あ、老師がカノンを倒した」
 星矢が指摘したとおり、カノンはついにテーブルに突っ伏し、茫然自失となっていた。
「まぁ、そんなことはどうでもいい」
 しかしそんなカノンに同情など一切せず、氷河がクールに一言で片付け、瞬が本題を切り出す。
「うん。そんなことが聞きたかったんじゃなくてさ、カノン」
「……なんだ? 今度はなんだ?」
 身体を起こしながらカノンは律儀に答えた。それでも声にはいつもの張りがない。というよりも、明らかに嫌そうだ。
 しかし瞬は全く意に介さず、単刀直入に尋ねた。
「さっき老師から聞いたんだけどね、 さんて、どんな人なの?」
「老師がおっしゃるには、格闘技の素養があるらしいな。もはや俺の妹弟子だとか」
「結構強いのか? でも女なんだろう? やはり女ではクールとは程遠いのだろうか」
「それより、美人? なぁ、美人?」
 ようやくカノンは自分が招き入れられた理由を納得した。溜息をついて立ち上がる。
「上に行けば、会えるんじゃないか? それとペガサス、お前、姉から何も聞いていないのか?」
 散々いじられたのだ。素直に教えてやる義理はない。饅頭や豆乳を考え合わせても、だ。
「え? 姉さん? 星華姉さんと と何の関係があるっていうんだ?」
 きょとんとする星矢に、カノンはふんと勝ち誇った笑みを向けた。
「何も聞かされていないのか。たった一人の弟とはいえ、あまり信用されていないとみえるな、ペガサスよ」
「てめーが言うな」
 悔しそうな星矢に、カノンの嗜虐心が少しばかり満たされる。子供相手になんともみみっちい心根である――と、自覚した。だから一言付け加えてやった。
「ま、 に会ったとしても、あいつは人見知りする傾向があるから、気をつけるんだな」
 忠告してやったのはこいつらの為を思ってでは、勿論ない。 の為を考えただけだ。――そういえば、なんとなく と雰囲気の似た奴がこの中にいたはずだ。
 ふとそんなことを思い、カノンは子供達を見回した。だが。
「……一人、足りなくないか?」
 言われた青銅達は互いに顔を見合わせた。わずかな間の後、氷河がぽんと掌を叩く。
「そういえば一輝がいないな」
「まあ、あいつはいつもいないからな」
 別に何の不思議もないような顔で紫龍が言えば、瞬までもが同意する。
「群れるの、嫌いっていつも言ってるからね」
「それにしても、よく気づいたな、カノン」
 星矢に褒められたが、ちっとも嬉しくない。
「さっき双児宮を通ったときには五人揃っていただろうが。一人抜けても気づかないとは、薄情な奴らだな。それでも兄弟か」
「だから、てめーにだけは言われたくねーよ、それ」
 引きつり気味の顔で星矢が言った途端、カノンの表情が強張った。
「なんだよ、気に障ったのか? 短気な奴だな」
 強気に言いながらも、なんとなく星矢の腰が引けていた。
 さっきあれだけからかってもなんともなかったのに。もしかして地雷でも踏んだか俺!?
 青ざめる星矢。敏感にカノンの変調を感じ取った面々。代表して尋ねたのは童虎だった。
「どうした、カノン?」
 わずかに目を伏せ、精神を集中させながらカノンは聞き返した。
「老師は、何も感じませんか?」
「なにを、だ?」
 怪訝に思いながら、童虎も感覚を研ぎ澄ます。まだ何も感知できないうちに、カノンの表情が決定的に険しくなった。
「――呼んでいるのか、 !」
 つぶやいた次の瞬間、カノンの姿は掻き消えていた。とはいえ、ここは十二宮内。瞬間移動など出来ない。ただ高速で走り去ったに過ぎない。
 聖闘士である一同には、カノンの動きはすべて見えている。誰からともなく顔を見合わせる。鞄も饅頭も放っぽり出して、子供たちはカノンの後を追った。
 一人残された童虎は仕方ないのうと苦笑する。 についてはカノンに任せておけばいい。彼には騒々しい朝食の後片付けが残っているのだから。

Boys meet G 1 END


長くなったのでぶった切ります。
文中の中華風朝食の描写についてはイメージです
実際に中国ではどんなかなんて知りません(←無責任)

2010/02/03


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