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Side-S:08章 Black History1


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Black History1


 昼日中にもかかわらず、長い回廊は薄暗かった。等間隔で設置されている蜀台が足元の影をいっそう濃く見せている。
 ――地球では、影すらも下へ下へと引き寄せられてしまうのか。
 そんな考えがふと頭をよぎり、そんなわけがあるはずもないと は軽く頭を振った。
 教皇宮からアテナ神殿へ向かう途中のこの通路にはまるで人気というものがない。床にはずっと絨毯が続けて敷かれていて、足音は吸収されてしまっている。聞こえるのは自分の微かな息遣いと衣擦れの音だけだ。
 立ち止まってみた。
 すると全ての音が消えて、いっそ耳が痛いほどだ。それなのにどこからか、きん、と聞こえてくる何かがある。たまらず耳を塞いでみれば、それが自分の耳鳴りであることがわかった。
 全くの静寂というものには慣れていると思っていた は、それが間違いだったことに気づいた。
 真空の宇宙では、音を伝達する空気は存在しない。そこは真の静寂の空間だ。しかし人間は宇宙服(ノーマルスーツ)を着用しなければ数秒だって生きてはいられない。そのノーマルスーツに包まれている以上、微かではあるが酸素循環用のモーター音や通信機の雑音(ホワイトノイズ)が必ず聞こえているものなのだ。
 音を伝播させる空気が存在している地球(ここ)で、初めて体験する本当の静寂。
 皮肉なものだ。
  はまた歩き始めた。
 影は足元にしつこく纏わりつき、静寂が耳を打つ。毛足の長い絨毯は一歩を踏み下ろす度に柔らかく沈み、サンダル履きの の足を優しく包む。
 気に入らなかった。そのなにもかもが。下へ下へと引かれるようで、それがたまらなく不愉快だ。
  はいつのまにか詰めてしまっていた息を吐いた。再び足も止まってしまっている。どうしてかなんてわかっている。――行きたくないのだ。
 女神が、 を呼んでいると言う。そうなると に拒否権はない。行くしかなかった。
 もう一度溜息を吐いて動き出そうとしたところで、声がかかった。いきなりだった。
「アテナ神殿に用事なのかい?」
  は咄嗟に身を硬くする。声は後から聞こえた。不覚にも、何の気配も感じなかったのだ。驚愕と共に振り返る。
 回廊の入り口近くに立っていた彼は、大して急ぐでもなく立ち止まったままの に向かって歩み寄って来た。彼の背後から差す光が逆光になっているのと、蜀台の灯火が作る影とで顔ははっきり見えない。ただ、今まで近くで見た黄金聖闘士の面々と比べれば彼はずいぶん小さかった。
「……射手座(サジタリウス)のアイオロスさん……?」
 訝しげに呼んでみた。丁度 の間近で歩みを止めた彼は、ぼんやりとした灯火の元、あどけなさの残る顔をぱっと綻ばせた。
「昨日はちゃんと自己紹介をする暇もなかったのに、ちゃんと私のことがわかるんだね? それはカノンのお陰なのかな?」
 快活に話しながらも、その口調はずいぶん大人びていて、 は戸惑う。
 確か彼は現在15で、 より2~3歳年下のはずだ。――尤も、本来ならばサガやカノンと同年代らしいのだが。
 質問に対してただ頷いて見せた に、アイオロスは気を悪くする様子はない。屈託なく言葉を続けた。
「誰か案内役はいないのかい? この先はアテナ神殿があるだけだよ? 迷ってここまで来た……わけではない……んだね」
 最後が戸惑うように途切れたのは、 が途中で眉をしかめてしまったからだろう。アイオロスには悪いと思ったが、 はあえて取り繕おうとはしなかった。事務的に告げる。
「女神様が私をお呼びとのことですので、今から伺うところです」
 そうか、とアイオロスは頷いた。少し困ったように笑う。
「別に警戒したわけでもなんでもないんだ。アテナが君を呼ばれたとは知らなかったから、迷ってでもいるのかと思ったんだ。気を悪くしたのなら謝るよ。そんなに怖い顔をしないでくれないか」
 やはり見た目の年齢にはあまりにも似つかわしくない洞察力だ。 はまじまじと目の前のアイオロスを見つめてしまった。
 警戒していたと言うのなら、それはむしろ彼よりも が、だ。気づいていながら、あえてアイオロスはそれを指摘しようとしなかったのだ。
 たいした人物だと思った。
「……失礼しました」
  は頭を下げる。すると苦笑する気配がした。
「あなたが謝る必要はないよ。どうやら驚かせてしまったようだしね。お詫びと言ってはなんだけど、アテナのところまでは私が案内しよう。ついておいで」
 言って、アイオロスは の横を通り過ぎる。思いもしなかった展開だ。 は完全に彼に呑まれてしまっていた。
「え……あの……っ」
「ああ、気にすることはないよ。私もアテナに用があるんだ。ついでと言うわけではないけれども、どうせ行くなら一緒に行こう?」
 面食らう に、アイオロスはゆったりと笑いかける。教皇であるシオンとはまた違う威圧感があった。とても少年の持つそれとは思えない。
 それで思い出した。
 ――英雄と。呼ばれていると言う。その身を賭して幼い女神を救い、一度は命を落としたのだと。
 しかしきっと、その行いだけが彼を英雄たらしめているわけではないに違いない。そのように尊ばれる者には、それなりの理由が必ずある。――なくてはならない。
  は頷くしかなかった。その承諾を見届けて、アイオロスは歩き出す。 も後に続いた。

 ***

 神殿、というからには教会か何かのようなものを想像していた。しかしそれは外観だけで、内部は至って普通の建物だった。良くも悪くも予想が裏切れらて、 は安堵する。
 女神の居室に招き入れられたのだった。そこは豪奢ではあるが本当に普通の部屋で、女神や が纏っているキトンの方がむしろ浮いて見える。
 それでも教会や、昨日通された謁見の間のような宗教的な雰囲気を苦手とする にはこの方がありがたかった。
「お呼びたてしてしまって申し訳ありませんでした、 さん」
 女神がにこやかに自ら を迎える。その様子は本当にただの少女でしかない。昨日少なからず感じた、神たる威厳が嘘のようだった。何の用があるのかと気を張っていた は、完全に虚を突かれて戸惑うしかない。
「いえ……」
「怪我の具合はいかがですか?」
「お陰さまで、だいぶ良くなりました。ご心配いただきましてありがとうございます」
 それは良かったわ、と女神は笑う。奥の部屋へ を誘い入れながら、共にやってきたアイオロスにも声をかけた。
「今日は突然あなたに話を振ってしまってごめんなさいね、アイオロス」
「いいえ。前々からそのように言っていただいておりましたのに、ふらふらしている私が悪いのです。そろそろ戻って来ようとは思っておりましたが、こんなことがなかったらまたすれ違ってしまうところでした。こう言っては何ですが、丁度良かった」
 でも、と言葉を一度区切って、アイオロスは に目を向ける。
「後でもう一度出直してきた方がよろしいのでしょうか? 彼女に何かお話があるのでは?」
  もアイオロスに視線を向けた。できれば女神と二人きりにして欲しくはないのだが。
 そんなささやかな願いを聞き入れたかのように、女神はアイオロスにも奥の部屋を指し示す。
「良いのですよ。そんなに重大な”話”をするつもりでお呼びしたのではないのです。……なんて言ったら、 さんは気を悪くなさってしまうかしら」
 水を向けられて、 は小さく頭を振った。
「……いえ」
「わたくし、今日日本に戻ってしまうの。次に来れるのは少なくとも一週間以上後になってしまうから、その前に さんとお話をしてみたかっただけなのです。昨日みたいな仰々しい場ではなく、ね」
 自分の神聖性を損なわないよう設けられた場をそのように切り捨てて、女神は肩をすくめて見せた。アイオロスも苦笑を隠さない。アイオロスと一緒になってくすくす笑いながら、女神は奥の扉に手を掛ける。
「それに先程からアイオリアとカノンもいるのよ。一緒にお茶でもいかがかしら?」
 こうして は女神主催のお茶会に正式に招待されてしまった。

 ***

 招かれるまま室内に足を踏み入れた。
 女神の言うとおり先客が二人いて、それぞれが対照的な態度を取っている。 の後ろでアイオロスがまた苦笑していた。 の背を軽く押しながら進み入る。
「アイオリア、来ていたのか」
「今回の日本での護衛役、もう一人とは兄さんだったんだ!」
 どことなく居心地が悪そうにしていたアイオリアは、兄の姿を認めて笑顔を浮かべた。
「ああ。いつも放浪ばかりしているからね。たまには共に任に就くのも良かろうという、アテナのご配慮……ですね?」
 アイオロスの言葉に、女神はただにっこり笑って見せる。答える代わりに、問いかけた。
「今回はどちらまで行っていたのですか?」
「アフリカから中東にかけてふらふらして参りました」
 そう、と頷いて、女神は先程とは少し違う種類の笑みを作る。
「お土産のお話など、聞かせてはいただけないのですか?」
 訊かれて、アイオロスは に一瞬目を向けた。しかしすぐに女神に目を戻す。苦笑して見せた。
「どうにもきな臭い話ばかりで、お土産には不向きかもしれません。それでもよろしければ、後ほどゆっくりお話致しましょう。日本への道中のお暇つぶしにでも」
「そうですね。ぜひお願いします」
 軽く目を眇めて、女神は頷いた。
「は」
 とても14歳の少女とは思えない思慮に満ちたこの表情はどうだ。アイオロスは頭を下げる。さすがは知恵をも司る女神だと、改めて感服した。――勿論、自分のことは完全に棚に上げながら。
 それまで泰然と座っていたカノンが席を立った。アイオロスは の背に添えていた手を離す。
 今度はカノンが の背に触れ、空いている席へと導く。
、貴鬼はどうした?」
「お師匠に呼ばれていると言って、急いで戻って行ったけど……」
  の答えに、アイオリアの声が被った。
――だったのか!」
 大声ではないものの心底驚いた声に、この場の全員がアイオリアを見る。さすがに気まずくなったのか、アイオリアは弁明を試みた。
「いや……昨日とずいぶん雰囲気が違うし……そんな格好をしているから……」
「だからと言って、女官には見えまい」
 カノンが呆れたように呟き、アイオロスが改めて を見つめた。
「ああ、確かにずいぶん雰囲気が違うね。昨日は緊張し切った感じだったけど、今日は幾分リラックスしてるのかな? それに、キトンが良く似合ってる。我等が女神にも、決して負けてはいないよ」
 当の女神を目前にしての手放しの賛辞。 は普段なら世辞など受け流してしまう方だが、さすがに今は相手が相手である。なんてことを言い出すんだと、半ばぎょっとしてアイオロスを見遣る。続いて女神に恐る恐る目を向けた。
 しかし女神は を見て、至極満足そうな笑みを浮かべている。あまつさえ、こうのたまったものである。
「きっとお似合いだろうと思って用意させたのですが――想像以上で嬉しいわ。本当に綺麗。ね? カノンもアイオリアも、そう思いませんか?」
 突然話を振られて困惑するかと思われた先客二名の反応は、意外とそつがなかった。カノンはただ黙って の背中をぽんぽんと叩く。その表情は、微かに笑んでいた。そして先程の反応からすると返答に困って口籠るかと思われたアイオリアは、さらりとこんなことを言ってのけた。
「確かに、いいですね。特にその留め飾りの宝石(いし)は瞳の色と合って、よく映えている」
 それは白金の台座に青い石があしらわれていて、肩のところで布を止めている装身具のことだ。一目で高価だとわかる品なので、用事が済んだら真っ先に返そうと思っていたのだが。
 女神は両手を叩くように合わせてアイオリアに笑いかけた。
「ああ、やっぱりアイオリアもそう思いますか? わたくしもそう思って、それを用意させたのです」
 予想が的中した。 は軽く唇を噛み、礼の言葉を捜して頭の中を大急ぎで検索する。それでも出てくるのはあまり気の利いたものとはいえなかった。
「……そのようにお気遣いいただきまして、ありがとうございます。着替えが戻りましたらすぐにお返し致しますので、それまではしばらくお借りします」
 あら、と女神は首を振った。
「いいのですよ。どうかそれは さんが持っていてください」
「そういうわけには……」
 いきません、と続けようとした の言葉を女神はにっこり笑って遮った。
「差し上げるつもりで禊役に渡したのです。どうぞお好きになさって?」
「ですが、こんなに良いものを女神様から賜る理由がありません」
 頑なに辞退を口にする に、女神は少々意地悪く言い放つ。
「よいのです。返していただいても、もうわたくしよりも似合う方がいるものを身につけることはないでしょうから」
 さすがにここまで言われてしまえば、 はこれ以上食い下がれない。女神は の退路を断つ方法を既にわかっているようだった。
「……ではすみませんが、ありがたく頂戴いたします……」
 アイオロスとカノンが半ば面白そうに、アイオリアが少しばかりおろおろと見守る中、 は渋々女神に頭を下げたのだった。

Black History1 END


後書きです。 重~い第八章突入編でした。サブタイトルからして重いです。
黒歴史。∀ガンダムでのキーワードでしたが、ここでの意味合いは同じような、違うような。
閉ざした過去。暴かれたくない過去。そんな意味です。公的にも個人的にも。
ここで明らかになる過去は、まだまだほんの一部ですけどね。
いろんな過去を内包しているのです。人も、世界も。
だからややこしくもなるし、その先に続くこともある。そんなお話です。

ここで補足を。
基本設定にも書いてある年齢の件に加えて、もうひとつ勝手設定を捏造しております。
アイオロスさんについてです。
このお話の中では、彼は現在15歳。
あのときサガによって(実際に手を下したのはシュラですが)
中断されてしまった生の、その続きを彼は現在生きています。
彼がこの世にいなかった13年間、射手座の黄金聖衣が青銅君達を全面バックアップしていたわけですが
あれって、果たしてアイオロスの意思なのか聖衣そのものの意思なのか、長い間の疑問でした。
最近ようやく、あれはどちらかというと聖衣の意思だったのではないのかと思うようになりました。
そう考えるようになった過程は長くなるのではしょりますが。
とにかくそうなると彼の前には13年間という、15の少年にとってはその人生とほぼ同じくらいの時間という
長い空白が突きつけられることになるわけです。戸惑わないわけがありません。
黄金の中では前聖戦組を別にするならサガと共に最年長だった彼がいまや最年少です。
年の割に、彼は大人びた子供であったろうと思います。
それでも実際に20歳を超えた人々の中にあってはやはり今の彼は子供でしかありません。
普通ならそのどうしようもない落差にパニックを起こすか絶望するかでしょう。
でも彼はまた、そこまで弱い人間でもないはずなのです。子供ながらに英雄と呼ばれた人間ですから。
ならば彼はどこまでも前向きに、その空白を埋めようとするのでしょう。
そう考えるうちに、私の頭の中の彼はいつしか聖域を離れて世界各地を放浪するようになってしまいました。
自分がこの世に存在し得なかった間に、世界がどのように変わったのかを確かめ、受け入れる為です。
そういった彼の心情を理解した女神や教皇は、彼の好きなようにさせている。
というわけでアイオロスについては、そういう設定になっています。
……長かった(笑) 補足というより語りになってますね(^^;)
あ、更にもうひとつ付け加えます。これに手をつけるのは非常に勇気が要るのですが。
彼の身体データについて。公式の設定、あれ、どう見ても14、5歳の子と言うのは無理ですよ(汗)
いくら外国人で発育が良くったって、巨人症じゃないんだからさ……
というわけで、公式のデータは彼の成長予想ということで。もう数年したらああなるんです。
ここでの彼はもう少し普通です(笑) 大きいほうだとは思いますが、あそこまででかくはないです。
そういうことにさせてください。それが私なりの、その年頃のオトコノコに対する夢なんです!(←力説)
あえて身長何cmとははっきり言わないでおきます。すぐに伸びるんですよ、きっと。
本当に長くなりましたが、これにておわり。
ここまで読んでくださってどうもありがとうございましたm(__)m

2010/01/30


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