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Side-S:11章 Party Night 02


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Party Night 02


「何だってこんなに時間がかかるんだ。お陰でロクに打ち合わせができんではないか」
 残りの聖闘士達がぞろぞろと入って来たところで、カノンが真っ先に苦言を呈した。
 いやぁ、と悪びれながらも豪快にアルデバランが笑う。
「どうもこういった格好に慣れていなくてな。その上今回は場所が場所だろう? さすがに何か落ち度があってはマズかろうと、入念にチェックなどしていたら遅くなってしまった。すまないな」
「そもそも私達は堂々と公の場に出るような仕事をするように訓練されているわけではないですからね。少しくらいは大目に見てください。それに打ち合わせは既に昨日済ませていると思いましたが?」
 穏やかな笑顔であくまでも静かな口調でありながらもさらりとそう言い切ったムウに、さすがにあの教皇の弟子だと納得したのは恐らくカノンだけではないはずだ。その証拠にムウの後ろではシュラがポーカーフェイスを保ちながらも目を泳がせ、アイオリアがなんとも言えない顔をしてムウの後ろ頭を眺めている。
 とりあえずひとつ溜息をつくにとどめて、カノンはそれ以上の叱責を止めておく。アルデバランの言葉は理解できるし、ムウの言うことも尤もといえば尤もだ。それに、済んでしまったことをこれ以上追求しても仕方ない。
「そうだな。打ち合わせというよりは最終確認だ。こういうことはそれこそ入念に準備しておいた方がいい。――そもそも聖闘士、それも黄金聖闘士ともなるとチームプレイをするように訓練されてはいないだろう? スタンドプレイが基本の奴らが集まって勝手に行動するだけなら、ただの烏合の衆でしかない。それでは今回のアテナのご意志には添えまい」
 叱責するつもりはなくても、どこか恨みがましい口調になってしまったのが自分でもわかった。理由は簡単だ。それが本音だからだ。
 これにはムウもさすがに異論はないのか、軽く肩をすくめて同意を示した。こういうところは師よりも素直だ。
「最終確認ですね――アテナの護衛としてつくのが、アルデバラン、アフロディーテ、そして私。沙綾嬢こと さんの護衛にあたるのがアイオリア、シュラ、カノンの三名……でしたね?」
 ムウの言葉をアイオリアが引き取る。
「万一の事態には、アテナを含めた一般客の保護を優先するのがムウ達アテナの護衛組。敵を特定、追跡するのが俺達、 の護衛組だったな」
 更にシュラが補足を加えた。
「極力傷つけず、生きたまま捕らえるように努力せよ――とのことだったな。それもできる限り俺達の働きだと気づかれないように」
 全員が視線を合わせて頷きあったところで、ふとアフロディーテが首を傾げた。
「今回、 は沙綾嬢の代理というだけだから、私達が動くことになった時には勿論私達の保護下に入るということでいいんだね?」
 突然話を振られて、黙って聞いていた は驚いたのか返答が一拍遅れた。
「……ええ。そうですね。そうなります。その節はよろしくお願いします」
 立ち上がり、優雅に一礼して見せる。その様子は確かに知らない者が見れば、城戸沙織の縁者であると誰もが納得するだろうと思われた。並んだ黄金聖闘士達も、思わず居住まいを正す。
「勿論だよ、 。安心して守られてくれ」
 アフロディーテがにっこりと微笑み、アルデバランが太い笑みを浮かべた。
「随分と守り甲斐のありそうなお嬢さんだな」
「これなら沙綾嬢の代理として、誰にも疑われそうにはありませんね」
 満足そうな笑みを浮かべたムウに、シュラとアイオリアが頷いて同意する。
「随分堂に入っている。……というか、随分としおらしく振舞えるのだな。いつぞやのお転婆ぶりが嘘のようだ」
「…………」
 明らかにからかいと笑いを含んだシュラの言葉に は表情を変えなかった。それでもわずかに目を泳がせてしまっている。
 そこにアイオリアがフォローの言葉を入れた。どうやら意図したものではないようだったが。
「そうか?  は結構こんな感じだろう? アテナが を指名した理由をおっしゃったとき、俺はなるほどなと思ったぞ。それに は怖がりだ。お転婆って……なんのことだ?」
 この発言に、 は更に気まずげに目を逸らせてしまった。カノンはそんな を怪訝に眺める。
「……怖がり?  が?」
 カノンの疑問をシュラが代弁してくれて、それきり場に沈黙が下りた。
――」
 一体何をやらかしたんだと問おうとしたカノンの言葉は控えめなノックの音に中断される。
「どうぞ」
 ムウが応えた。ドアも開けてやる。そこに立っていたのは星華だった。聖闘士達に丁寧に一礼してから、 に声を掛ける。
さん、沙織お嬢様がお呼びです。お支度がお済みでしたら、ちょっといらしていただけませんか?」
「了解しました」
 即座に了承して出口に向かった の足取りは軽い――と、カノンは思った。星華が何を言ったのかはわからなかったが、それで大体の見当がつく。そして、それは大当たりだった。
「女神様がお呼びだそうですので、ちょっと行ってきます。それではまた後ほど」
 妙に晴れやかな顔で言い置いて、 はドアの向こうへ消える。
 閉ざされたドアを眺めて、カノンを含めた何人かは同じ言葉を心の中で呟いていたに違いなかった。
 ――逃げたな、と。

 ***

「城戸様でいらっしゃいますね。お待ち申し上げておりました」
 沙織所有のクルーザーが桟橋に到着するやいなや、畏まった態度の男性が二人、目ざとく駆けつけてきた。姿を現した沙織を認め、声を掛ける。
 見渡せば他の桟橋にも招待客個人所有と思われる船が係留されていて、それぞれ専属の案内役がついているようである。皆同じ制服を着用していて、まるでリゾート地のホテルか何かを連想させた。しかし実際は主催者個人の別荘のひとつでしかない。その人数を思えば、なるほど大した経済力だ。さすがは世界の名士を一堂に集めるだけの影響力を持った人物である。
「お出迎え、ご苦労様です。遅くなってしまい大変申し訳ございません」
 エーゲ海を渡ってきた緩やかな風に髪をなびかせ、抜けるような青空の下、優雅に微笑む沙織はまさしく女神のようだった。つややかな髪が陽光を弾き、きらきらとあたりに光を撒き散らす。
 目を眇めて、 は先を行く沙織の後姿を見遣る。眩しかった。広がる髪がまるで羽根のようだ。しかし彼女は正真正銘、天の神そのものなのだ。天使などを思うのは、もしかしたらとんでもない不敬にあたるだろうか?
「――沙綾さん? どうかしましたか?」
 タラップを数段降りたところで、沙織が未だ船上の を振り返る。輝く髪が翻って消えゆく光の軌跡を、無意識のうちに目で追ってしまった。
「…… ?」
 腰を屈めて、カノンが小声で を呼ぶ。あまりにも耳元近くで聞こえた声に少しばかり驚いた。見返せば怪訝な面持ちのカノンと目が合って、自分が呆けてしまっていたことに気づいた。
 沙織に、そしてカノンに微笑いかける。努めて意図して、穏やかに。照れ隠しではなく、ただ取り繕うために。
「ごめんなさい。なんでもないの――とても綺麗なところなので、つい見惚れてしまって」
 嘘ではない。実際、それは美しい光景だったのだから。
  の言葉に沙織は改めて足を止め、周囲を見渡す。
 青い空、白い船。碧い海、白い鳥たち。濃い緑が乾いた風にゆっくりと揺れて、さんさんと注ぐ太陽の光を白く弾き返す。その根元には深い影がわだかまり、それでもどこか白茶けた地面がいかにも涼しげだった。
 ああ、と沙織は嘆息する。
 遥か遠い昔から見慣れてきたはずの風景だ。何度も何度も時間を越えるその度に、移り変わる様も見てきたはずだった。
 それなのに、一向に見飽きることのないこの空と海と大地――なんていとおしい。
 時は流れ、人も変わる。だからこそ時間は貴重で、命とはかけがえのないものなのだと。そう考えてきた。だからその流れが歪まぬように、すべての生命がすこやかにまっとうされるように願い、護ってきたのだ。
 だが、それだけではなかったのだと、今気づいた。
 更に大きなものをも、彼女(アテナ)と彼女の聖闘士達は護ることができていたのだ。移ろいゆく膨大な時間の中で、それでも変わることのない、これらいとおしい世界のすべてを。
 これが結果だ。この美しさこそが。
 それを外の世界の人間―― に認めてもらえたことが嬉しい。客観的に評価を受けた、そのことにこれ以上ない満足感を覚える。
 そして何より、他でもない に見てもらえたということが嬉しかった。この地球(ほし)を――好きではないと言う に、見てもらえたことが。
 きっとこの世界と の地球はほとんど違うところのない、よく似た場所だ。ならば がここを好きになってくれるのなら、それはどんなに素晴らしいことだろう。
「そうね……」
 沙織は振り返り、 を見上げた。
「本当に、本当に綺麗ですね……!」
 この場所も、こんな場所を内包するこの大地も。その上に、どこまでも広がる蒼穹も。
 そして。
 その青い空の下で静かに微笑む、 も。
 これらのかけがえのない美しいものたちを、沙織は――女神(アテナ)は、護り続けていく。
 それだけの価値は、十二分すぎるほどにあるのだから。

 ***

 会場では、すでに沢山のゲスト達が思い思いに歓談を楽しんでいた。その誰もがボディガードを従えている。ゲスト達が纏う衣装やアクセサリーの輝きよりも、ボディガード達の眼光の方がよほど強い。鋭く周囲に注がれていた。
 その視線が一斉に同じ方向に向けられる。決してあからさまに注視したわけではない。それでもかなりの数の人間が同時に同じ方向に注意を向ければ、おのずから他の視線もつられてしまう。
 人々の注目を一身に集めたのは、言うまでもなく城戸沙織である。若干十四歳にして、世界有数の巨大財閥の総帥。注目されるのには慣れているのか、全く動じる様子はない。実に堂々たる貫禄振りだ。
 そして今日、人々の目を引いたのは沙織だけが原因ではなかった。並み居るボディガード達が最初に注意を払ったのは、城戸沙織が背後に従えている彼女の護衛達だ。
 各界の一流と言われるゲスト達が雇っているボディガードはやはり一流だ。その目は節穴ではない。一様に若く、また一見して頼りなげにすら見える者もいる城戸沙織の護衛役達は、しかしプロの目には決してそのようには見えない。静かに控えているだけだというのに、異様なまでのプレッシャーを同業者に与えるのだ。
 そして城戸沙織の後ろを数歩遅れて現れた女性にもまた、好奇の目が向けられていた。
 今までどのような場所にも姿を現したことのない、城戸沙織の縁者だという彼女は、今回が社交界における初披露だという。グラード財団と何らかの形で近づきたい人間にとっては、その為のいい機会になるだろう。
 だが彼女――城戸沙綾の背後に立つ護衛達からもまた、城戸沙織の護衛と同じような匂いがしていた。つまりは、そう簡単に近寄ることを許されないかのような奇妙な圧迫感を発散している。
 結果、城戸の一行に近づきたい主と、それをさりげなく妨害するボディガードの間での静かな駆け引きがあちこちで行われることとなったのだった。

 ***

 結局誰も沙織達に声を掛けられずにいる中、落ち着いた声が上げられた。
「ミス・キド。本日はようこそおいでくださいました」
 両手を歓迎の形に広げた男が歩み寄ってくる。年のころは40代後半といったところだろうか。悠然とした足取りで、まっすぐに沙織達の方へと向かって来た。沙織が居住まいを正す。背筋をピンと伸ばして、丁寧に礼をした。
「ヘル・バルツァー。こちらこそお招きいただきまして、どうもありがとうございます。少し遅れてしまいました。大変申し訳ございません」
 謝罪の言葉に、いや、とバルツァーはかぶりを振る。穏やかな、人好きのする笑みを浮かべてみせた。
「そのように畏まらないでいただきたい。今日はただ純粋に皆様に楽しんでいただくためにこの場をご用意させていただいたのです。時間など気にせず、どうぞごゆっくりお過ごしください」
 一旦言葉を区切ってから、バルツァーは沙織に手を差し出した。
「そのように硬い呼び方もなさらないでいただきたい。様々な方と交流を深めるのも、このパーティの目的です。これをきっかけに、あなたともぜひ親交を深めたいと、これでも野心を抱いているのですよ。……私のことはどうぞニコラウス、とお呼びいただければ幸いです。ミス・キド」
 彼の持てる各界への影響力からは思いもよらないほど、その人柄はフランクなようだ。暖かい口調に、沙織の顔もほころぶ。差し出された手を握り返した。
「では、わたくしのことも沙織とお呼びください、ニコラウス。このようにお近づきになれて、こんなに嬉しいことはございませんわ」
 こちらこそ、とバルツァーは笑い返す。次いで沙織の後ろの ――今、この場では城戸沙綾だが――に顔を向けた。気づいた沙織は、彼が口を開く前に を指し示しす。
「ご紹介いたしますわ。こちらはわたくしの従姉妹の、沙綾です」
「初めてお目に掛かります。本日はわたくしまでお招きいただきまして、光栄です」
 実に優雅な、いっそ時代がかっているようにすら見える仕草で、 はバルツァーに頭を下げた。その身のこなしも浮かべた微笑さえも、何もかもが完璧だ。
 バルツァーがいっそう笑みを深くし、更に に話しかける。そつなく会話をこなす を沙織はにっこりと見守った。
 よく訓練されている、と背後に佇む聖闘士達は思い、何とかそれを顔に出さずに済ませた。どうなることかと密かに心配していた彼らも、とりあえずほっと胸を撫で下ろすことができたのだった。

Party Night 02 END


オリキャラ登場。
しばらくの間、断続的に出てきます。オリキャラ苦手な方には申し訳ありません。
さらに次回は増えます。すみません。

2010/02/03


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