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Side-S:12章 Las Fallas 01


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 ノックする必要はなかった。
 目の前に立った途端に開かれた扉に、カノンは苦笑する。まるで自動ドアだ。
「なんだ、カノン。何かあったのか?」
 室内にカノンを招き入れながらアルデバランが訊く。平均よりは長身なカノンが見上げなくてはならない相手と言うのは珍しい。上を向きながら頷いた。
「ああ。緊急事態に近いな」
「一体どうしたのです?」
 緊急という言葉に反応したのか、ムウの顔がわずかに険しい。アフロディーテも怪訝そうに尋ねてきた。
「他の3人はどうしたんだい?」
 いちいち個別に説明する必要はない。自らここに来た目的を早々に果たすまでだ。
「――アテナは? それに海皇は?」
 聞いてはみたものの、閉ざされたままの奥のドアは目に入っていた。結界のような小宇宙に揺らぎはない。
「奥の部屋にずっと篭りきりだが……。どうしたんだ?」
 所在なげに壁に背を預けていたバイアンが姿勢を正してカノンを見る。
 聖闘士達と違い、海闘士はかつて仲間でありながらも筆頭としてカノンを仰いでいた。その為かこんな風に余裕があまりなさそうなカノンというのを、彼等は見慣れていなかった。カーサもクリシュナも、カノンの様子に異変を感じ取る。
「ずっと二人だけで会談を?」
 眉を顰めるカノンに、腕を組んで動かないままのクリシュナが教える。
「そうだ。どうやら随分、気になることがおありのようでな」
「気になること? 何かあったのか?」
 カノンはそう聞き返したが、何があったか聞きたいのはここにいる聖闘士、海闘士の方である。緊急事態と言い、アテナばかりでなくポセイドンにまで用事があるというのだから。――だからこそ、神々に直接奏上したいことがあるのだろうと思わせる。誰も問い詰めることができなかった。
「さっき、また会場で主催者のバルツァー氏に会ったんだよ。で、なんだか変な話を延々と聞かされた」
 アフロディーテが簡潔に説明する。そこにカーサが補足を入れる。
「そのバルツァーって奴、あんたと一緒にいたあのお嬢さんと同類なんだ」
「……なんだと?」
 聞き捨てならなかった。カノンは思わず拳を握り締める。そのうえ、ムウまでが顔をしかめて言うのだ。
「しかも例の洪水は神が起こしたものだと、よりにもよってポセイドンの前で言い放ちまして」
「さらにあの日食(グレイテスト・エクリップス)まで、神が起こしたものだと断言した。月の裏側で取ったデータがあるんだそうだ」
 アルデバランの言葉が決定打だった。間違いない。一連の異変は、主催者が自ら起こしている。――起こそうとしている。
 早く の元へ戻った方が良さそうだ。いまだ開く気配のないドアを見つめ、カノンは考えを巡らせる。アテナへは伝言だけで済ませるか。ポセイドンからも、話を聞きたかったのだが。
 しかしカノンが口を開く前に、クリシュナが静かに語り出した。
「あの男、それらの聖戦を神が起こしたものだとよりにもよってお二方相手に断言した後、さらに変な話をしていた――」


『人間の、その愚かな行いに絶望し、すべてを正そうとする神がいる一方、それでもまだ我々に希望を見出してくださる神はいる。だとするならば我等を救いたもうたその深い慈悲に報いる方法は唯ひとつ。――我々の中に宿る希望の灯を、より大きく、具体的なものに育て上げること。それはつまり、神の逆鱗に二度と触れないような正しい世界を実現するということではないでしょうか』
 知ってか知らずか、当事者たる神々に向かってバルツァーは語った。
『そのためには、やはりその道へと人々を正しく導くことのできる牽引役が必要です』
『……それは、絶対的な支配者と言う意味ですか』
 硬い声で、アテナが尋ねた。
 返答によっては、彼女は聖闘士達に命を下さなければならないかもしれない。地上の守護者として、そんなことは許してはならない。
 ――例え彼がこの地上の神を脅威としない存在だとしても。
 だがバルツァーは重大な意味を持つ追求をひらりと躱す。
『いいえ。その言い方は適切ではありません。支配されるだけでは、人は抵抗を覚えるもの。ただ、導ければよいのです。これでも言葉は悪いかもしれませんが、指導者、というのが近いかと。』
『……』
 詭弁だと。
 ポセイドンは思う。アテナだって同じく思っただろう。だが彼も言葉には少なからず賛同できる部分も、なかったわけではないのだ。だから次の言葉も遮らなかった。
『それならば当然、かつての貴族階級などもってのほか。現時点での政府高官なども反発を招くだけです。では、どのような人物が適任か。――私は、ずっと考えてきました。探してきました。人々の目を惹きつけるだけの充分なカリスマを持ち、さらには正しい平和を望みうる者を』
 それまでの淡々とした語り口がいつの間にか消え去っていた。口調には静かな熱がこもっている。ついに感極まったように、彼は声を震わせた。
『そしてついに今日、私は見つけたのです』


 クリシュナが途切れさせた言葉をカーサが繋ごうと記憶を掘り起こす。
「ピース……なんとか、って……言ってたんだよな」
「――なに?」
 俯きがちに話を聞いていたカノンはびくりと顔を上げた。
 なんだったかなぁと頭をひねり続けるカーサに、アフロディーテがフォローを入れる。
「ピースクラフト、とやらを見つけた、と言っていたんだよ。バルツァー氏は」
 自分でも驚くほど心拍数が跳ね上がった。カノンは握り締めていた拳を開く。冷えているのに、変な汗をかいていた。
 そんな様子には気づかずに、バイアンがそうそうそれだと手を叩く。彼も思い出す努力をしていたらしい。
「ああ。ポセイドン様もよくわからないようで首をかしげていたが、確かにそう言っていた。どういう意味だろうな?」
「Peace――平和の、Craft――船、でしょうか」
 ムウが頭の中の辞書を繰れば、クリシュナも別の解釈を提示する。
「それとも技術か……平和を作るという意味かもしれないな」
 腕を組みつつ首を傾げたのはアルデバランだ。
「そういう能力のある人間、と言いたかったのか。よくわからん。――カノン?」
 どうした?と聞くのも憚られるほど、カノンが色をなくしていた。
「いや――違う」
 低く吐き捨てるがいなや、踵を返す。その顔からは血の気が引いていた。
 その尋常ではない様子に、さすがに誰もが驚いた。咄嗟にムウがカノンの肩を掴んで引き止める。
「カノン! どうしたのです!?」
「離せ!  のところへ戻る!」
 ムウの手を振り払ったが、今度はアフロディーテに捕まった。
「どういうことだい? 今の話と、 との関連がわからないのだが?」
 強い調子で問いただすアフロディーテの手をカノンはまたしても振り払う。語気鋭く忠告した。
「アテナとポセイドンに伝えておいてくれ。この島は今、外部から隔離されている。電波的にも、恐らく物理的にもだ。これから何かが起こる。その前に、俺は を連れてここから出る。お前達なら何があっても大丈夫だと思うが、緊急事態だと考えて行動しろ。少なくとも、ここからはどうやってでも出たほうがいいだろう。それもなるべく早くだ」
 言うだけ言って、ドアノブに手を伸ばす。
 しかし入ってきたときと同様に、カノンは自ら扉を開けることはなかった。


 突如、鐘が鳴った。教会の鐘のような音色。からんからん。鳴り響いた。
 全員が身体を強張らせる。誰もがとっさに時計を探し、長針がちょうど真上を指しているのを確認する。誰からともなく安堵の溜息が漏れかかる。
 しかしそれは、時を告げる鐘などではなかったとすぐに知れた。
 壁面に設置してあるTVの電源がオンになる。
「なんで勝手に……!」
 ディスプレイに一番近いところにいたバイアンが思わず声を上げたが、勿論誰も彼を咎めたりはしない。視線はバイアンではなく、画面に集中している。
 もしもTVを視聴している部屋があったなら、チャンネルが勝手に変わっていたはずだ。カノンは先程、停電が起こった後に確認した録画放送の様子を思い出す。異変を悟られないようにする為だけにあんなことをしたわけではないのだと、今になって納得した。
 ――ここまでするのだ。何を見せてくれる? カノンは画面を注視する。
 映し出されているのは美しい夜景。
 暗闇の中、ライトアップされた美しい館。今いるこの島を外から見た画のようだった。
 やがて静かに男声のナレーションが入った。

『今夜お集まりいただきました皆様。パーティは楽しんでいただけましたでしょうか?』

 映像は変わらない。ただ、穏やかな夜景のみ。
 何も疑いを持っていなければ、ただのサプライズとしてしか取られないかもしれない。

『ですが、これからが本番です。いよいよ本日のメインイベントである、炎のイリュージョンをこれより皆様にお目に掛けたいと思います』

 ――次の言葉を聞くまでは。

『イリュージョンは、残念ながらこちらではなく、ここより遥か北のブリュッセルで行われます。しかし皆様にはライブ映像にてその様子をご覧にいれます』

「ブリュッセル……まさかEU本部を……!」
 カノンが呻くように叫んで、ようやく呆気にとられているだけだった全員に緊張が戻る。
 張り詰めた空気の中、静かな調子でナレーションが告げる。

『なお皆様、お部屋からはなるべくお出になりませんように。現在この島は外に出られないよう封鎖させていただいております。既にお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、現在、外部との連絡も一切取れない状態になっております。皆様はこれからの世界を背負っていかれる大切な方々ばかりですので、本日は万が一にも皆様に累が及ばぬようお集まりいただいた次第です。なるべく危険はないよう細心の注意を払っておりますが、こちらの指示に従っていただけない場合は、御身の無事は保障できかねます』

 ぎりりと歯噛みする音は誰のものだろうか。
 異様に静まり返った部屋に響く声が事態の始まりを告げて、終わった。

『では皆様、ごゆるりとショーをお楽しみください』

Las Fallas 01 END


後書きです。

11章からばっちり続きまくりの新章です。
あまりにも長すぎるので端折ろうかと何度も試みたんですが
頑張った結果がこれでした…orz
そして今章ではさらにガンダムW用語が出てくることになります。
って、初っ端から出てますね(^^)
ちなみに今章のタイトルはただのこじつけです。スペインはバレンシアにて3月に行われる火祭りのことです。
張りぼての人形を燃やして、春の訪れを祝うんだそうです。
でもスペインなんてなんの関係もありませんです(笑)
火祭り、とか『春』の訪れ、とか。そう言う部分を無理矢理こじつけてみました(゚∀゚)
書いた当初は冒頭に、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)からの引用文を載せるつもりだったんですが
引用するに当たっては何かと面倒があるようなので、きれいさっぱり削除しました。
なのでかなり意味がわからない章タイトルになってしまいましたが、意味としては前述のイメージです。

|ω・)。oO(章終了後に、何となく雰囲気はわかったなるほどね――とか思っていただければ嬉しいですなんてとても言えない…)

2010/02/08


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