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Side-S:12章 Las Fallas 03


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 部屋は静まり返っていた。
 屈強な戦士達が何人もいるにもかかわらず、急変した状況に対応できないでいる。誰もが動きあぐねていた。本来彼らがどうこうするべき事態ではないのだ。それ以上に、彼らはまだ何も命じられてはいない。動きようがなかった。
 戦士達は各々の主神が姿を現すのを切望していた。未だ開かれない扉に視線が集まる。


「カノン!  が――!」
 緊迫した静寂を打ち破ったのは、注目されていた扉ではなかった。
 ものすごい勢いで開いたドアから、アイオリアが息せき切って現れた。次いでシュラも入ってくる。――二人だけだ。瞬間移動を行ってきたらしい。
 確認して、カノンの背筋に冷たいものが這った。だが次の瞬間、それは沸騰する。
はどうした! 頼むと言ったはずだ!」
 たまらず怒声を上げた。
 ――意味はないと。
 わかっている。二人には多分、非はないのだ。わかっている。
 仕組まれたのだ。恐らくは。そうなるように道筋がつけられていた。
 どこからかはわからない。途中までは多分偶然で、どこからかが策略だった。わからない。
 いつ、嵌められた?
 無駄に上げてしまった大声はカノン自身の横っ面を張る役割も果たした。衝撃で、自らの失態を自覚する。
「……すまなかった」
 いきなり怒鳴られて面食らっている様子の二人に詫びを入れた。カノンが頼んだにもかかわらず、 から離れた。それはつまり、どうしようもない事情があったということに他ならない。
「アイオリア、お前の言うとおりにしていればよかった……俺が軽率だった。――で、何があった?  は?」
 矢継ぎ早な問いかけに、アイオリアは嫌な顔はしなかった。だが答えるのは難しい。実際、なにがなんだったのか、よくわからなかったのだから。シュラと顔を見合わせれば、彼が代弁してくれた。
「彼女を『 』と呼ぶ男が現れた。すると の様子がおかしくなった。昔からの知り合いだったらしい。そして今は、どうやら の敵らしい」
 簡潔に伝えるシュラをカノンはじっと見つめる。シュラを通してその場面を見透かすかのように。
はそいつを『アルバー』と呼んでいた」
「ほう……アルバー、か」
 待ち望んでいた声がようやく聞こえた。カノンは振り返る。
 カノンだけではない、全員の眼差しを一身に受けて、ポセイドンは不敵な笑みを浮かべていた。その傍らでは女神アテナが麗しいかんばせを厳しい表情で曇らせている。
「なにやら騒々しくなったな」
 厳かに言って、ポセイドンはカーサを呼んだ。
「私の思い浮かべるアルバーを、彼らに見せてやってくれ」
「か……かしこまりました」
 主君の心の中の像を暴くよう主君当人から要請されて、畏れ戸惑いながらも逆らうわけにはいかなかった。カーサは一瞬で心を決め、その身を変じる。
「君らの会ったアルバーとは、こんな男で間違いはないかな?」
 件のアルバーに化けたカーサを指して、ポセイドンは飛び込んできたばかりの聖闘士たちに照会を求めた。シュラとアイオリアは即座に頷く。
「彼です。間違いありません」
「そういえば――」
 アイオリアが首を傾げた。
「このアルバーと言う男、『ジュリアン・ソロ』をよく知っているような口ぶりでしたが……ご存知か」
「ああ。『ジュリアン』とは親しくしてもらった。彼がそう言っていたのかい?」
 鷹揚に答えたポセイドンを、アイオリアは困惑した目で見つめる。ついで隣に佇む自らの女神も見遣り、さらに首を傾げてしまった。
「なんです、アイオリア?」
 女神が促す。言いにくそうにしているのはわかるが、だからこそ聞きたい。
 返答を要求され、アイオリアは仕方なく、それでも戸惑いがちに重い口を開く。俯きながら。アテナの顔を見ながらそれを言うことなど、到底できなかった。
「……城戸沙織嬢は……とても人間には見えない、と」
 ともすれば不敬になりかねない重荷をシュラも共に背負ってくれた。
「そしてジュリアン・ソロもまた、同じ存在ではないのかと、その男は言いました。我らのことも――聖闘士であろうと見抜いていた様子」
 恐る恐る顔をあげれば、アテナは難しい顔をして黙り込んでいた。ポセイドンはといえば、アテナ以上に驚いたように見受けられる。
「なかなか……食えない男だとは感じていたが、まさかそこまでとは。恐れ入った」
 どこか面白そうにポセイドンは笑った。
「我を神だと見抜いてなお、堂々と謀ってのけたか――つくづく私は、そういうしたたかな人間との巡り会わせに恵まれているらしい」
 なぁ、カノンよ。海皇は呼びかける。じっと自分を凝視する、神をも恐れなかったもう一人の男に。
「このまま彼に出し抜かれるのも面白くない。カノンよ」
 一度は利用されたのだ。真実はともかく、本人はそう思っている。なら、使い返してやってもいいだろう。それでこそフェアというものだ。
「知りたいことがあるのだろう? 聞きたいことが。教えてやろう――見返りは求めぬゆえ、安心するがいい」
 神と人の関係がもはや支配と隷属の間柄ではないのなら、向かい合ってしまった以上、それは対等だ。貸しは返してもらう。それでいい。
 見据えられたカノンは、畏れのない目でポセイドンを見返している。かつてシードラゴンと名乗った時とはまったく違う。あのときは、目を逸らしていたのだ。――変わったと思う。それは間違いなく、良いことだ。
「では畏れながら。――先程、 におっしゃっいました。彼女に似た女性に、会ったことがあると。その者の名を、お教えいただきたく」
「そんなことでいいのか」
 意外だった。件の と共に随分と気にしていた様子の、この先の島について聞かれるのだとばかり思っていた。
 だがカノンは迷いなく言い切る。構いません、と。それどころか。
「……いえ。是か非か。お答えくださるだけでも結構です」
 何かを考え込んでいるようにも、思い詰めているようにも見える目だった。ならば、それでいいのだろう。それで答えが出るのならば。
「いいだろう」
 ポセイドンは頷く。カノンの言葉を待った。


「――リリーナ・ドーリアン」


 憚るように、その名は低い声で発音された。
 ポセイドンは、頷く。
 瞳を閉じた。まさか数千の時を超えて、現代を生きる人間からそれを聞くことになろうとは。
 あえて横に立つ女神を目に入れないようにした。どんな顔をしているのだろう。気になったが、見たくもなかった。
「ありがとうございます、ポセイドン様」
 キッパリとした声に目を開く。既にカノンが背を向けていた。
「待て」
 さすがに呼び止める。少しくらい説明して行けというのが本音である。誰もがぽかんととカノンを見ているのだ。うっかり見てしまったアテナですらがそうなのだから、カノンの行動が尋常でないのは明らかだ。
「先程の と、過去のリリーナ・ドーリアンと。どういう関係があってこの事態に何の関係がある? そもそもあのリリーナという人間には一体なにがあるというのだ。私には、ただの脆弱な人間の女にしか見えなかった。――良い瞳(め)を、してはいたがな」
 言いながら、ポセイドンは思い出していた。遥か昔に一度だけ見たその人間を。確かに高尚な精神を持っていると感じはした。だが何の力も感じられない。弱いだけの美しい女だった。
 しかし。
 数千年経った今でも、思い出せる。そのことには深い意義がある。例え出自がこの世界ではないという特殊性があるとはいえ、所詮は無力な人間。それが、これほどまでに神の記憶に刻まれている。
 渋々といった顔で振り返ったカノンは、それでもポセイドンの問いを蔑ろにしたりはしなかった。
「……リリーナ・ドーリアンは他に類を見ないほどの求心力、影響力を持った存在です。天性のカリスマがあったといってもいい」
 目を伏せ、淡々と語るその様は、なにかを読み上げているようにも見える。
「彼女はかつて、とある勢力への反目を逸らすための傀儡として、その代表に祭り上げられました。しかし傀儡の身でありながら、当時ばらばらだった世界に向けて統一国家の樹立を自らの意思で宣言し、その崇高な理念によって民衆の支持を受け、ついには国家元首――クイーンとまで呼ばれる存在になった。その後、それを良しとしない勢力によってわずかな期間でその座を追われたものの、歴史上、彼女が唯一、全世界から支持を受けることのできたただ一人の女王であった事実はなくならなかった。だから若くして政界から引退した後も、彼女はその身をその命を、狙われ続けた」
 不意に視線を上げ、カノンはアテナに目を向けた。
「彼女が拉致され、大々的なテロ行為が行われた時期があったそうです。そのとき、その舞台は世界の境界を越えた――まさに、今のように」
 女神アテナは柳眉をひそめる。そこにどんな感情の動きがあったのかは、誰にもわからない。その意味を追求せず、カノンは続ける。
「その事件の詳しい経緯は秘匿され、詳細を知っている者はごく一部に限られている。だから 自身も、かつてこの世界で何があったのかは知らないようです。そして現在起こっていることとの関連性も、特に疑うことはなかった――これまでは」
「これまでは、ということは、今は状況が変わったということですね。なぜ、そうと言い切れますか?」
 恐らくこの場の全員の疑問だ。代表してアテナが問う。聞かずにはいられなかった。
「バルツァー氏から、ピースクラフトという名が出たと聞きました」
「……名、だったのですか」
 それはアテナも知らなかった。だがカノンは から得た真実を知っている。ならばその言葉に疑う余地はない。
「リリーナ・ピースクラフトというのが女王の本来のフルネームです。そしてアテナ」
 険しかった表情をわずかに緩めて、カノンは聞いた。
「ご存知だったのではないのですか? リリーナを。そして…… が……リリーナの娘であることを」
 言いにくそうだった。目には迷いも見える。真実をすべて識っているのなら、わざわざたずねる必要はないはずだ。ならばそれはカノンの推測であって、これは確認なのだ。
 それを察して、ようやくアテナは気付いた。己の態度が、言葉が、あまりにも不鮮明であったことに。
 別に隠すつもりがあったわけではない。言う必要がなかっただけだ。大事な記憶だった。心に留めておきたかった。――それだけだ。
  は自分の事情を進んで話はしないだろう。ならば、その と知識を共有してしまったカノンに、アテナはせめてが己が知る限りの事情を語っておくべきではなかったのだろうか。そうしていればカノンは今、こんなふうに確認を取りながら情報を整理する必要もなかったのではないか。例え全ての出来事に繋がりなどなかったとしても。 を聖域に留めたうえに、カノンに任せた以上、それは確かに彼女の義務だったのだ。
「――ええ。知っていました。……でもまさか、関係があるなんて思わなかったのです。だってもう、何千年も経っているのに……」
 やるせなく俯いて、アテナは唇を噛みしめた。
「ああ……そういうことだったのか」
 黙り込んでしまった女神に代わり、アイオリアがぽつりとつぶやく。カノンが目を向ければ、アイオリアはどことなく厳しい顔をした。
「ピースクラフトとか、完全平和とか、そんな話をしていた。 は戦ってしまったから、リリーナにはなれないとか。だが、だからこそ未来が拓けるんだそうだ」
「未来を見たのだと、アルバーとやらは言っていた」
 シュラも口を挟む。理解できなかった会話だが、伝えることはできる。伝えなければならないと、そう感じた。
「信じられないのなら、 も未来を見てみるといいと持ちかけていた。そして、 はやつに指示された場所へ向かった」
「未来だと? ――まさか」
 カノンの脳裏にひとつの単語が閃いた。
「ゼロシステム――!」
「それだ」
 やはり伝えてよかったとシュラは思う。通路へのドアを自分がふさいでいたことに気付いた。どいてやる。
「うまくいけば、ブリュッセル攻略も止められるかもしれないと言われていた。――行け」

Las Fallas 03 END



言い訳です。
大きめの伏線回収。ていうか、根幹部だったわけですが。
便宜上、カノンを語り部にしてしまいましたが、あまりにも捻りがなくて心残り。
しかもカノンにリリーナを絶賛させるかたちになってしまって、書き上げてから時間がたった今でも、本当に良かったのかと後悔。
でも他に適切な表現が思いつかなかったし……
史実を読み上げるようなイメージなので、そう悪いことを言わせても仕方ないし。
要点だけ、と思うとこうなりました。
私の中のリリーナ像がそのまま出てます(笑)
リリーナ様、大好きです!(←様付けはデフォ)

2010/02/08


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