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Side-S:12章 Las Fallas 06


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 四角く切り取られた地の底へと飛び込んだカノンは、その既視感に眉をしかめた。
 冥界へとこの体を持ったまま降り立ったときのことを思い出す。事態の意味合いは全く違うが、緊迫感には大差がない。
 冥府の底よりは比べるべくもなく浅い地面に足をつき、暗闇の中で目をこらす。カノンの頭ほどの高さの場所からわずかに光が漏れていた。真横に細い。おそらくそれがエレベーターの扉の下部だろう。カノンは注意深く手をかける。小宇宙を込めた。それほど苦もなく扉は横にスライドし、カノンはわずかに開けたそこから外の様子をうかがった。人の気配はない。確認して、一気に開く。軽くジャンプして飛び出た。足音もなく床に降り立つ。
 出たところは、無機質な白い光に満たされた通路だった。出てきたエレベーターがこのフロアの片端の突き当たりで、その前には一直線に通路が延びている。
 まるで人気がないそこを、カノンは足早に歩く。両脇にはラボか何かだろうか、研究室か開発室のような部屋が大小混じりながらも整然と並んでいた。
 カノンはその奥に目を向ける。通路は途中で終わっていて、その向こうに薄暗い空間が広がっていた。おそらくそれが格納庫だ。ずっと奥の左隅だけが煌々と明るい。通路の切れ目には手すりが設置してあり、10メートルほど下に広大な空間が広がっている。ラボのフロアから格納庫全体を俯瞰できるようになっていた。
 灯りのともる一角を注視した。人影が見える。床に一人。カノンがいるのと同じほどの高さに設置されたキャットウォークに一人。とても相好が判別できる距離ではないが、それでもキャットウォーク上の一人は だ。カノンにはわかった。
 手すりに飛び乗る。足をついたのはほんの束の間。次の瞬間には強く蹴っていた。十数メートルはあろうかという距離をその動作だけで移動した。同じくらいの高さにあるキャットウォークを次々と足がかりにして、カノンは繰り返し飛ぶ。数秒後には、目的地にたどり着いた。
 下ろされたままの長いダークブラウンの髪の後ろに降り立つ。
「――カノン!」
 驚いて振り返った の瞳がいつもの青に戻っていた。
 コンタクトレンズを外したのは、今二人の目前にある赤いモビルスーツに搭乗するため、少しでも違和感のある物を外しておいただけだろう。
 そうわかっていても、なぜだかカノンはほっとした。鮮やかな青いドレスによく映えている。場違いなことを思いつつ、それでも口はまともに状況に即してくれた。
「こいつが、ゼロシステム搭載の機体か」
 赤い偉容を見上げて問えば、 は反対にうつむいた。
「……エピオン、よ」
 低くつぶやく。その目は、下に向けられている。カノンも の視線を追った。淡い金髪の、線の細い青年が立っている。こちらを見上げていた。ポセイドンに命じられたカーサが化けて見せた姿と同じだ。では、彼が。
「アルバー。彼が、作ったのですって。完全に失われたと思われていた設計データを復元して」
 忌々しげに、 は吐き捨てた。だからカノンは聞く。
「それでも乗るのか」
  はカノンを見上げる。嫌でたまらない。瞳はそう訴えていた。だが口は、全く違う言葉を紡ぐ。
「ブリュッセルに向けて、モビルスーツ部隊が出撃したわ。止めるには、今はこれしかない」
「たった一機で、どうにかなるとでも思っているのか」
「……そのための、ゼロシステムよ」
「使いこなせる自信はあるのか」
  の瞳が揺れた。カノンには、それは の不安を表しているようにしか見えない。
 自信がないならやめろ、と。――システムにのみ込まれない自信がないのなら、やめろ、と。
 そう言おうとしたのだ。しかし。
「もしも――」
  に先を越されてしまった。
 ためらいがちにカノンを見上げながらも、口調は断固としている。
「もしも、私がエピオンに負けてしまったとカノンが思ったら――お願い」
 覆す気など、さらさらないのだ。どんなに自分には無理だと思っていても。
「止めて。どんなことをしても」
 縋るような目だった。カノンになら、それができると信じている。
 カノンの表情は奇妙に歪んでいることだろう。それでもカノンはうなずくことしかできなかった。
「――お願いよ」
 他にはどんな選択肢もない。おずおずと胸に両手を重ねられて、こんな風に頼まれてしまった以上は。
「わかった。だが――必ず止めてこい。いいな?」
 両肩に手を置いて、釘を刺した。カノンは屈んで、 の顔を至近から覗き込む。青い瞳がすぐ間近で、ほっと緩んだ。
「了解」
 ささやくように応え、 はカノンから離れる。すでに開いているエピオンのハッチへ身を滑り込ませた。
 ハッチが閉じきる直前に、額に手を添えて敬礼をしている姿が見えた。

 ***

 爆音とともにエピオンが去ってしまえば、格納庫には互いに面識のない者同士だけが残された。
 一人は見上げ、一人は見下ろす。
 はじめに口を開いたのは、下にいる方だった。
「こんなところまで彼女を追ってこれるなんて、驚いたよ。君も聖闘士?」
「アルバー・ウィナー。あいつにゼロシステムを使わせて、いったい何を見せたい?」
 噛み合わない会話。当然だ。立場も、考えも、利害も、生まれ育った世界さえも。何もかが違う。二人に共通項などないのだから―― 以外は。
 上と下の視線がぶつありあい、沈黙が宙に浮かぶ。互いに聞きたいことはある。問いただしたいというのが正しいか。
 どう切り出そうかとそれぞれが思案して、下にいたアルバーが先に考えをまとめた。
「とりあえず、こちらに降りてくる気はないかい?」
 パーティに出ていたときの格好そのままなのだろう。上質なスーツを着ている。そのジャケットのボタンを外し広げて示していた。何も持っていない。ホルスターすら身につけてはいないようだ。丸腰だとことさらに主張している。
 そんなことに頓着するカノンではないのだが、それがアルバーなりの譲歩なのだろう。受け入れて、カノンは軽々とキャットウォークの柵を越える。
 トンと軽い身のこなしで10メートル上から飛び降りてきたカノンを、アルバーは目を見開いて迎えた。
「へえ……話には聞いていたけれど、聖闘士ってすごいんだね」
 表情を見る限りでは、何の含みもない純粋な賞賛のようだ。だがカノンはその話題には興味がない。
 アルバーもそれは察したのだろう。表情を改めた。それでも穏やかな笑みを浮かべている。
「君は僕を知っているようだけど、僕は君を知らない。だから、とりあえず自己紹介を。僕はアルバー・カタロニア。……君が知っている名前は、今は使っていないよ」
 いくら丁寧に名乗られても、相手になってやる義理はないはずだった。しかしカノンも大人だ。無下にはしないでおくことにした。
「俺はカノン。双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士だ」
「確か銀河戦争(ギャラクシアン・ウォーズ)の前振りによると、黄道十二星座を冠する黄金聖闘士って最高位なんだよね?」
 相槌にまで応える必要はさすがにない。カノンは事務的に続けた。
「――今は、 の特定協力員もしている。国家保安部の臨時要員だ。貴様をどうにかする権利も、 が許可さえすれば、ある」
 その一言で、アルバーの表情が微妙に変わった。わずかに目を眇める。
「……君は、この世界(こちら)の人だよね?」
 カノンは答えなかった。アルバーの言いたいことはわかる。 が言ったりしなければ、カノンが特定協力員などという身分など知ることはないはずなのだ。
「でも彼女が、自分から協力員なんて要請するとは思えない。そんな制度があるなんてことも――そもそも国家保安部……プリベンターのことも、自分から話すなんて信じられないんだけど」
 アルバーの目が鋭くなる。カノンへ向けるまなざしは、ほとんど睨みつけるようだった。
「君は、何者?  の何なの? ――さっきも、ずいぶん親しいようだったけど」
 余裕を装っているのだろうが、口ぶりがあまりにも子供っぽく感じられた。カノンは失笑するところを何とかこらえる。アルバーの見た目は と大して変わらない。 から得ている知識によれば、彼もまた数千年を冷凍睡眠によって超えてきた存在だ。だが『生きて』きた年数は、あくまで見た目通りでしかない。ならばアルバーはやはりカノンよりはずいぶんと年下で、この反応は年相応なのだと納得できた。
「逐一貴様に話す必要はないな。少なくとも がこちらにきてから半年以上、俺はほとんど と共にいる。この世界の人間の中では一番、貴様らの世界の事情については知っていると自負しているつもりだが」
「…… が? 話したのかい?」
 一瞬見せた敵意に満ちた表情を納め、それでもアルバーは懸念を隠さない。
 ああそうか。カノンはもう一度納得した。
 こいつは の古くからの知り合いで、 のことを――どういう意味かは知らないが――特別な存在と位置づけている。だから の存在がわかれば、こんなところに誘い込んで、取り込もうともする。
 もしかしたら、とカノンは思う。カノンの知らない昔の は、こんな誘いに簡単に乗ってしまうしかない、弱い子供だったのだろうか。アルバーの知っている は、守られるしかないか弱い少女でしかなかったのだろうか。
「答える必要のある質問か?」
 侮蔑を込めて、カノンは言ってやった。
「時は人を変える――良くも、悪くもな。今の は、昔の じゃない。貴様だって、そうだろう?」
 揶揄をそのまま受け止めて、アルバーは悄然とうつむいた。
「そうだね。人というものは、変わっていくものだ。それを成長と取るか劣化と取るかは、人によって判断が分かれるだろうけどね」
「お前はどちらに変わった? アルバー・ウィナー・カタロニア。お前の父、カトル・ラバーバ・ウィナーはかつて と同じプリベンターの構成員だったはずだ。そのお前が、その思想とは真逆のことをしている」
 顔を上げたアルバーは苦笑していた。本当に、苦々しい笑みだった。
「……本当によく知っているね。協力者ということは、プリベンターの正規構成員ではないんだよね? なら、旧職員の個人情報にまでアクセスする権利なんてないはずだ。それ以前に、さっきも聞いたけど君は『こちら』の人間だろう?」
 いちいち人のことをこうだと決めてかかる男だ。面白くない。
「なぜ、俺が『あちら』から来ていないと断言できる?」
 少しばかり鼻をあかしてやろうと思ったのだが、あっさりと躱されてしまった。
「『わかる』からだよ。なんでかは秘密。……ああ、そうだ。君は聖闘士だろう? それだけでも、理由になるじゃないか」
 当てこするように言われて、結局はカノンの不快度数は増しただけだった。ふんと鼻を鳴らし、カノンは話題を変える。今はこんなくだらない応酬に時間を費やすべきではない。
「――聖闘士を知っているなら、これも知っているか?」
 カノンはもぬけの殻となったエピオンのハンガーを見上げた。
「聖闘士の存在意義を――聖闘士が何を守るために、存在しているのかを」
「地上の平和、じゃなかったかな」
 模範解答だ。カノンはのうのうと答えてみせたアルバーに視線を戻す。
「貴様らは、それを乱している。そして は、俺たちの代わりにそれを守ろうとしている。貴様はそんな を利用して、なにがしたい?」
「平和を、築きたいのさ。完全なる平和をね」
がその礎になるとでも?」
 厭味ばかりのやりとりにいい加減辟易したのだろう。アルバーは露骨に顔をしかめた。
「ここまでこの僕に向かってタネ明かしをしてくれてるんだ。そんな聡い君なら、聞かなくてもわかっているんだろう? 勿体ぶった言い方はやめてくれないか」
 そうは言ったものの、アルバーは肩をすくめて結局は白状を始めた。
「僕たちはオーバーテクノロジーによる軍事力で、支配を行う考えで行動している。支配と聞くと、過剰な行為を想像するんだろうね……間違ってはいないよ。支配というのは抑圧する姿勢だ。驕りある行動に見えるだろうことも承知の上だ。しかし支配とはまた、人間の必要以上の欲望を抑える統治をする上で最も有効な方法なんだ。――結局この世界でも、神は人間を野放しにしてしまった。そもそも神に、人間を生死意外でどうこうすることなんてできないんじゃないかな。なら、人類には人類による、神以上のシステムが必要だ。戦いの一向になくならない世界は、神の予測を超えていたんだよ。この行いは、いずれ神にも理解されるんじゃないかと、自信を持っているんだけどね」
 あまりにも一方的な理屈だった。怒りのあまり、カノンは目の前が真っ白になった気がしたほどだ。
 かつて、一度はカノンも似たようなことを考えた。それは事実で、実際にとんでもない被害を世界中に及ぼす元凶となったこともまた事実だ。
 だからこそ、言えることもある。
「トレーズ・クシュリナーダが否定しようと全世界に向けて体現してみせ、ミリアルド・ピースクラフトが実行し、その矛盾を示そうとした力による支配。それらは途中で頓挫したとはいえ、結果は確実に得られたはずだ。それに満足せず、あまつさえその理屈を都合のいいように解釈した挙句、『あちら』でそれをなし得なかったから、『こちら』で実現させようだと? ――ふざけるな」
 言葉の途中で、アルバーの表情が驚愕から怒りへと変わっていく課程をカノンは見ていた。
 怒りを覚えるのなら、それは図星だったということに他ならない。
「しかもそのくだらん理想の象徴に を使おうだなどと、短絡的すぎて開いた口がふさがらんな。貴様の望む独善的な未来を、 も同じように見るとでも思うのか」
 ふざけるな。カノンはもう一度唾棄した。何というくだらなさだ。
 だがアルバーはなおも食い下がってきた。
「君は、知らないから。だからそんなことが言えるんだ」
「――俺が、何を知らないと?」
 どうやらアルバーは意地になっていて、それはカノンも同じだった。アルバーは、なるほどカノンの知らない の過去を知っているのかもしれない。だがカノンだって、アルバーの知らない の深い部分を知っている。
「世界がどうとか、大層なことを言ったけれど、結局僕は、 を守りたいだけなんだよ……君だって、そうじゃないのかい? 理由はどうであれ」
「……」
 探るように尋ねられ、カノンは口を噤む。答える気はなかった。
 だがアルバーのやり方はカノンとは逆らしい。話し合いでどうにかしようと。そんなことを考えているのなら甘いと言ってやりたい。しかし図らずもカノンは聞き入ってしまった。
は昔から、本当に子供の頃から、ずっと狙われてきた。その身を、時には生命を――彼女の生まれの特殊な位置を、君は知っているんだろう? なら、僕の言っていることは真実だとわかるはずだ。つまり、彼女は逃げたんだよ。隠れてしまったんだ。絶対に、彼女を脅かすものが現れない場所にね。それがプリベンターだ」
「……攻撃は、最大の防御、か」
「そう。だけど、もう見つかってしまった」
「貴様が見つけたんだろう?」
 カノンの鋭い言葉に、アルバーは目に見えて怯んだ。それでもどこか必死な目を毅然と上げる。カノンを睨んでいた。
「こうなってしまった以上、僕は責任を取りたい」
「責任? ――なんだ、それは」
「彼女に、もう一度逃げ場を提供すること」
 なるほど、とカノンも負けずにアルバーを睨みつける。
「貴様らの上に戴いてしまえば、確かに誰も手出しはできなくなるな。だが――」
 優しげなアルバーの風貌の中に、どす黒い何かが透けて見えたような気がした。
「それは貴様のエゴだ。 の気持ちをまるで考えていない――なにもわかっていない」
 できることなら話し合いで解決したいらしいが、それは無理だ。どう考えても。カノンは背を向ける。こんな奴と話すことなど、もう何もない。決定的な齟齬がある。こいつはそれをまるでわかっていないのだ。
 遠ざかる足音に、それでもアルバーは追いすがるように言って聞かせた。
「わからないから、託したんだ。 が選んだ未来を、僕は尊重するつもりだよ。でもきっと彼女は、正しい未来を見るよ。僕は、信じている」
 カノンは一度だけ立ち止まってやった。
「貴様が正しいと信ずるものと、 の思うそれとの間に、果たしてどれほどの距離があるんだろうな。――今のあいつは、安易でも不本意な道を選ぶほど、弱い女じゃない。俺は、そう信じている」
 振り向きもせずに言い放つ。もう、反論はなかった。

 カノンはもうアルバーを一顧だにせず、地上へと急いだ。

Las Fallas 06 END



後書きです。
ちょっと小難しげな(だけど実は意味があるのかどうなのか微妙という)思想の話でガンダムっぽさを出したかったんですけど、なんか玉砕してる気がします\(^o^)/
支配が云々というのはトレーズ閣下のお言葉の受け売りです。
雰囲気だけでも出せてればいいや(←だから駄目なんだと思う)
とにもかくにも、やっとエピオン出せた(゚∀゚)

2010/02/08


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