test

Attention

ここは夢小説(名前変換小説)/イラストの非公認二次創作ブログです。
二次創作、夢小説等の言葉や意味をご存知でない方、もしくは嫌悪感を抱かれる方は閲覧なさらないようご注意ください。
また通常の二次創作と違い、管理人が勝手に創作したキャラクターやその設定なども存在します。そういった原作から逸脱した部分に対して嫌悪感のある方も閲覧なさいませんようお願い致します。
この警告を無視して内容をご覧になってからの苦情は一切受け付けません。
尚、取り扱い作品の原作者、出版社、製作会社等との関係は全くありません。
また、当ブログ上の作品については著作権を一切放棄しておりません。
無断転載、引用等は固くお断り致します。
※JavaScriptオフ環境では非表示になる箇所があります。
※初めてお越しの方はの【INFORMATION】をご一読ください。
 メインコンテンツの巡り方の説明があります。

更新履歴 【絶賛更新停滞中】

※JavaScriptオフ時・Twitterサーバーダウン時非表示 / 詳細別窓表示

Side-S:12章 Las Fallas 09


※ 記事タイトルクリックで本文表示 ↑ ※


 外の騒々しさと壁一枚しか隔てていないとは思えないほど、館内は静まりかえっていた。
 それでもついさっきまでは、悲鳴やら怒号やらが飛び交っていたのだ。それも今はない。
「話には聞いていたが、本当に恐ろしいな、こいつは」
 美しく咲き誇った薔薇の花束を抱え、その花びらを指先でつまんでためつすがめつしながら、カーサはこの花の持ち主に話しかけた。勿論、これでも賛辞である。
「噂ではもっと毒性が強いと聞いていたんだが、単に麻酔ガス効果も狙えるとは知らなかったぜ」
 高めていた小宇宙を抑えて、薔薇を一輪手にした麗人は笑う。
「まあ、使いようだよ。もともと、その薔薇の毒性はそれほど強いわけではないんだ。私の小宇宙でそれを増幅しているようなものでね。後はさじ加減というわけさ」
 カーサに持たせた花束に薔薇を戻してから、アフロディーテは花束そのものを受け取った。万一の時のために聖域から持ち込んでいたものである。もしもの事態が起こるのならばこのような使い方になるだろうと考えて選んできたものの、まさか本当に使う事になろうとは。
 暢気な会話のようだが、一仕事終えた後である。騒ぎを大きくしそうなゲストたちに強制的な眠りを与えたところだ。空調コントロール室に入り込み、各部屋へのダクトに魔宮薔薇(ロイヤルデモンローズ)の香気を流した。
 そこへ辿り着くためには、カーサの能力は有効だった。かろうじて館内に残っている館の使用人に同僚の姿を見せて近づき、疑いを持たせずに通り抜けさせ、または目的地まで案内させる。用が済んだら、適当に転がしておけばよかった。
 さて、と花束を手近な花瓶に突っ込むと、アフロディーテはカーサと顔を合わせる。
「どうしようか? 外の連中の加勢に回るか」
「それとも、ポセイドン様たちのところへ戻るか」
 密閉された空調室から通路に出ると、否が応でも窓の外の派手な花火が目に入る。
「みんな頑張っているようだが……どうにも私向きではないような展開だな」
「俺にも向いてないな。ちっとは手助けになるだろうが、広範囲に防御したり破壊しまくったり、ってのは専門外だ。あんたも、どっちかというと対人攻撃が得意みたいだしな」
「まだ使用人が残っていたということは、こちらを放棄するつもりはないということだ。ならばここは万一に備えて、私たちがお二方の傍でお守りするのが得策だろうね」
「ああ。戻るか」

「それなら、僕も一緒に連れて行ってはくれないかな」

 二人の背後から、出し抜けに声がかけられた。
 ぎょっとして振り返った二人の目に、穏やかな面差しの青年が映る。先ほど見た顔だった。一度は人のごった返すホールで。そしてついさっき、カーサが模した姿で。
 アフロディーテは正面からアルバーを見据える。彼に対しては、もはや護衛としての態度をとる必要などないのだ。
「何の用だい? アルバー・カタロニア。 を連れて行っただけでは足りないのかな?」
「俺たちが、他の奴らとは違うってわかってるそうじゃないか。それでもまだ不用意に近づこうなんてな。いい度胸だぜ」
 皮肉ですらない敵意のこもった言葉にアルバーは苦笑した。
「うん。声をかけたとたんに殺されるかもしれないとはちょっと思ったけどね。でも、用があったから」
 花瓶に追加されていた薔薇に目を留め、アルバーはその繊細そうな表情を曇らせる。
「これ、毒があるんだろう? こんなものを使ったりして、大事なお客様方に万一のことはないだろうね?」
「罪もない一般人を殺すような愚かな真似はしないよ。君たちと違ってね」
 痛烈なアフロディーテの批判にも、アルバーは動じたりしなかった。
「耳が痛いね。でも、それならいいんだ」
「大事な大事なお客様だもんな。使えなくなったら困るってわけだ」
 カーサの吐き捨てるような言葉にも、静かに笑って答える。
「彼らを今、どうこうするつもりはないよ。イベントが終わったら、丁重にお返しする手筈だからね」
 アフロディーテの視線が冷ややかさを増した。
「こんな騒ぎを起こしておいて、何もするつもりがないなんて戯れ言を信じろと?」
「うん。彼らには、目撃者になって欲しいだけだからね。僕らのことを知っておいて欲しいだけなんだ」
「つまり、君たちという危険分子がいることを世に知らしめるためには、彼らの地位や立場は絶対に必要だというわけか。だから、殺されてしまっては困ると?」
 初めはうなずいて聞いたアルバーだが、最後の一言には首を振る。
「ちょっと違うね。それは違う」
 強い言葉で否定した。
「これは、必要なプロセスなんだ。そのプロセスの中で、手を汚さなくてはならないのは僕たちであって、君らではない。だから、君たちが僕らのせいで手を血で染めなくてよかったと、心からそう思ったに過ぎない」
 言い切って、アルバーは一つ咳払いをする。喋りすぎてしまったのだろうと、見当はついた。
 さて、と仕切り直す。改めてアフロディーテに、そしてカーサに真剣なまなざしを向けた。
「もう一度、ジュリアンに会いたい。連れて行ってはもらえないだろうか」
「今更ポ……ジュリアン様にお会いして、何をするつもりだ」
 低い声でカーサが問う。怒りがにじみ出ていた。
「別れの挨拶を」
 ひどく寂しげに、そして端的にアルバーは言った。
「彼には親しくしてもらったからね。ひさしぶりに友と呼べる存在を持てて、楽しかった。彼を利用するつもりなんてなかったんだ。でも、結果的にそうなってしまったからね。それが申し訳なくてならない。だから、その謝罪もしておきたかった」
「…………」
 黙り込んだカーサは、しかし数瞬後にはさっさとアルバーに背を向けた。
「ついてこい」
 何の相談もないことにアフロディーテは驚いたが、すぐに理由は知れた。立ち止まらずに、カーサは告げた。
「――ポセイドン様が直々にお呼びだ」
 アルバーは目を見開く。そして笑った。ひそやかに。
「なるほどね――彼が、海皇ポセイドン。なるほど……そういうことだったんだ」

 ***

 言いたいことを言ってしまえば、もう何も話すことなどなかった。
 アルバーは、詰るでもなく怒るでもなく、ただ泰然と自分を見つめるジュリアン・ソロ――ポセイドンの瞳を見返した。
 彼らの立場はあまりにも違っていて、出自どころか存在のありようさえもがまるで違うのだ。それでも、確かに会話は成立し、時には心も通じ合っているように思えることだってあったのに。
 その機会は永遠に失われてしまった。
 拒絶のまなざしが痛かった。ため息をつき、窓の外へ目を向ける。戦闘は終了に近い。ブリュッセルへ向かうはずだったモビルスーツ部隊も、もうほとんどが墜とされた。
「変革には、いつだって痛みが伴うものだね」
 独りごちたつもりだったが、返答があった。
「無用なものだ。それほどまでの犠牲を払って変革すべきものなど、この世界にはないというのに」
「本当に、そう思っているのかい?」
 今や人間らしさなどみじんも感じられないポセイドンに、それでもアルバーは態度を変えない。
「君だって、一度は試みたことじゃないか」
「我と貴様らを同列に語ることは許さぬ」
「ああ、そうだね。なら――」
 決然と、アルバーは神に向かって宣言する。
「やっぱり、人間のことは人間でどうにかしないといけないんだよ。そうでないと、正しい未来を掴むことなどできはしない。――かつて君は、人間に正義なしと断じて粛正を図ったんだろう? それならば、少なくとも正しい世界のありようのヴィジョンを持っていたはずだ。それは、どんな世界だった?」
 ポセイドンは首を振る。人間くさい所作だと思ったら、今度はいうことも随分と人間くさかった。
「何が正しくて、何が正しくないかなどと、どうしてわかる? 結局、私にだって正解などわからなかったというのに、どうして君にそれがわかるというのだ?」
「随分と、弱気だね。だから君は負けた。違うかい?」
「――なんだと?」
 ポセイドンの目に殺気にも似た強い光がともった。そんなものに臆せず、アルバーは続ける。
「迷いが出たんだね。わかるような気がするよ。君は、基本的に優しいから。でもね」
 まるで諭すかのような言葉。アルバーは傲岸にも、神を説き伏せようとしていた。
「こうと決めたら、迷うことは許されない局面というのが、人間にはあるんだよ。君らと違って、僕らに与えられた時間は有限だからね。迷っていては成せない一局がある。そういう意味では、君の部下の方が君のいう正解というものをわかっているんじゃないのかな。戦いに、迷いは不要だ。その姿勢こそが、正しい人間の正しいあり方だ。だから君の部下と女神アテナの聖闘士たちは死力を尽くして戦った。それぞれが信ずる、正しい正義のために、迷いなく。――とても正しい行いだ」
 言葉をなくしたポセイドンに、アルバーはそれでも続ける。
「君は友人だった。だから最後のよしみとして、人間である僕の得た答えを教えてあげるよ。正義なんていうものは、どうしたって相対的なものなんだ。絶対的なんてことは、決してありえない。――悪もまた、然り」
 もう一度、ポセイドンは首を振る。やれやれとでも言いたげな動作は、今度は人間を哀れむものだ。
「だから、君が悪に見えるのも当然だと? ――愚かだな、どこまでも。そうして、自ら汚名を着るか」
 アルバーはもう答えなかった。ただ静かに笑って、窓の外を見る。

 ***

 対岸の小島は炎に包まれ、もうもうと煙を上げていた。
 その上空には、赤い機体(エピオン)がある。自ら発する青白いバーニアと下からの赤い光に照らされて、神々しくも禍々しくも見える。
 自ら生み出した惨状を無表情に眺め下ろしていたエピオンは、やがて無傷で存在し続ける隣の島へと機体を向けた。
 上空での戦闘が収まった今、聖闘士と海闘士が展開していた防衛網はない。ただ無防備な館が、エピオンの搭乗者には見えているだけだろう。
 ゆっくりと館に狙いを定めると、エピオンの背後のバーニアが突然出力を上げた。空気を切り裂き、特攻でもかけるかのような速度で突っ込んでいく。
 一度解除された防衛ラインが回復されるよりも速く、エピオンは洋館の真上に辿り着いた。
 既に抜いてあったビームソードを、上段に振りかざす。ジェネレーターに直結している高出力のエネルギーが収束して剣の形を成したそれは、暴力的な光量をもって周囲の空気をプラズマ化する。

 ***

「それが、君の選択なのか……
 寂しげに、とても寂しげにアルバーはつぶやいた。
 だがその顔にどこか安堵したような笑みが浮かんでいるのを、ポセイドンは見た。
「そうだね。君は、それでいい。それでいいんだ……」
 一人で納得している。先ほどポセイドンに説教をしていた人物とは、とても思えない。
「そうやって戦いを放棄するのか、アルバー。逃げる理由を、君は模索している。あの という娘は、その答えか」
「……やっぱり神様なんだね、ジュリアン。僕なんかに言われるまでもなく、なんでもわかっているじゃないか」
 狂っているのかと。ポセイドンは思う。彼は、狂っているのではないかと。
 だが、どこまでも正気なのはその目を見れば明らかだった。
「さよなら、ジュリアン。君と語らえた時間は、本当に楽しかったよ。君という神がもたらした、まさに奇跡のような時間だった。ありがとう」
 くるりと背を向け、アルバーは去っていく。ポセイドンはその背に聞いた。
「このままなら、我々は次の瞬間にでも死ぬだろう。そういう意味での別れの言葉か?」
「違うよ。僕たちは死なない。彼が、 を止めてくれる」
 少しだけ振り返り、アルバーは外の光芒に目を細める。
「双子座(ジェミニ)のカノンと言ったっけ? 彼が、止めるよ」
 じゃあ、と手を振り、今度こそアルバーは振り向かずに歩いていく。ドアを開けた。
「最後まで無礼な人間だ。――私の方こそ、楽しかった」
 扉が閉まりきる前に、言えたはずだ。
 ポセイドンはもう二度と会うことのないだろう人間へ、別れを告げた。

「……あのまま行かせてしまうとは、思いませんでした」
 立ち尽くす背に声がかかる。優しい言葉だった。振り返らずに、ポセイドンは笑う。
「異世界の人間というのは、なぜこうも忘れ得ぬ者が多いのだろうな。アテナ、君にとってのリリーナとは、やはりそういった存在だったのかい?」
 そうですね、と女神も静かに笑った気配がした。
「脆弱かと思えば、驚くほど強い。浅慮のように見えて、私たちとはまた違う視点から何もかもを考えている――すべての予測を裏切って、私を飽きさせない。目を離せませんでした。どうしたって、惹かれてしまいます」
 なかなか面白い答えだ。ポセイドンはフッと声を上げて笑う。
「なるほど。移り気な私達(オリュンポス神)にはふさわしい遊び相手というわけか。人でありながら、我らの智が、力が及ばない。一筋縄ではいかない相手をこそ、我らは愛してやまない。まったく、困った性癖だ」
「それだけ私達は、寂しい存在なのでしょう」

 ***

 噴射され続けるバーニアの起こす気流と、プラズマ化した大気のうねり。それらの発する熱と、引き起こされる空気の対流。
 すさまじい熱と暴風に支配されたそこは、とてもまともに立っていられるような場所ではなかった。
 小宇宙を高めることでそれらの脅威を打ち消して、カノンは少しでもエピオンの近くに行くことを試みる。
 屋敷の斜め上方でビームソードを構えた姿勢のまま滞空しているエピオンに対峙するように、カノンは屋根の上で両手を広げた。
!」
 叫ぶ。この状況で声が届くとは思っていない。それでもそうしないわけにはいかなかった。
 頼まれたのだ――止めてくれと。
 約束した。反故にするわけには、断じていかない。
 だから声を張り上げる。他に方法を思いつかなかった。
! もういい、やめるんだ! お前の敵は、もういない! だからもう――」
 万感の思いを込めて、カノンは叫んだ。

Las Fallas 09 END


2010/02/09


※誤字脱字等のご連絡、その他ご用の際はお手数ですが拍手コメントか右のメッセージフォームからお願い致します。