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Side-S:12章 Las Fallas 10 (12章最終話)


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(だからもう、戦わなくてもいいんだ)

  は顔を上げた。声が、聞こえたような気がした。
 もうなにがなんだかわからない。また、幻覚だろうか。きっとそうだ。それとも、もう死んでしまったんだろうか?
 頭が痛かったのだ。体中が痛かったのに。それも、いつしか消えた。何の感覚もない手が、グリップだけを握っている。それだけはわかっていた。
 死んでしまったのに、手だけは武器を放さなかったんだ。きっと。だから死んでも戦い続けている。終わらない。
 ――終わらない。
 絶望するって、こういうことなのかな。でも、おかしい。 はくつくつと笑う。死んでしまったのに、絶望できるなんて――。
 笑った拍子に、口の中に何かが入り込んだ。塩辛い。
「涙……?」
 感覚がある。まだ、ある。涙を流す目だってある。
 死んでいない。まだ……生きている。
 そう気づいた瞬間、体中が暖かいもので包まれた気がした。なにか、とてもあたたかいもの。
 ふわりとにおいがする。どう表現したらいいのかわからないけれど、いいにおいだと思う。香水などのよい香りではないけれど、どこか懐かしくて、安心できる。とても好きなにおい。
「カノン……」
 口から自然にその名前が零れた。
「カノン」
 もう一度、今度ははっきりと意識しながら発声する。
 思い出した。そう。これは、カノンに触れたときに感じる、あの感覚。
 出撃の前にもらったぬくもり。
 ――勇気を。
 もらったはずではなかったか。
 そして、頼んだのだ。もしもの場合は、止めて欲しいと。だからカノンは、そうしてくれている。
「カノン!」
 叫ぶ。聞こえていなくてもよかった。ただ呼びたかった。そうすることで、システムに溶かされそうになっていた大事なものを取り戻すことができる。直感だった。
 コクピットが光で溢れた。モニターに外の様子が映る。
 幾重にも張り巡らせた小宇宙の障壁の中でもなお、豪奢な金髪を暴風に弄ばれながら、エピオンの―― の方へ手を差しのばしているカノンが確認できた。
 その手を取りたい。それは大きくて、あたたかい。 は知っている。だから切望した。
 そのためには、ビームソード(こんなもの)なんて持っていてはいけない。
  を取り込み、意のままに操ろうとするのはアルバーやバルツァーたちだけではない。このエピオンだって、同じだ。
 ――ならば、ここから抜け出さなければ。
 グリップに張り付いたような手をなんとか引きはがし、身体をいましめるハーネスを乱暴に取り払う。ヘルメットを脱ぎ捨てた。身体の各部が再び痛み出したが、構わなかった。グリップ周りのキーを叩く。次々とスイッチをオフにした。
 ビームソード格納――確認。ヒートロッド、通電終了。バーニア減衰、機体を地上に降下――着地。
 ハッチ、解放。

 ***

「おい、どうするんだ!」
 たまりかねて声を上げたのは海将軍だった。
 先ほどまでのように防ぐこともままならない。声を上げたバイアンにはもはや止める手立てはなく、クリシュナに至っては月光と白炎を照り返す槍を赤い悪魔に向けている。
はいったいどうしてしまったというのだ……あそこにはアテナがいらっしゃるとわかっているのだろうに」
 ぎりりと歯を食いしばりながら、アイオリアが小宇宙を高めた拳を抑える。 が少しでもあの機体の腕を振り下ろせば、次の瞬間には光速の衝撃が繰り出せるように。
 同じように聖剣を構えたシュラがぽつりと零した。
「未来とやらが、あれなのか……」
 館を挟んで反対側にいる彼らからは、エピオンの放つ白光のせいで館は黒くしか見えない。直視しにくく輪郭もわからない。灼かれそうになる目に頼るのをやめ、動きを感じ取ろうと意識を研ぎ澄ませた。
 すると、聞こえた。――なにか叫びのようなもの。
 同時に小宇宙が解放される。この場の誰もが知っている小宇宙。
 ――決して攻撃的ではない。
「カノン――!?」
 ムウが見上げる。目を眇めて。エピオンの近くに、それを感じた。
 包み込むかのような。それでいて、引き寄せるように強引な。
「何をする気だ、シードラゴン……」
 つぶやくバイアンの隣で、クリシュナが槍を下ろす。
「シードラゴンの小宇宙が、チャクラの光の濁りを祓った」
 その一言で、戦士達はそれぞれ拳を下ろした。

 ***

 エピオンからいきなり魂が抜けたかのように見えた。
 カノンは目を見張る。
 大気を灼いていたビームソードが消失し、赤く輝いていたヒートロッドから輝きが失せる。青白い炎が小さくなり、重力に引かれるままに地面に落ちる。
 ずんと重い音と振動が館を震わせ、強化ガラス製の窓がびりびりと音を立てた。少なくはない数の屋根瓦が落下して、足場が悪くなる。
 そんなところにあえて留まろうとはせず、カノンは膝をついたエピオンの元へ飛び降りる。急速に力を失った機体を見上げた。
 まるで命そのものが尽きたかのように両目(カメラアイ)の光が落ちる。胸部のハッチが開いた。
「―― !」
 ふらりと現れた。青いドレス、夜目に黒い髪。見間違えようがない。
 両腕で自分の身体を抱きしめるようにしている。足許がまるでおぼついていない。うつむいた顔は髪に隠されて見えなかった。
!」
 もう一度呼びかけた。果たして は緩慢な動作で顔を上げる。頬に一筋、月明かりを受けて光るものがある。
「……カノン……」
 細い声が聞こえた。次の瞬間、身体がぐらりと傾ぐ。
 カノンは地を蹴った。落下しきる前に、 の身体を受け止める。着地の時に呻き声が聞こえた。
、どうした?」
 身体を抱き起こしてやった。すると はまた呻いて、前のめりになる。口に手を当てて咳き込んだ。
「いったい何があった?」
 背中をさすってやりながら、カノンは低い声で問い質す。口元から放した の手には、少量ながらも血がついていた。
 だが、 は答えなかった。答えられなかったのかもしれない。咳が治まると胸に手を当て、屈み込んでしまった。小さい声が聞こえる。
「痛い……」
 いつからこの状態だったのかはわからないが、この身体でよくもあれほどモビルスーツを操ることがができていたものだ。
 カノンは先程のエピオンの動きを思い出す。
 敵機の速度を明らかに凌駕していた。その速度を維持したまま急旋回やら上昇、降下を繰り返せば、身体に負担がかかって当然だ。それも、この様子では相当の負荷だったはずだ。そもそもゼロシステムとはそういうものなのだ。あらゆるデータを計算しつくすくせに、搭乗者の生命だけはまるで考慮されない。
「ゼロシステムに、ずいぶん振り回されたようだな」
 事実を指摘しただけで、他意はなかった。だが はそうは受け取らなかった。唇が白くなるほど噛み締める。
「ごめんなさい……迷惑をかけて」
 消え入りそうな声での謝罪。別にそんなものを求めたわけではなかった。カノンは を上向かせ、抱え直す。
「未来とやらは、見えたのか」
 そんなことを尋ねたのは、本意ではない。聞こえてしまったのだ。背後から近づいてくる足音を。それならば、先に訊いておきたかった。
 足音はカノンの数歩後ろで止まる。カノンの肩にもたれかかっている にも、その姿は見えているはずだ。
 その証拠に は立ち上がろうとした。動くたびに息を詰める。そんな に眉をきつくしかめながらも、カノンは手を貸してやる。
 カノンに支えられながらだったが、それでも は立った。無言で佇むアルバーに向かい合う。
「――私には、あなたとは同じ道は見えなかった」
 はっきりとした拒絶の言葉。だがアルバーは落胆した様子もなく、微笑んでさえ見せた。
「そうだろうね」
「でも……あなたが言うように、未来が見えたわけでもない。エピオンは、何も教えてなんてくれなかった」
 アルバーは、それには首を振って答えた。
「そんなことはないと思うよ。答えを、君がそうとは自覚しなかっただけだ。どちらにしても――」
 言葉を切った。アルバーには、言えないのだ。 にはわかった。だから、自分から言う。
「あなたと私は、一緒には行けない――道はもう、別れているわ、アルバー」
 さよなら、と。
 囁くような声をどんな顔をして出したのか、カノンは見なかった。見たくもなかった。
  の言葉が終わるのを待って、カノンは を再び抱きかかえる。自力で歩くのは無理だ。 の代わりに、カノンは歩く。横をすり抜け、背を向けた。
 遠ざかる。エピオンから――アルバーから。
 さよなら、と。きっぱりした声が聞こえたが、振り返らなかった。 も、動こうとはしなかったからだ。
 やがて停止していたモーターの稼働音が再び聞こえ、バーニアが轟音を上げた。強い風が舞い上がり、それでやっと はエピオンへと目を向ける。カノンも振り返る。その姿が、 にもよく見えるように。

 エピオンが夜空に消える。

 見届けて、 は眠りに落ちるように唐突に意識を失った。
 そっと片膝を地に着け、カノンは片腕で を抱える。空いた片手で頬に残る涙の痕を、指先で拭いてやった。丁寧に。いつまでもそんな顔をさせておくのはしのびなかった。
……結局、なにを見た?」
 訊いても当然答えなどない。それでも、口にせずにはいられなかった。
 動かない唇にも血が滲んでいる。先ほど咳き込んだときのものかと思い、軽く指の腹で擦って、違うと気づいた。噛み締めたときに切れたのだろう。
 それほど、何が悔しかったというのか。
 システムに翻弄されたことか。それとも、見せられた未来が?
 だが、そうなることは初めからわかっていたことのはずだ。だからこそ はあらかじめ、暴走した場合のことをカノンに託し、それをカノンは受け入れた。
 そしてシステムに弄ばれながらも、当初の目的――ブリュッセル攻撃の阻止――は見事果たした。成果としては、決して悪くはない。
 それなのに、 は不満なのだ。唇が切れるくらい噛み締めるほどに。
 なにが悔しい? なにを堪えている? なにも見てはいないと。アルバーにさえそう言い切った。
 そうやって、一人でなにを抱え込むつもりなのか。なにもかもを、抱え込んでしまうのか。――ひとりで。ひとりきりで。
 光の剣(ビームソード)を振りかざしていたエピオンと対峙したとき、カノンは感じていた。戦わなければという、悲痛なまでの の意識を。
 既にすべてのモビルスーツを一人で墜としてなお、あのときの は、たしかにまだ戦うつもりだったのだ。
 敵、と。叫んでいたように思う。敵とはなんだろう。
 思索しながら、いまだ力なく投げ出されたままの膝裏に手を差し込み、カノンは を抱え直す。立ち上がった。何の造作もない。
 アルバーの言葉を反芻する。腕の中の をまじまじと凝視する。
 こんなにも軽くて小さい存在でしかない を、何か大きなもののように仰々しく祭り上げようとする輩がいるのは、やはり信じられなかった。いくら偉大だった母親を持ったとはいえ、 自身にはなんの咎もないというのに。それでもそのせいで、幼い頃から何度も命を狙われ、または利用されようとしてきた。
 恐らくは、それらすべてが敵なのだ。カノンは思う。生命を脅かし、弄ぼうとするものすべてが、 の敵。それらすべてを排除することが、 にとっての戦いなのだ。
「だがそれは、終わりのない戦いだぞ、
 意識のない に語りかけても仕方がないと、わかっている。それでも言いたかった。
「お前の敵とは、お前自身の運命だ。生きている限り、終わりはない」
 誰にも、何も言わずにこの先も一人でそれを抱え続けていくつもりなのだとしたら、それはあまりにも気の毒な人生だ。カノンですらそう思うのだから、その哀れさときたら相当だ。
 アルバーは、それに気づいて手を差し延べていた。そのことだけはカノンも評価する。その思いやりだけは。
 守りたいと言っていたのだ。あの地下格納庫で、アルバーは確かにそう言っていた。君もそうだろうと聞かれた。答えはしなかったが、その通りだった。
  を守ること。それはそもそもカノンにとっては義務だったのだ。 がアテナに初めて謁見したときからの話だ。女神アテナが直々に、監視という名目の裏に潜ませた至上命令。 本人には気づかれないように、小宇宙で直接カノンに語りかけたほどに内々の。
 主命である以上、それがなぜかはカノンの忖度するところではなかったし、それ以前に疑問を持つような内容の命令でもなかった。むしろそのように持って行ったのは、他ならぬカノン自身だ。アテナもそれをわかっていたのだと思う。だからカノンが命じられた。
 今ではすっかりそれが当たり前になってしまった。命令が撤回されたとしても、カノンは当の から拒否されない限りこの立場をとり続けるのに違いなかった。
 恐らく、アルバーもカノンと同じように考えたのだ。それがどれほど昔のことかはわからない。だが、ずっとそう思い、それを形にすべく行動してきた。だが問題は、その方法が間違っていることだ。
 いや、とカノンはひとり苦笑する。自分だって、アルバーのことをどうこう言えない。間違っていない自信などない。
  をエピオンで送り出してしまった後、カノンはアルバーに言った。お前はなにもわかっていない、と。カノンだって、 の内実をすべてわかっているわけではないというのに。
 あんなことを言ってしまったのは、ついムキになってしまったからだ。自覚している。柄でもなく、年甲斐もない。
 それでも確かにあのときカノンは、自分の知らない部分の を知っているあの男に対してなにがしかの対抗心を募らせた。
 馬鹿な言動をしたものだと、今更ながら思う。
 結局、あのアルバーという奴も、カノンも、振り回されているのだ。何も言わない に。
 腕の中で安らかとはほど遠い表情で瞳を閉ざしている を見下ろし、カノンは小さく毒づいた。
「周りが全部敵だったとしても、一人きりで生きていくことなんて、絶対にできないんだ。――俺は、俺だけは敵じゃない。お前の敵にはならない。早く気づけ、この馬鹿が」
 足を踏み出した拍子に、上向きだった の頭がかくんと揺れて動く。カノン自身の胸に隠れて、顔が見えなくなった。

「だからもう、一人で戦わなくてもいいんだ――

Las Fallas 10 END



後書きです。 ようやく終わりました。
内容的にもだんだんきつくなってきたのではないかと思います。
が。
次章はさらにきついかも(笑)
伏線回収期に入ってきてます。

というわけで次は13章:Burst into flames(前編)。全9話。
……サブタイトルのセンスが欲しいですorz
意味は結構そのまんまです。
前編、としてあるのは14章が後編だからです(←あたりまえ)
『Burst into flames』の意味に二つの事柄を掛けたのですが、例によって例のごとく長くなってしまったので、一つずつ分けました(←意味なし)

……それにしてもどこかにいいサブタイトル、落ちてないかな……

2010/02/09


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