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Side-S:14章 Burst into flames 10


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 前代未聞だった。
 現在における、すべての状況のことである。未聞どころか、珍事と言ってもいい。

 数千年の長きにわたって相容れぬ存在であった二者――すなわち地上の要、女神アテナの擁する聖域と、七つの大海を治める海皇ポセイドンが率いる海界――が、連携して同事に当たっている。それもきわめて緊密に。
 それ自体は、決して悪いことではない。むしろこれまでの敵対関係が改善されることはまことに喜ばしい。
 事実、共闘の過程において両者は各々の得意とするところと不得手となる部分を互いに補完しあうことの有用性を理解しはじめていた。それがそのまま恒久的な相互理解へと繋がるのならば、これほど手短な和解の手順もない。
 地上と海。
 この両者が真に手を取り合うことができたならば、他の勢力のこの二界への侵攻は格段に難しくなるだろう。理想的な平和への道程といえた。
 この過程を辿ることができただけでも、まさに前代未聞の慶事だ。
 だがこの事態を喜ぶものは、残念ながら一人もいない。この状況を作り出している原因の重篤さの所為である。

 原因。
 こちらはそれこそ珍事中の珍事と言うべきだろう。
 存在さえ怪しい異世界なるところからやってきた未知の脅威が、種々の神々の坐すこの世界に蔓延っているというのだから相当だ。
 だが、どうやらこちらは前代未聞というわけではないようで、神々は泰然と構えているように見えて、なかなか戦々恐々と脅威の動向を気にかけている。
 そんな異様さの方がむしろ未曾有の事態かもしれない。
 しかも悪いことに、その脅威は自らの存在をついに全世界に向かって誇示することを選んだ。潜伏の期間は終わったということらしい。
 人知れず神々だけがその存在を記憶しつづけてきた時代が、唐突に終わったのだ。

【NEOS・COSMOS】

 世界を変えつつあるその脅威は、自らをそう呼称した。
 世界中のマスメディアを巧みに利用するその手法は、下手に少数の大国を相手にパフォーマンスを行うよりはよほど的確で効果的だった。
 夏のある夜にごく一部の人間達――政財界の重鎮達――だけにその存在を顕示した彼らの名は、その時はとりあえず一般の衆目からは秘匿されたのだ。扱いは慎重にすべきという、主に当事者だった一部の上層階級の思惑によって。
 そんな彼らをあざ笑うかのごとく、【NEOS・COSMOS】は明確かつ、一テロ組織とは思えないほどに余裕の溢れる声明を行動の事前に堂々と通告し、それをやってのけた。――すなわち、事前通告を伴った武力蜂起を各地で起こしたのである。国際社会の目の前に、未知の脅威が突如として提示された格好となった。
 衝撃的なマスメディアへの露出によってその名は瞬く間に世界中に知れ渡ることとなり、世界の勢力図は、信じられないほどの短期間に塗り替えられた。
 隠蔽された、エーゲ海での謎の戦闘からわずか3週間後のことだった。

 ――まさに前代未聞の非常事態である。

 事態への対応について紛糾を続ける国連と、一部の大国の足並みは揃いきらず、軍事行動も最大の効果を発揮できないでいる。
 そんな中、神々の僕たる戦士たちはそれぞれの持てる力を駆使して、脅威の排除に専念していた。もとより彼らは超国家・超法規的集団であり、こんな事態には総意が纏まるまで動けない国連などの機関よりはよほど有用だ。
 彼らの存在を知る人々の集う国連もまた、その行動を黙認するという形で暗黙の共闘態勢に入っている。
 表の世界と、裏の世界。
 それら二つがこのように密接に関わる事態も、前代未聞以外のなにものでもない。
 とにかくなにもかもが空前の出来事だった。


 世界中がどことなく浮き足立ったまま時だけは着々と過ぎ、季節だけは何事もなかったかのようにその歩みを進める。
 世界を巻き込んだ大騒動の勃発から、二ヶ月が過ぎようとしていた。


 ***


 突然窓を叩き出した雨の音で、 はひとときのまどろみの中から引きずりだされた。そっと立ち上がり、肩にかかっていた毛布を引きずって窓辺に立つ。灰色に滲んだ空を見上げた。
 ――季節が変わるのだろうか。
 このところ、雨になることが多くなってきた。気温も徐々に肌寒さを増し、 がこの世界にやってきたころの寒さを思い出させた。
  がやってきたのは冬だった。
 この地の特性上、雪があるわけではなく、また四季というものを実感としては理解していなかった は当初、その季節がいつであるかなどまったく気づかずまた関心も皆無だった。記号としての月の名前を確認しただけで、あれは冬であったのだと思い至るようになったのは、春を過ぎて夏に差し掛かったころだっただろうか。
 そして今は秋へと季節は移り進んでいる。ずいぶん長いこと、この世界に逗留してしまった。このままもう少し頑張れば、四季のすべてを体験することができるだろう。
 ――状況が許せば、だが。
 どんよりと泣いている空から視線を逸らし、 はぶるりと震える。引きずってきていた毛布をかぶりなおした。急な雨で人通りの失せた通りを眺めていると、なぜだか寒さが身にしみた。
 ここは教皇宮どころか聖域ですらなく、アテネ市街にあるオフィスの一室だ。この世界の情報網――主に電子網だが――を調べる必要がある場合によく利用する。本来ならば聖域の間諜用の設備(セーフハウス)なのだが、教皇の計らいによって使用を許可されていた。 の01にもネットワーク接続機能はあるが、インターフェイスの違いによる使いにくさと、それによって生ずる処理速度の差を鑑みて、しばしばここを使用させてもらっている。
 ここ数日、 とカノンはここで時間を費やしていた。これまでの作戦遂行による成果の評価と、不審な不明情報の確認がその主な目的である。
 ろくに横にもならずにかなり長い間ディスプレイに向かっていたのだが、いつの間にかデスクに突っ伏して眠ってしまっていたらしい。そこを雨音で叩き起こされたというわけだ。
 そういえば。
  はくるまっている毛布に目を向ける。ただの居眠りだった。勿論、毛布など使って寝たつもりはない。ではカノンがかけてくれたのだろうか。
 振り返り、そのカノンの姿を探す。すぐに見つかった。オフィスの体裁をとっている都合上、はずせない応接セットのソファに寝転んでいる。デスクで居眠りをしてしまった とは違い、きちんと横になって仮眠を取るつもりだったのだろう。しかしオフィスに毛布などそんなに何枚もあるわけがない。 に毛布を譲ってしまったので、なにも掛けずに眠ってしまっている。長身はソファの長さに収まりきらず、足だけがにょっきりと端からはみ出ていた。
  はそっと近づいた。すぐそばで、声をかけずにかたわらに膝をつく。寝顔をのぞき込み、くすりと笑った。余程深く眠ってしまっているのか、まったく目が覚める様子はない。身体に巻き付けていた毛布を解いた。カノンに返す。静かに掛けてやったのは確かだが、それでも微動だにしない。聖闘士がこんなことで大丈夫なのだろうかと思わず は心配になったが、すぐに思い直した。
 ここは聖域の出張所で、簡単ながらも結界が施してある上に最新のセキュリティシステムも導入してある。何より今、ここには とカノンの二人きりしかいないのだ。警戒するものなどなにもない。休めるときに休んでおくのは、むしろ戦士として当たり前の心得だ。
 膝をついたままの体勢で、 はついカノンの寝顔に見入ってしまった。希少な経験だ。ここまで無防備なカノンなど、そうそう拝めるものではない。――他にこんな顔を見たものは、兄のサガくらいしかいないのではないだろうか。
 そう思うと、なにやら嬉しくなった。じっと眺める。こんなに間近でしげしげと顔を見たのは、意外にも初めてかもしれない。
 悔しいほどに端正な貌をしている。もともと思ってはいたが、改めて思った。
 詳細を列挙すれば枚挙に暇がないほどに、兎に角どこもかしこも整っている。こんな顔がもう一人分あるだなんて何かの冗談のようだと最初はそう思ったこともあったが、それは一番最初だけだった。今ではまったく違う感想しか出てこない。
 サガとカノンは確かによく似た双子だが、見慣れればその違いは一目瞭然だった。見間違えるなんてことはないし、ましてや同一視などとてもできない。むしろどうやったら取り違えることができるのか聞きたいくらいだ。
 穏やかな寝息を聞きながら、 は閉じた瞼に隠された瞳の色を思い浮かべる。それはよく晴れた日の海の色。碧がかった青い目を、 は殊の外気に入っていた。時に厳しく、時にやさしく。それがどんな光をたたえていようと、まっすぐに に向けられれば、それだけで満足する。
 馬鹿みたい。 は思う。そんなことで満足したり、こんなふうにこっそりと寝顔を眺めて喜んでいる自分は、本当に馬鹿だ。こんなにのぼせ上がって、いったいどうするの? どんなに思いを募らせようと、どうしようもないというのに。
 ――それなのに、なんで私はこんなことをしているの?
 ソファの端から流れ落ちる豪奢な金髪をそっと手に取り、自嘲した。そっと口元に当てて、開放する。まばゆい光がまた元の位置に零れ落ちていく様を、目を細めて眺める。まだ目を覚まさない。
 ああ、なんで早く目を開けてくれないの? ――早く目を覚まして。
 私を止めて。
 心とは裏腹に、 はカノンに近づこうとする自分を止められない。そして。

 額に、口づける。

 前髪が鼻に当たって、カノンの香りが鼻腔をくすぐる。胸がいっぱいになる。――痺れたような頭で、願う。
 早く目を覚まして。何をするんだって、怒って。
 心から思っているのに、祈りは通じない。身動きひとつしてくれない。
 一度は離した唇を再び寄せる。もう一度額に。次には頬に。伸びた髭がちくりと痛い。でもそれすらいとおしい。
 ああもう。どうして起きてくれないの? 早く私を止めて。でないと、私――
 薄く開いた唇から、ほんのわずかに呼気が漏れている。それを自分の唇で感じながら、 はついに瞳を閉じた。

 熱く、柔らかな感触。

 くちびるの感覚だけに支配されて、頭の中が真っ白になる。
 このまま時が止まればいいのに。心からそう思った。
 このまま、うるさすぎる心臓の鼓動も止まってしまえばいいのに。


 ***


 目は覚めたが、意識は覚醒しきらないままカノンはむくりと起き上がった。無造作に毛布を押しやる。
「………… ?」
 名を呼んだのは、近くにいると思ったからだ。カノンが仮眠を取る前に、デスクで先に沈没してしまった がもう起きたのだと思った。
 だがまだ眠い目を擦りつつ、答えを待っても返答がない。それでようやく本格的に目が覚めた。
?」
 立ち上がり、部屋を見回す。――いない。
 ふと自分の足もとに視線を戻して、気づいた。落ちているのは、 に掛けてやったはずの毛布だった。
 かすかに の残り香がする。それですぐ傍にいると勘違いしたのだと気づいた。
 自分より先に起きたのは確からしい。そして今、ここにはいない。すぐに戻ってくるだろう。そう決めつけて、カノンはまだぼんやりしている自分のためにコーヒーを淹れに向かった。

 しばらく待ったが、結局 は戻ってこない。
 探しに行った方がいいだろうかとカノンが思い始めた頃、窓の外に閃光が見えた。
「雷か……」
 そういえば は雷が苦手だった。
「まさかまた動けなくなってるんじゃないだろうな」
 いつぞや聖域でそんなところを同僚に保護されたという情けない前例を思い出し、カノンは顔をしかめる。小宇宙をわずかに高めて、意識を凝らす。気配なら、とっくに熟知している。そう遠くへ行っていなければ、探すのはそう難しいことでもない。
 案の定、すぐに見つかった。
「……屋上?」
 馬鹿かあいつはと毒づきながら、カノンはタオルを慌てて探す。ひっつかんで、急いで部屋を出た。


 ***


 意外と温かい雨だ。
 降りが激しさを増す中で、 は負け惜しみでなくそう思った。
 カノンが結局目を覚まさなかったのをいいことに、 は逃げ出してしまったのだ。のぼせた頭を冷やすには、もってこいだった。でもまだ足りない。もっと冷たくなくては。
 少し触れただけの唇もまだ熱い。 は顔を上向かせる。地球の熱は、なかなか を冷ましてくれそうにない。困った。
 開いたままの目が閃光を捉える。少し遅れて、腹の底に音が響く。どおんと低く、 の恐怖を呼び覚ます。
 それでも は動かない。動けないわけでは、決してない。心の隅まで、これで少しは冷え切ればいい。逃げ出したい衝動を必死に堪えて、雷鳴を待ち受ける。屋上の片隅で、柵を掴んで。歯を食いしばりながら。


 ***


 やっぱりだ。
 閉まりきっていなかったドアを乱暴に押し開けて、カノンは外へ出た。豪雨とまではいかないが、それなりに激しく降りしきる雨の中で、 がしゃがみ込んでいる。
 よりにもよって一番端っこで、柵にしがみつきながら呆然と空を見上げていた。
! なにをしてる! この馬鹿が!」
 怒鳴りつつ駆け寄る。その拍子に雷鳴も一緒に鳴り響いて、 がなにに脅えて肩をすくめたのかわからなかった。
 柵から両手を引きはがし、カノンはとりあえず を抱えて入り口に戻る。大人しくされるがままになっていたかのように見えた だったが、どさりと床に下ろしてやったところで、なにやら不愉快そうにカノンを見上げてきた。
「……もうちょっと丁寧に扱ってくれても良いんじゃないかしら? これじゃあまるで猫みたいじゃない」
「猫?」
 まさか文句を言われるとは。大いに憤慨して、カノンは手にしていたタオルを濡れた頭にこすりつけてやった。
「ならば、別に問題ないだろう。自力で高い木から下りられなくなった馬鹿猫と、大差ない」
 それこそずぶ濡れの猫を拭うように、がしがしと頭を拭いてやる。身を捩ってタオル攻撃から抜け出したところをひっつかまえて、今度は身体だ。さすがに頭のようには拭ってやるわけにもいかないので、タオルを巻き付けるにとどめておいた。濡れた衣服がぴったりと肌に張り付いてしまっている箇所すらある。いったいどれだけ雨を浴びていたというのか。
「まったく……」
 雷に脅えてはいないかと心配してきてやったのに、それ以前の問題だった。しかもどことなく迷惑そうだ。やれやれとカノンは溜息をつく。
 しかしこんな失礼な態度は、実は最近そう珍しくもないのだ。数ヶ月前に大喧嘩して以来、 はたまにこういった言動を取った。所謂女の我が儘という奴だろう。それだけカノンに心を開いたのだろうと思えば別に気になるほどのことでもない。いい加減慣れてきてはいるが、それでも多少は腹が立つ。腹いせに、濡れた頬をぴたぴたと叩いてやった。あまりに冷たくてびっくりする。
「なんだってこんなになるまで雨に当たってたんだ?」
「……クールダウンしたかったの」
 ぷいと顔を背けた を、カノンはまじまじと凝視してしまった。なにしろ頬の冷たさに驚いたばかりなのだ。
「十分冷えていると思うが」
「そうでもないわ」
 ちらりと横目で見上げてくる のまなざしには、どことなく恨みがましいものが含まれている――ような気がした。しかしそんな目で見られるような心当たりはない。気のせいだろうと思うことにして、カノンは立ち上がる。
「それ以上冷えたら風邪を引く。いい加減戻るぞ。着替えはあるのか?」
 カノンにつられて立ち上がりながら、 は素っ気なく返答した。
「風邪なんて引かないわ。大抵のウイルスなら、抗体がなくてもナノマシンが対応してくれるもの」
 つんと顎を逸らす に、カノンはおざなりに相槌を打ってやる。
「はいはいそうですか……じゃあそのまま、濡れっぱなしでいればいいさ」
 暗い屋上入り口前の踊り場から退去すべく、カノンは先に階段を降りる。次の踊り場から電灯がついていた。ふと意趣返しを思いつく。なんだかんだ言いながらも後をついて降りてくる を振り返った。
「そんな格好で明るいところに出たら、透けて見えるぞ」
 怯んだように立ち止まり、 は肩を震わせた。
「……先に行って!」
 ささやかなな勝利を噛み締め、カノンはうわーはははと爆笑しながら階下へ向かう。
 わざとらしい笑い声の反響する階段に、セクハラだわとか見たら許さないんだからとかなんとか、悔しそうな呪詛の声も控えめに加わったのだった。

Burst into flames 10 / To Be Continued


14章に入りました。
13章と同じタイトルの後編です。
というわけで、通し番号は13章からの続きとなります。
続きと言っても時間が2ヶ月ばかり飛んでいますので、冒頭をまるまる説明文で埋め尽くしてみました。
わかりにくかったらすみません。
今後のストーリー展開がこういう前提がないと成り立たない話なのですが、これを説明調にせず小説っぽくやると、それだけで2~3話消費してしまいそうだったので苦肉の策です。

13章でキャラクターの心情をそういう方面に誘導してみたので、あえて14章は冒頭から飛ばしているような表現にしてみました。
しょっぱなからコレというのは、要するに、いわゆるフラグだと考えていただいて結構かと(・∀・)
とりあえずそんなこんなで、14章です。
よろしくお付き合いいただければ幸いです。

2010/11/25


※誤字脱字等のご連絡、その他ご用の際はお手数ですが拍手コメントか右のメッセージフォームからお願い致します。