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Side-S:14章 Burst into flames 11


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 数日間の調査――諜報活動と言った方が的確だろう――を終えて、聖域に戻ったカノンと の表情は共に優れなかった。
 この頃は聖域でも常時わさわさと落ち着かない雰囲気が漂っていて、どことなく疲れた風情だったり負傷を抱えた人々の姿も珍しくはなかったが、そんな中でもこの日の二人の雰囲気は異様だった。
「悪い報せがあるようだな」
 戻った旨を伝えに向かっただけで、サガに先んじてそう言われてしまうほどに、カノンは深刻な面持ちをしていた。
「ああ。かなり悪い話だ」
 一度言葉を切って、カノンは居住まいを正す。
 ここは双児宮で、今はサガも教皇宮から戻ってきている。つまり深夜といってもいい時間である。後はもう休むだけ、面倒な話は明日にすれば良いという頃合だ。なのにカノンはあえて今、その話をするつもりのようだった。
 余程の事態かと身構えるサガに、カノンは予想通りの重々しさで告げた。
「できれば明日。無理でも2~3日中に、聖域と海界の上層部を集めて欲しい。できるか」
 現在の時刻を考えなくても急な話だった。サガは眉をひそめる。
「難しいが……やらねばならんのだろう?」
「ああ。頼む」
 言質を取ることだけが目的だったと見えて、カノンは早々に立ち去ろうとした。逃がすまいと、その背にサガは声を掛ける。
「理由は当然、聞かせてもらえるのだろうな?」
 果たして立ち止まり、カノンは半分だけ振り返った。わずかに視線を彷徨わせる。話して良いかどうかではなく、要点をまとめるために黙考したのだとサガにはわかった。黙って待つ。
「国連軍ではなく、我々を標的に想定したと思われる計画が浮上している。その対策を協議したい」
「――我々が標的だと? 聖闘士や海闘士が? そんな馬鹿なことが……」
 一笑に付そうとして、サガは失敗した。怒るでもなく淡々と語るカノンの様子には、むしろ鬼気迫るものがある。
「相手を端から甘く見るのは三下のやることだぞ、サガ。――奴らが聖域の存在を知っているのは確実だ。そして恐らく海界についてもだ。ジュリアン・ソロがポセイドンだということは既に組織の人間に知られているからな」
「…………」
「国連軍など、奴らにとってはたいした脅威ではない。物量差をものともとしない技術力を、奴らは備えているのだからな。実際のところ、そのやり方では応戦しにくい我々が一番の目障りだろう。聖域と海界の介入で、奴らが相当の被害を受けているのは事実だ」
 言葉には確かな裏付けを感じさせる自信がある。数日間、アテネ市内で間諜用のセーフハウスに籠もっていたのはこのためだったのか。サガはようやく理解した。後は行動あるのみと思われる現段階で、今更なにを嗅ぎ回っているのかと少しばかり不審に思っていたところだったのだ。
 納得できる理由があるのならば渋る必要はなかった。サガはもう不必要な質問はせずに承諾する。
「……明朝、すぐに教皇にその旨を奏上し、便宜を図ろう。だが本当に海界の者まで呼びつけなければならないような事態か? 嫌だと言っているわけではないが、彼らまで招聘するとなると、それなりに時間がかかるぞ」
 最後の言葉に、カノンはわずかに顔をしかめた。
「確かにな。奴らまで呼びつけるとなると、早くても明後日にはなってしまうだろうが……」
 ほんの少しの逡巡の後、カノンは迷いなく言い切った。
「呼んでくれ。外して進められるような話ではない」
 断固とした口調だった。サガは意外に思う。ここに はいないのだ。基本的に の行う作戦行動は、 が立案し、実行している。カノンはあくまでそのサポートに過ぎない。この招集も、 がカノンに頼んだものだろう。なのに に確認を取ろうともしない。意外と言うより、良いのだろうかと疑念が沸いた。
「それはお前の見解か? それとも の意見か?」
 質す。だがカノンはあっさりと問題を解消して見せた。
「これは俺の意見だ。そもそもこの件については初め、あの馬鹿は自力でどうにかしようなどととんでもなく馬鹿なことを考えていたようだったから、それは無茶と言うより無理だと説得した。ではどうしたらいいと思う?――なんて聞いてきたから、俺はこうすべきだと答えたのだ。そうしたら、確かにその方がいいかもしれないと言うのでな。だったら初めから俺にも意見を聞いておけば良いんだこの馬鹿めと、叱っておいたが……どうした?」
 なんだかだんだん愚痴になってきたなと思っていたのが、どうやら顔に出たらしい。サガはさっと表情を取り繕う。とりあえず一言だけ、兄として愚弟に忠告しておいてやることにした。
「あまりそんな汚い言葉と連呼するものではない。 はどう見たって賢い方だろう。いくらなんでも失礼だぞ」
「今更あいつに失礼もクソもあるか。馬鹿を馬鹿と言ってなにが悪い。大体ああいうのは賢い、ではなく、小賢しいと言うんだ」
 言葉だけを聞けばずいぶんな物言いだが、そう話す表情を見れば悪意などないことは丸わかりだ。――むしろ好意の裏返しと言ったところだろう。一種の惚気と言ってもいい。サガはやれやれと溜息をつく。いつぞやサガがカノンの への気持ちを指摘した際に見せた、まるで思春期の子供のような狼狽ぶりを思い出した。これはこれで子供じみた態度ではあるが、あのとき口にしていた類の見当違いの遠慮はなくなったと見える。
「……ずいぶんと打ち解けたようで何よりだ」
 本心から言ってやった。咄嗟に顔をしかめたカノンに反論の隙を与えず、サガは愚弟に背を向ける。これ以上惚気を聞かされるのは勘弁だった。
「依頼は確かに受けた。詳しい話はまた明朝にな」


 ***


 身体は張っていなくても、頭を使い続けるのも存外疲れるものだ。
 ゆっくり休んだはずなのに、思ったよりも疲労が抜けていない身体を は無理矢理起こした。
 数日ぶりの柔らかいベッド。それだけは満足だった。思えばこの部屋にもすっかり馴染んでしまった。
 上質の家具に清潔なリネン類。こんなに厚遇してもらっていることに気が引けるのは変わらないが、それでもありがたく使わせてもらっている。疲れを完全に癒すことはできていなくとも、こうした環境にいるだけでもストレスは激減する。本当にありがたかった。
 ぼんやりとそんなことを考えながら、時間を確認する。アラームをセットしておいた時間まではまだ一時間ほどあった。休めるうちに休んでおこう。そう自分に言い訳しながら、使い慣れたふかふかの枕にもう一度顔を埋める。そのまま瞳を閉じかけたところで、ドアがノックされた。乱暴とまではいかないが、素早く力強いその音は来訪者がカノンであることを告げていた。
 眠い頭でそう気づき、 は反射的に応えを返した。
「どうぞ」
 入室を許可したものの、なんとか再び身体を起こしただけである。往生際悪く枕を抱えて離さない に、入ってきたカノンは呆れ顔を隠さなかった。
「なんだ。まだ寝てたのか」
「まだって……まだ予定の時間には早いでしょう?」
 あくびを噛み殺しながらようやくベッドから降りる。まだ早朝といっていい時間だ。昨夜は戻ってすぐに休んだのだが、それほど長時間睡眠が取れたわけでもなかった。
 恨みがましくカノンを見れば、口ほどにすっきりとした顔はしていない。言ってやった。
「カノンだって、まだ眠そうじゃないの。……身支度だって、済んでないみたいね?」
 無精髭のままのカノンは上から下まで寝間着姿のままの をじろじろと見つめ、顎を撫でながらあっさりとカウンターを返してきた。
「……今のお前にだけは言われたくないわな」
「………………」
 憤慨のあまり、咄嗟に言い返すことができなかった。あまつさえにやりと笑われて、不本意なことこの上ない。あてこすったつもりだったが、切れが足りなかったらしい。眠たいせいか、出てくる言葉もぱっとしない自覚はある。だから閉口したのはそんな自分に対してだ。
「……じゃあすぐに着替えます。後ろを向いてて」
 カノンに八つ当たりしたいわけではなかったはずなのだが、どういうわけかずいぶん喧嘩腰の言葉が飛び出てしまった。
 さすがにカノンもぎょっとした顔をする。
「待て」
  自身驚いていたのだが、いまさら引くのも悔しい気がした。なにしろ一矢報いたのだから。くるりと背を向ける。顔を見られたくなかった。
「なにか急用があるんでしょう? そんなに時間が惜しいのなら、着替えながら聞きます。私なら構いませんから、どうぞ?」
 さすがに眠気は吹っ飛んでいる。構わないなどとつい言ってしまったが、構わないわけがない。さっさとカノンが折れてくれることを願いながら、 は寝間着に手をかける。
 大仰な溜息が聞こえた。やっと呆れてくれたかとほっと胸を撫で下ろそうとして―― は慌ててベッドの天蓋から降りるレースの影に隠れる羽目になった。
「――昨日の話の件だ」
 隠れたといっても、透けるレース一枚の話だ。こっそりと振り返ってみれば、一応後ろは向いてくれていた。そういえば、そう言ったのも だった。身から出た錆である。こうなったらもう仕方がない。あきらめた。さっさと済ますことにする。レースの後ろで、手早く寝間着を脱ぎ捨てる。
「昨日の?」
 焦りながら着替えを探していたら少しばかり上の空になってしまったようだ。話の内容を瞬時に把握することができなかった。聞き返せば、視界の端でいつもよりもぼさぼさ気味の金髪が頷く。
「例の、双方集合の上での輸送作戦の説明の件だ」
 ああ。 は得心する。すぐに眉をひそめた。
「もしかして、やっぱり無理だと却下されたの? ……じゃあすぐにでも回避策を……」
「早とちりするな」
 先ほどよりはよっぽど呆れたように、カノンはもう一度溜息をついた。
「逆だ、逆」
「逆?」
 意味がわからない。完全に手を止めて振り返れば、後ろを向いたままのカノンも頭の後ろに手を回して首を捻っている様子だった。
「聖域と海界の上層部――要は黄金聖闘士と、海将軍全員だな。招集に応じてくれるそうだ。しかも今日中に」
「え? ……昨日の今日で? 本当に?」
 信じられない。だって、時間がかかると言っていたのはカノンなのだ。ぽかんと聞き返せば、金髪の頭が頷いた。すぐに傾く。
「俺も信じられないんだが、本当だ。サガに話を通してからまだ半日も経っていないのだがな……どうなっているのやら」
 なにやら途方に暮れたような口ぶりだった。聖域と海界の両方に通じているカノンは自らの読みが外れたことが信じられないのだろう。
  はほっと息をつく。
「……まあ、良かったわ。それを報せに来てくれたのね? ありがとう。時間は?」
「さすがにすぐには無理だ。時間もまだ決まってはいないのだが、聖域(こちら)の受け入れ準備もある。夕方以降と言っていた」
「了解」
 答えて はくすりと笑った。後ろ向きの頭が揺れる。
「なんだ?」
「教えに来てくれたのはありがたいけど、でもそれなら、そんなに急ぐ話ではなかったのね? あんまり慌てているようだったから、悪い話かと思ったわ」
「……朝もこっぱやくから叩き起こされて、話を聞かされて、さっさと に教えてこいと部屋から追い出されたんだ。まったくあの愚兄ときたら、人の都合というものどう考えているんだ……」
 面白くなさそうな声に、 はまた笑った。
「私はもう起きていると思われていたのかしら。なんだか買いかぶってもらってしまったのね。――お疲れさま」
「それは皮肉か? ――まったく」
 ふうと溜息をついて、カノンは突然振り返る。 は咄嗟のことになんの反応もできなかった。
 カノンが固まる。息を呑んだ。
「………………」
 二人とも動作が止まっていたのは、ほんの数瞬のことだっただろう。だがわずかな間とはいえ、 は確実に――さらしてしまった。
 とんでもなく無防備な姿を。
 立ち直るのが早かったのはカノンだった。光速を体現できる聖闘士にとって、この瞬間はいったいどれほどの長さで知覚されるのだろうか。真っ白になった頭で、なぜか は冷静にそんなことを考えた。
「その……なんだ。……すまん」
 カノンが口元を抑えて、ぼそりとつぶやく。その声でようやく は我に返った。
「――――――!」
 脱ぎ捨てた寝間着をベッドの上からひったくる。身体を隠した。着替えはまだ見つからない。――というよりも、カノンの向こうにあるクローゼットに、わざわざ夕べ片付けてしまったことをやっと思い出した。
「さすがにもう終わっているとおも――」
「出て行って!」
「そんなに怒らんでも。大体おまえ、さっきは構わないと言って――」
「出・て・行って!」
 一言一言区切りながら発音する の憤りっぷりが、カノンはおかしくなってしまった。あまり見たことのない反応だった。
 思い起こせば、 は母親が政府要人という、それなりに上流家庭の娘なのだ。様々な教育や特殊な訓練は受けているようだが、逆に一般的な事柄に対する経験は不足しているだろうことは想像に難くない。
 対してカノンはそれなりに世間を見てきた、これでも立派な大人である。これまでの経験からすればこの程度など、それほど刺激的な風景でもない。
 それよりも普段見たことのない、すっかり動揺してしまっている今の の様子の方がよほど面白い。
 上気してうっすら色づいた頬。カノンを睨みつけながらも、どこか気まずげに逸らし気味になる瞳。身体を隠すために寝間着を握りしめた両手が細かく震えている様。――初々しさが感じられてなかなかに新鮮だ。
 カノンは薄く笑みを刷く。もう少し突っついてやったら、もっと面白いだろうか。
「なにを今更恥ずかしがることがある? 前には風呂の途中にだって入っただろう。それにここに来た頃、怪我の手当をするためにサガに脱がされたことだって……」
 言い切る前に枕が飛んできた。当たり前だがむざむざぶつかるはずもない。避けるでもなく、受け止める。
「なにをする――って、おい!」
 枕で視界を遮った隙に、 は枕の下に置いていた銃を構えていた。
「出て行って……今すぐに!」
「わかったわかった。――また後でな」
 仕方なくカノンは退散を決めた。さすがにからかいすぎたかと思う反面、この程度で騒がれたのは心外だった。
 意趣返しのつもりで部屋を出る直前、最後に一言付け加えてやった。
「もうちょっと肉付きがいい方が好みなんだがな」
 急いでドアを閉めたのは正解だった。何かががつんとぶつかる音がした。なにやら叫んでいる声も聞こえたような気がしたが、聞き取れなかったのを良いことに、カノンはそそくさとその場を離れたのだった。

Burst into flames 11 / To Be Continued


無理してこういう小ネタを入れいてると言うことは、つまりはそういうことなのです。
というわけで次回からはしばらくシリアス展開になります。
前回、今回の夢らしいノリ(←)はしばらくお預けです。

2010/12/10


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