test

Attention

ここは夢小説(名前変換小説)/イラストの非公認二次創作ブログです。
二次創作、夢小説等の言葉や意味をご存知でない方、もしくは嫌悪感を抱かれる方は閲覧なさらないようご注意ください。
また通常の二次創作と違い、管理人が勝手に創作したキャラクターやその設定なども存在します。そういった原作から逸脱した部分に対して嫌悪感のある方も閲覧なさいませんようお願い致します。
この警告を無視して内容をご覧になってからの苦情は一切受け付けません。
尚、取り扱い作品の原作者、出版社、製作会社等との関係は全くありません。
また、当ブログ上の作品については著作権を一切放棄しておりません。
無断転載、引用等は固くお断り致します。
※JavaScriptオフ環境では非表示になる箇所があります。
※初めてお越しの方はの【INFORMATION】をご一読ください。
 メインコンテンツの巡り方の説明があります。

更新履歴 【絶賛更新停滞中】

※JavaScriptオフ時・Twitterサーバーダウン時非表示 / 詳細別窓表示

Side-S:17章 Furlough 2


※ 記事タイトルクリックで本文表示 ↑ ※


 静かな夜だった。
 豪邸と言ってもいい住宅が立ち並ぶこの辺りは、日付も変わる頃になってしまえば人通りも殆どない。定間隔で地面から伸びている街灯は白い光を撒き散らし、深夜だというのに道が闇に覆いつくされているような場所もほぼ見当たらない。
 それでもやはり夜道というのは暗いものだ。静かという言葉を寂しいという単語に置き換えても違和感はない。一人きりで歩いているものだから、なおさらそう言い換えたほうがしっくりくる。
 そんな中、ひときわ明るい光源が目に入って、 は少しばかり詰め気味にしていた息をほっと吐く。街区が変わるのだろうか。これまで歩いていた道よりは少し広くて車線の多い通りに出た。その道との角で深夜営業の店が一軒、眠りを拒否して開いている。
 入ってみようと思ったのは、それがこの国に来てから非常にしばしば目に入っていたチェーン店のひとつだったからだ。
 どこにでもある普通の店だ。小さな店舗だが、夜中でも煌々と灯る明かりが閑静な住宅街では異様に目立っている。そんな風景がすこしばかり懐かしく思えたのも、火中に飛び入る羽虫のように引き寄せられてしまった原因だ。
 だが今の にとって、その扉に手をかけるのは意外と勇気のいる行為だった。
 ――私なんかが入ってもいいのだろうか。
 わずかにためらう気持ちがある。この世界にとって はイレギュラーな存在だ。それが、こんな普通の場所に入ってもいいのだろうかと。
 連れがいれば、こんな気分にはならないのだろうか。ふと一人歩きの自分を省みる。この世界に正当に所属しているカノン――勿論誰でもいいのだが、思い浮かんだ顔は彼のものだった――ともし一緒にいたのならば、なにも思うことなどなかったのかもしれない。
 だが現実問題として、今の は一人だ。もしも、など考えてもしかたがなかった。


 ***


 日本に到着したのは昼過ぎだった。
 出迎えの車が来ていたせいもあって、降り立った空港から城戸邸まではさほど時間はかからなかった。それから既に数時間が経過している。
  と共に日本へとやってきたカノンは、到着するやいなや休む間もなく出て行ってしまったきり未だに戻っていない。城戸沙織の臨時の護衛として駆り出されたのである。
 否、駆り出されたというのはかなりの語弊があるだろう。
 そもそもは と、そして相変わらず の護衛を命じられたままのカノンが女神アテナの招きに応じて日本の城戸邸へ無事到着し、屋敷の主たる女神――ここでは城戸沙織と呼ぶのが正解だ――へ挨拶に伺ったところから始まっている。
 丁度外出する寸前だったという女神の側に控えていたのは、蠍座のミロ一人だった。それをカノンが見咎めたのが事の発端だ。
 通常、城戸沙織の護衛には黄金聖闘士が2人、もしくは白銀聖闘士が5人ずつ付くことになっているのだという。その護衛を、沙織はこともあろうに財団の仕事のサポートをさせるべく外に出してしまっているというのだ。なんとも立派な公私混同である。
 勿論、そんな仕事を任せられる人材はさすがに限られてはいるらしい。白銀聖闘士の中でそんなマルチな才能を持つ人間など3人もいるかどうか。
 その白銀よりも数の少ない黄金聖闘士――なにしろ特例である二人目の双子座であるカノンを頭数に入れても13人しかいないのだ――の中では、そこまでの仕事が出来ると確認されているのはわずかに2人。蟹座のデスマスクと山羊座のシュラだけなのだという。
 今回派遣されている護衛はそのデスマスク、そして蠍座のミロの二人。城戸沙織は当然のようにデスマスクを側から離して仕事に使っており、結果としてその場にいたのはミロ一人だけだったということらしい。
 その状態にカノンは非常に難色を示した。
 対するミロは当然のように反論してみせた。これまでも何度かそういうことがあったのだと言う。だからそういった状況に慣れもあり、なによりも自らの力量に自信もある。なにも問題はないとミロは半ば憤然と請け負って見せたのだが。
 それではそもそも何のために2人もの黄金聖闘士を付けているのか。そう苦言を呈したのはカノンではなく、 だった。
  の元々の仕事にはテロリストの鎮圧だけではなく、政府要人等の護衛も含まれている。いわば本職だ。その立場から、城戸沙織のそうした軽率な行為を見過ごすことなど、とてもではないができない。
 ぴったりと付き纏うことになる護衛を嫌うVIPは多い。だが綿密に計算された警護活動を安易に拒絶された挙句、重大事件へと発展してしまう事例は枚挙に暇がないのが現実なのだ。
 そう言ったことを、 は経験した実例を挙げつつ厳重に具申した。それを聞いたミロがまず折れ、沙織もさすがに気まずそうに根負けした。結果として、渋々カノンを連れていったというのが本当のところである。


 そういった経緯もあって、慣れない場所で突然一人きりにされてしまったことに関しては には特になんの感想もない。
長い移動時間の直後から休みなく働くことになったカノンに関しても、別に気の毒とは思わない。そもそも女神アテナの護衛は彼の本業である。本分はしっかり果たすべきだ。
 ――勿論、いつ戻ってくるのかとか、予定が気にならないという意味ではない。
そう遠くもないところへちょっとした打ち合わせに行ってくるだけと聞いていたのに、日が暮れてしまっても一向に戻ってくる気配がない。今回は同行しなかった執事の辰巳が気を揉んでいた。
 しかしそうなるとカノンよりはむしろ、城戸沙織の方が にとっては余程気がかりになってしまった。
 若干15歳の少女でしかないのだ。
 確かに聖域にいた時から、城戸沙織は世界に名立たるグラード財団総帥として日々『激務』をこなしているとは聞いていた。しかし実際にその様を目にしてしまえば、やはり驚かざるを得ない。その身上を考えれば仕方のないことではあるとはいえ、あまりにもひどいスケジュールだ。
 そういう場合には普通、有能な人間にサポートをさせるものだ。それもろくに置かず、護衛担当者にまで臨時的とはいえしばしば彼女の仕事の補助をさせているというのはどうにも解せなかった。効率が悪すぎる。


 ……等々、そんな話をしながら夕食時は城戸邸の住人である青銅聖闘士達と共に楽しく過ごさせてもらった。
 全員、聖闘士としては一人前とはいえ、社会的にはまだまだ道半ばの学生である。このような話題は退屈がられるかと思いきや、意外と皆が気にしている内容ではあったらしい。それどころか、嬉々として話に乗ってくれる少年もいた。
 一角獣座の聖闘士なのだと誇らしげに名乗ったその少年は、更に追加情報を教えてくれた。
 沙織お嬢様に新しい部下を雇ってサポートを、という話は以前から上がっているものの、諸事情――特に警護という点で難しい部分が出てくるので話が一向に進まないのだ、と。
 だから俺は一生懸命勉強して、いつか沙織お嬢様の秘書になりたいんです!と彼は将来の夢を熱く語ってくれた。そのまっすぐな心根は微笑ましく、 は頑張ってねと激励しておいた。
 この様子なら、城戸沙織がもう少し周囲に迷惑をかけながらでも踏ん張れば、人手不足の問題はそう遠くないうちに解消されるに違いない。


 そんななごやかな団欒の時間も終わり、彼らがそれぞれ自室に引き上げてしまうと、 もあてがわれた部屋へ引っ込むより他なかった。
 なにぶん、懲戒処分中の身である。上司――現在の は父であるヒイロ・ユイの直属となっている――命令による定時連絡も終えてしまえば、後はもう取り立ててやることがあるわけでもない。
 話し相手もいないとなれば早々に休むだけなのだが、睡眠なら飛行機の中で十分にとってしまっている。ベッドに寝転んではみたものの、豪華ではあっても慣れない空虚な部屋ではどうにも寛げるはずもなかった。
 かえって目が冴えてしまい困って起き上がってみれば、窓の外のそれなりに明るい夜景が目に入ったのだ。
 ――ひとりでそぞろ歩きというのも、たまには悪くはない。
 静かな平穏に満ちた夜の空気が、 を外へと誘っていた。


 ***


 意を決して少しばかり重いガラスのドアを力を込めて押し開ければ、軽く明るい電子音と共に朗らかな声がかかる。大丈夫だ。わずかに感じたためらいの気持ちは、あっけなく吹き飛んで消えた。
「いらっしゃいませー」
 足を踏み入れると同時に店内を見渡す。レジに立つ男性店員と目があった。 が軽く微笑すると、若い店員はなぜだか目を見張る。その少しばかりうろたえたような表情を見て、 は夕方に青銅聖闘士たちから聞いたことを思い出した。
 自分の今の姿は、ここではどうやら目を引くものらしいのだ。特におかしな服装をしているわけでは勿論ないはずだが、下ろしたままの長い金髪はさぞかし目立っていることだろう。
 この日本という国では『外人』と呼ばれる異民族はそこそこ敬遠されるらしいと聞いた。容姿もそうだが、言語の問題もあって関わることを嫌う人間が多いという。氷河に至っては一つ二つ実例をあげながら憤っていた。なにをそんなに怒るのかと不思議だったのだが、ようやく得心したような気がする。向けられたのは、確かにあまり快い視線ではないかもしれない。
 そこを逆手にとって、なにか問題が起きた際には日本語がわからないふりをすればいいと妙な知恵も授けられたが、特にコミュニケーションを取ろうとしなければ何事も起こらないだろう。なにも気にすることはない。
 目を逸らし、 はゆっくりと店内の物色に入る。その方が店員も気楽だろう。
 一番先に向かってしまったレジの向こうにはすぐに食べられそうな食品が陳列されている。四角い金属製の鍋の中でたっぷりの茶色い汁に浸かっている煮物とおぼしきものから、 でも知っている饅頭やフライのようなジャンクフードまで品揃えは意外と豊富だ。『おでん』なる前述の見たこともない煮物には少なからず心惹かれたが、特に空腹なわけでもない。夜中の飲食は健康にも悪いだろうと、今はなんとか素通りする。
 そんな をあざ笑うかのように、突き当りを曲がれば『弁当』や『おにぎり』と書かれた、すぐに食べられる食品が並んでいた。更にその向かいにはお菓子のようなパンが並んでいる。健康を気にする心をぐらつかせてやまない、なんとも罪な陳列である。
 誘惑をどうにか振り切って奥に進む。
 レジとは反対側の奥の壁は一面が飲料用ボトルの入った冷蔵庫。間の列には菓子やその他いろいろなものがジャンル別に置いてある。小さい店舗ながらもなかなかにシステマティックだと感心した。
 見て回っているうちに、何度か軽やかな電子音が聞こえてはその度に店員のいらっしゃいませの声が店内に響く。夜中だというのに、少なくはない客入りがあるようだ。
 興味深く店内を一周しながら、入口付近に戻って来るまでにはそこそこ時間がかかった。最後の列を同じようにゆっくりと見て回る。ガラス張りの壁のような窓は夜中なので黒一色。まるで鏡のようになっているそれに面しては雑なつくりのけばけばしい色の本が並び、対面する棚には日用品などが置かれている。
 特に用事があって入ったわけでもない。ひと通り見てしまった後はそのまま店を出るはずだったのだが、最後の最後で は足を止めることになった。
 それほどまでに の目を引いた商品を手に取る。別に珍しくもなんともないそれをしげしげと眺めれば、軽く苦笑が漏れた。――そういえばこんな当たり前のものすら、ずっと使っていなかった。
 一つくらい、買ってみようか。
 少しでもそんなことを思ってしまったら、もうはやる気持ちは抑えられなくなった。一旦手にした商品を元に戻して、 は真剣に棚を物色し始めたのだった。


 結局一つに絞りきれず、何種類かの商品を手に はレジに向かった。
「いらっしゃいませ」
 入店したときにもかけた言葉を、店員は再び繰り返した。 が無言で台の上に商品を置けば、店員は付けられているバーコードを素早く機械で読み取っていく。レジを通したものから順に、ご丁寧にも袋詰めまでしてくれている。店舗自体は衛生的で明るくきれいなのに、そんなところが手作業なのは意外な気がした。
  の世界でもそのような方式の店は多々あるが、そのほとんどは田舎や場末の個人経営の小さな店だ。そういう店での買い物は大抵、一つ二つ気をつけなければならないことがあるのだった。何度かトラブルも経験している。
 そんなことを懐かしく思い出しているうちに店員から合計金額を告げられた。 は思わず目をしばたたく。それが高いのか安いのかすら、 には判別できなかったからだ。
「……エン?」
 日本語はわかるので数字は当然聞き取れているが、残念ながら『エン』という単位がどれほどのものかわからなかった。
 別にこの世界で買物をしたのが初めてなわけではない。ギリシャでも、全く買い物をしなかったわけではないのだ。生きている以上、必要不可欠なものは必ずある。
 この世界のネット網に潜り込み、闇から闇へ流されている金をくすね取るという少々不正な手段を行使して、適当にでっち上げた口座にプールするという方法で資金だって確保してある。 にとっては物珍しい『現金』というもの――元の世界では電子マネーが基本で、実物の現金などというものを は目にしたことすらなかった――だってちゃんと持っている。ただし、それはユーロだ。
 『米ドル』や『ユーロ』なら、どれほどの価値であるかはわかってきている。しかし残念ながら『エン』までは把握していなかった。経済大国と呼ばれているこの日本という国の通貨であるという知識程度しか持ち合わせていない。レートを確認したこともない。必要性を感じなかったからだ――これまでは。
 小首をかしげて店員を見上げたが、彼は無表情で の支払いを待っているだけだ。仕方ない。これなら通貨に関わらず使えるはずだ。そう考えて、 はカードを差し出した。例の不正口座を元に作ったクレジットカードである。
 しかし。
「……お客様、大変申し訳ございません。こちらでのお支払いはできないのですが……」
「!?」
 思わぬ事態に、 はつい絶句してしまった。カードを差し出した格好のまま眉をひそめる。たっぷり5秒は無言のままだっただろうか。
 驚きのあまり言葉が出てこなかっただけなのだが、店員はどうやら の態度を違う方向で解釈したようだ。
「あれ……日本語わからないのかな……困ったな……」
 乏しい表情ながらもはっきりと動揺が見て取れる。 の手にあるカードを両手で押し戻すようなジェスチャーと共に、しどろもどろで告げる。
「えーと、ユー キャン ノット ユーズ ディス カード、キャッシュ オンリー、OK?」
 意味ならわかる。勿論わかる。日本語で言われた時点でわかってはいる。だがしかし、そうは言われてもOKなわけがない。エンなどという現金は持っていないのだ。
 大体、これほど機械化されている店舗でクレジットカードが使えないなんておかしいではないか。ギリシャでは金額計算すら暗算や電卓でやっているような店ならともかく、ここまで電算化されていないそこそこの店でもカード精算はできたのだ。なにか吹っ掛けられているか、からかわれているのかと疑いたくもなる。
 ここで は夕食時に氷河から聞いたトラブル時の対処法を実践してみることを唐突に思いついた。
「”Why?”」
 この一言で、明らかに店員は怖気づいた。 は重ねて英語で詰め寄る。――予想外の出来事に少々混乱している自覚はある。
『現金なんて持っていないの。片田舎の小さな店でもないのに、電子マネーどころかクレジットカードすら使えないなんてどういうことなんですか』
「え……いや……」
『それとも、カードの種類がいけないのでしょうか? これはヨーロッパではほとんどの店で使えたのだけれど。別のカードもあります。どれなら使えるのですか?』
「困ったな、なんて言ってるんだろ……」
 暑くもないのに額にうっすらと汗を浮かべた店員はおどおどと左右を見回し始めた。誰かに助けでも求めたい気分なのだろうが、 だって全く同じ気分だ。せっかく一人歩きをしている今だからこそ、こんな買い物をする気にもなったのだ。キャッシュを用意して次回、などということには恐らくならない。
 硬直した両者の間に、正しく助けの声が唐突に割って入った。
『もしかして、 か?』
 背後から掛けられた声には聞き覚えがある。振り向いた の目に、蛍光灯の光を眩く弾き返す長い金髪が映った。


Side-S:17章 Furlough 2/ To Be Continued



文中、『』が乱用されています。読みにくかったらすみません。
ヒロインが目にした文字表記を表現しているものと、本当は英語で話している内容の日本語訳を入れているものと、二通りの使い方をしています。

2013/01/20


※誤字脱字等のご連絡、その他ご用の際はお手数ですが拍手コメントか右のメッセージフォームからお願い致します。